第4話

白石さんに何をさせるかは決まっている。


いや間違えた、何を聞くかは決まっている。


これからさせることで頭を巡らせながら図書館に行くと律儀にも約束を守ってちゃんと待ってくれている白石さんがいた。


「待たせちゃったー?」

「待ってない」

素っ気なさそうに返されて少しムカついた。


少し悪戯してやろう


「クラスメイトで昨日のこと知っている人っているの?」

「いるわけないじゃん」

不機嫌な様子でこちらを睨みながら言ってきた


「だよねー」

「まぁさっさと家行こうか」

まだ弄るつもりだったけど、思いの外、彼女の気分を簡単に乱せて満足した


「今、知りたいことを教えたじゃん」

彼女は何をいっているのか


「家でって約束でしょ」

「家どこよ」

少しムッとした顔をした後に、諦めたように言ってきた。


「ついてきてね」

返事は無いが足を進めると付いてきてくれた。


実は夏菜ほど図書館から遠いわけではないので、十分程度でついた。


「入って、親はいないから挨拶しなくていいよ」

「一軒家なのに?」

「そうだけど?」

私が少し不機嫌な声を出して答えると、何かを察したような顔で「何でも」と返してきた。


別になにも気にしてないのだけど、気を遣って大人しくしてくれるならいいか。


二階の自室に案内した後は、冷蔵庫から一口サイズのチョコナッツを出して、隣の棚から何かの葉っぱで作られた紅茶の袋を取り出して、来客のおもてなしの準備をする。


おもてなしされる白石さんは今は私の部屋で寛がせている。


さっさと帰るからいらないと言われたが、私がさっさ返す気がないので無視して用意している。


カチッと電気ポットが音を立てたのを聞いて、記憶の中から現実に戻り、お湯をカップにいれる。


ドア開けて紅茶を置くと

「何が知りたいの?」

早く済ませたいという雰囲気がこちらに痛いほど伝わってくる。


「そんなに難しいことじゃないよ」

「…」

「そうだねーまず一つ目は、」

「待って、何個もあるの?」

「大丈夫そんなに無いから」

そんな答えになっているかわからない答えをして話を続ける。


「図書館にはよく行ってるの?」

「そんなに…週に二回くらい」

へぇ結構行ってるじゃんと内心思いつつ質問を続ける。


「週に二回も何しに行ってるの?読書が趣味とか?」

「そうだけど」

外見だけで人を判断できないと、言うけれど、本当に外見だけでわからない人がいたなんて


「あの本を読もうと思ったのは何で?」


しばらくの沈黙のあと、少し恥ずかしそうに


「推しがやってたから…」

と答えてきた。

 最近よくある推しに影響されて推しと同じことをしたくなる、あれ、か。


「本当に催眠術ってあると思う?」

この質問に関しては直ぐには答えず、


「本当かどうか確認するために本を探してたんだけど?」

と、返された。

 確かに分からないから調べる、というのは納得する。けど


「ネットで調べれば直ぐ分かるじゃない?」

と率直な疑問を投げたが


「ネットで調べても信用できる情報がなかったの」

と老人のようなことを言い出した。


 本当に見た目からは考えられないな。

これは偏見か…直ぐにこの考えは正さないとな。


「それで真偽は判明したの?」

「してない」

予想通りの回答が返ってきた。

 さっきからずっと驚きっぱなしだったが、ここからは、私の予定通り動いてもらう。


「なら掛けてみようか?」

当然なんて返ってくるかは、


「何で?」

ほら、こう返ってきた


「だって分からないなら、実際にやってみれば

すぐに分かるじゃん」

結構微妙な顔をしている。あと、少し押してみるか、


「もし、このまま掛かってみて本当に掛かったら、白石さんのモヤモヤもスッキリするし……それに、あの本で書いてあったんだけど、ダイエットやストレス解消にも使えるらしいよ」


「ダイエット……」

食い付いた!やっぱり女子は体型に悩み続ける生き物!


 自分は体重とか体型を気にしないから、よく分からないが、こういうオシャレな女子は気にするよね。


 なんか、気にしない自分に悲しくなってきたかも……

とにかく、罠にかかったのだから、美味しくいただこう。


「じゃ、掛けるよ?」

「え?うん」

さて、準備もできてるし、予習もした。

 

 掛かったあとが、楽しみだなー

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