🤑エピローグ:ダンジョンビジネス合同会社


「試作品ができたぞ!」


 ダリスの手元には、街の職人と一緒に作った空気銃が一丁。

 銃弾の代わりに、キラービーの針を装填できるようになっている。


 剣と魔法のファンタジー世界に『銃』という概念を持ち込むのは男のロマンだ。

 もちろんダリスは銃の構造なんか知らないし、火薬の作り方もわからないから、子供でも知っている『空気圧』を利用したエアガンの再現に挑戦中である。 


 胸を高鳴らせて引き金を引くと、ポシュッと音がして木製の的に針が突き刺さる。

 やっと的まで届いた。ダリスは心の中でガッツポーズを決める。

 商品化まではまだまだ課題が山積みにつき、ひとまずは心の中で。


 隣から「威力がぜんぜん足りない」と、チトセの静かなダメ出しが飛んでくる。

 苦笑いで「だよなあ」としか言えない。進捗、ダメです。


 チトセの知恵と、ジュハの人脈と、ヨミの……えーっと美貌?

 そしてクラノデア子爵家の財力ブーストによってホークスブリゲイドをフルボッコにしてから二カ月。


 こうやって新商品の開発に資金を投入できるくらいには、ダリス達のダンジョンビジネスは安定してきている。


 もちろん、ここに至るにはチトセの力が欠かせなかった。




「この件が片付いたら、ボクと合同会社を設立して」


 これがあの夜、チトセの出した条件だ。

 彼女が元の世界に帰る日まで、一緒にダンジョンビジネスをやっていくことになった。ダリスにとっては彼女がパートナーになってくれるなら、願ったり叶ったり。


 もちろんOKしたんだけど、彼女は渋い顔で、


「本当はもう起業なんてするつもりはなかったんだけど、自分の居場所は自分で守らないと、きっと後悔するから」なんてことを言っていた。


 つまり、ダリスだけでは不安だから自分も経営に参加させろと。

 よくよく話を聞いたら、こっちの世界に来る前は女子高生起業家だったというから驚いた。色々と難しいことを知っているわけだ。


 この世界に『合同会社』なんてものはないから、クランを設立することにした。

 クランの名前は『ダンジョンビジネス合同会社(Dungeon.Business, LCC)』だ。



「それじゃ、俺はちょっと出掛けてくるから」

「ん。今日も奴隷売り場?」

「ああ。掘り出し物を探してくる」


 試作品のエアガンを片付けると、ダリスは奴隷市場へと向かった。

 クランを設立したことで、奴隷を買わなくとも参加を希望する冒険者は増えたが、こっちが求めるステータスを持った人とはそうそう巡り合わない。


 結局、掘り出し物を探すには自分の足で、ということになる。


 クランを設立して以降、奴隷にも報酬を渡すことにした。


 毎月、本来の報酬の半分を本人に渡し、残り半分は奴隷購入費との相殺。

 購入費が全て相殺されたら、奴隷契約を解除する。


 従業員のモチベーション管理は経営者にとって重要なタスク。

 チトセと一緒に決めたダンジョンビジネス合同会社のルールだ。


 だからダリスの二つ名はいまだに『奴隷遣い』のまま。


「おお! 奴隷遣いのダリス様! いつもありがとうございます」


 最近では見切り品に限らず奴隷を購入するようになったので、奴隷商にとってもダリスはお得意様に格上げされたらしい。以前と全く態度が違う。


「新しい奴隷がいたら見たいんだけど」

「ちょうど良かった。ダリス様にご紹介したい奴隷がいるんですよ。例の東の方にある島国、でしたっけ。あっちの奴隷みたいで、ほら例の黒髪黒目の人と同じような民族衣装。あれに似たものを着てるんです」

「それは是非、見たいですね」


 なんと数奇なことだろう。

 セーラー服に似た民族衣装なんて、この世界には存在しないハズだ。

 ならば、その奴隷は間違いなく。


「あの女です」


 奴隷商から連れられた先には、檻に捕らわれた女の子がいた。

 茶髪に、おそらく黒のカラーコンタクトを入れた、黒目がちな白いセーラー服姿の女子高生。


 ダリスは彼女に声を掛けた。


「⦅もしかして君、日本から来たのか? 俺の名前はダリス。元、日本人だ⦆」

 ※⦅⦆内は日本語です




◎年間収支報告

 〇初期資金:金貨30枚(300万円)


 〇総収入 金貨2928枚と銀貨1枚(2億9281万円) 

 

  魔光石売上:金貨113枚と銀貨1枚(1131万円)

  うろこの盾売上:金貨1425枚(1億4250万円)

  バクラージの投げ槍売上:金貨860枚(8600万円)


 〇総支出 金貨2388枚と銀貨1枚(2億3881万円)  

 

  奴隷購入費:金貨255枚(2550万円) ※D.B, LLC設立後に奴隷を3人購入

  装備関連費:金貨19枚と銀貨5枚(195万円)

  生活費:金貨15枚と銀貨8枚(158万円) ※D.B, LLC設立後は奴隷の分のみ

  消耗品費:金貨20枚と銀貨9枚(209万円)

  特別報酬:金貨15枚と銀貨9枚(159万円) ※D.B, LLC設立後は給与制に移行

  HBメンバー買収費:金貨300枚(3000万円)

  HBメンバー業務委託費:金貨360枚(3600万円) ※4ヶ月分

  給与:金貨120枚(1200万円) ※ダリス、チトセ、ジュハ、ヨミの4ヶ月分

  奴隷給与:金貨75枚 ※D.B, LLC設立後に購入した奴隷分

  うろこの盾 材料費:金貨177枚と銀貨5枚(1775万円)

  うろこの盾 製造費:金貨193枚と銀貨5枚(1935万円)

  バクラージの投げ槍 材料費:金貨42枚と銀貨5枚(425万円)

  バクラージの投げ槍 製造費:金貨170枚(1700万円)

  新商品開発費:金貨60枚(600万円) ※3ヶ月分


 〇年間の営業利益:金貨510枚(5100万円)


 〇資金:金貨540枚(5400万円)


  ※HB:ホークスブリゲイド

  ※D.B, LLC:ダンジョンビジネス合同会社

  ※ジュハとヨミを購入した際の分割支払いは支払い済み

  ※クラノデア子爵家から借り入れた金貨500枚は返済済み




💰Tips


【合同会社】

 日本における会社形態の一つ。アメリカのLLC(Limited Liability Company) をモデルに、日本にも導入された。

 株式会社との大きな違いは、出資者(株主)と経営者が原則として同一でなくてはならず、利益配分は出資率に拠らず自由に取り決めることができる点が挙げられる。

 また株主総会を開く必要がないため、スピーディーに意思決定をすることが可能。




      【了】




 以上を持ちまして、『転生社畜と転移JKのダンジョンビジネス合同会社』を完結とさせて頂きます。

 最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。


 もしよろしければ、このページを閉じる前に★を入れて頂けますと幸いです。


 ☆☆☆ ⇒ ★★★


 つまり、こういうことです。よろしくお願いします!!


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