第13話
迂闊だったと今になって反省している。
白石さんをいまだにイメージで評価していた過去の自分を呪いたい。
よくよく考えればゲーム性をすぐに理解して様々なゲームで私を圧倒していたし、何か疑問があれば図書館にわざわざ足を運び本を読み漁るのだ。私以上に理解力や想像力なんかが優れていても何もおかしくなかった。
今更後悔しても遅い。今は私に掛けられた暗示を解くために、目の前で頭を力無く前に倒している白石さんに指示を出す。
「白石さんは私にどんな催眠術を掛けたの?」
「私のことが好きになる暗示と私にキスしないと催眠が解けなくなる暗示です」
「うっ……」
なんて最悪な催眠術を掛けてくれたんだ……
一旦深呼吸して頭の中に思考を巡らせる。白石さんには催眠術のやり方しか教えた記憶が無い……だから恐らくは原理や性質なんかはわからないだろう。
何も暗示を解くためにキスをする必要は無い。かけ方だけじゃ無くて原理や性質も聞かれていたらまずかった……
普通の暗示の刷り込み方では、寝て起きれば簡単に消える。
この事を催眠状態の私が教えなかったのは運が良かった。これからは二度と白石さんが私に催眠術を掛けさせないと決心する。
取り敢えず今日は催眠状態であることを受け入れるか……けどやられっぱなしも気に食わない。
「次に目を覚ますと白石さんは私のことを襲いたくなる程に好きになる。けど嫌われたくなくて、襲うことはできません」
白石さんには申し訳ないけど、このくらいの暗示を掛けないと満足できないからね。
私は暗示が解けにくいように、白石さんの口から言わせたりして、何度も暗示を繰り返し刷り込んだ。月曜日の朝には解くからと、心の中で言い訳をしておく。
「3……2……1……おはよう。目は覚めた?て、ちょっと!?」
白石さんが目を擦って私を視るなり、白石さんが両手を私の肩を掴んで、私をソファーに押し倒した。
ここまで効き目が良いのは予想外だけど、催眠術が解けた時の反応が楽しみだし、このままにしておこう。
「あ……ごめんなさい!ちょっと力が入らなくて……今すぐ離れるから」
「うん、大丈夫だから」
数秒間、目を交わらせる。何を考えていたのか分からないけど、素直に身体を起き上がらせて退いてくれたので良しとしよう。
気まずい雰囲気の流れが、お風呂の用意が出来たことを知らせる機械音声で破られる。
「私、先に入るね?」
「うん」
白石さんを置いて、気まずい部屋から抜け出すことの一助になった機械音声に感謝しながら風呂場に足を進める。
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