101 佐藤明日香
深夜、けたたましいベルの音で目が覚めた。なんだこれは? 慌ててガウンを羽織り、明かりを点ける。どうやら、うちではなく、棟全体で鳴っている音のようだ。
「なにこれ…火災報知器…?」
明日香はひとりごちた。こんな装備があることも知らなかったのだ。とりあえず、そっと家を出る。他の住民が出ているかと思ったのだ。
外に出ると、上の階の陰気な女が顔を出した。引っ越しできたときに自治会勧誘に行ったが、断られたためそれきりだった女だ。表札を出していないため、名前すら知らない。
「あの…すみません…」
「なにこれ、誤作動?」
「いえ、うちみたいで…」
「えっ?」
慌てて階上へあがって見ると、室内は炎こそ見えないが、煙が充満している。炎が見えないというか…廊下にも玄関にもびっしりと物が積まれ、人一人やっと通れる隙間の向こうにあるはずのリビングは、見えなかったのだ。
「はぁっ!? あんた何やってんのよ!」
明日香は部屋に取って返し、スマホですぐに119番した。それから、各部屋の扉をたたきにまわった──。
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