第3話

結局あの後、質問責めにあって夕暮れの空が真っ暗で街頭に電気がつき始めていた。


夏が近いているのに日が沈むのが早すぎないか?


梅雨も近いし、気温がメチャクチャだし、質問責めをうけるしで今日は本当に疲れた。


明日は白石さんを家に呼ぶ。この事実が私の心を少し軽くさせる。


家には月一でしか両親は帰ってこない。


去年まで姉と二人で暮らしていたが、どうしても東京の大学に行きたかったらしく、今は姉が東京で一人暮らしを始め、私一人で家を独占している状況だ。


この状況は今まで楽しくなかったが、今はこの状況に感謝している。その事実を確認し、少し早めにお風呂へ入ることにした。


シャワーにあたりながら考える。本当に来てくれるのか?知りたいことを教えてくれるのか?不安がいきなり溢れてきて心を不安定にさせる。


大丈夫、来なかったり教えてくれなければ、図書館でのことをばらすと言えばいい。


そう心の中で、何度も復唱しながら、頭の上で泡になったシャープを不安と一緒に洗い流した。


自室の二階に上がり、着替えもせずに、布団の中に飛び込む。


ドサッと軽い音がして上布団がふわりと上がる。


あ、ヤバい。


急に瞼が重くなって、睡魔が押し押せてくる。


夜ご飯食べてないのに…


そのまま家中の電気をつけたまま瞼を閉じてしまった。



 目を開け、スマホをつける、夜中3時であることが表示されている。


夜中の3時?


最悪だ、中途半端な時間に起きてしまった。


確か八時頃にお風呂に入って…


睡魔に襲われて眠ってしまったんだ。


起きてしまったことはしかたない。朝御飯を食べるにもだいぶ早いし、借りてきた本でも読むか。


「催眠療法入門」を読み始めて5分くらいか?すごく眠くなってきた。


普段読書をしないからなのか?この本自体が読みにくく難しい本なのか?


たしか「心の学問全集」に催眠の解説があったような。


比較的分かりやすく、簡単に説明することを売りにしている、そっちの本に手を伸ばす。


これは逃げじゃない、うん、逃げじゃない。


だって、もし、こんな中途半端な時間に寝てしまったら、明日の学校は遅刻してしまうかもしれない。


誰に向かっての言い訳なのか分からないが、そんなことを呟きながら、お目当ての解説ページを開く。


そこには氷河の絵が描かれてあって上の表面に「意識」下に「無意識」とかかれていた。


もう片方のページにも絵が描かれていて「深層段階」と書いてある。その絵のキャラクターが段階ごとに、何がおきるか?キャラクター自信が催眠術にかかって説明してくれている。


正直こっちの本の方が何倍も見やすいし、分かりやすい。


この本では、たった四ページでしか解説されなかったので、すぐに読み終わってしまった。


まだまだ時間は余っている。


ついさっき読むことを放棄した本を自分の体に手繰り寄せる。


さっきよりも重い本を持ち上げお腹の上に乗せ、ページをめくる。


 

 結局半分位まで集中して読んでしまった。

時計を確認すればもう八時で完全に遅刻だ。


道のほとんどを全力疾走で向かった…と言いたかったけど、私は陸上部じゃないし、なんなら運動部ですらない。


それでも半分は走り続けたからか、息苦しく、軽い目眩をおこしながらも教室に辿り着く。


教室では朝礼の直前だったようで皆椅子から立ち上がっていた。


そこにはもちろん白石さんもいた。


白石さんは一瞬驚いたような表情を浮かべ、目が合ったが、すぐにそらされた。私もすぐにそらして


「遅れてすいません!」

すぐに謝って自分の席に向かった。


「ギリギリセーフだぞー」

と先生がニコニコしながら言って、朝礼が始まった。


予想通り夏菜に何で遅れたかを聞かれて、正直に全てを話した。本の中身以外は。


 その後は通常通り授業が始まり、放課後までは、あっという間だった。


すぐに図書館で待っててと白石さんにメッセージを送り夏菜と帰宅した。

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