第13話『マシな博打(提案)』

 マズいなんてモノじゃない。

 苦労して倒した森狼ヴァルトウルフが徒党を組んで現れるなど悪い夢だ。

 だが唯一マトモに戦えるクロツミには選択する必要がある。

 生き残るための選択。

 冷静なれと自分を言い聞かせる。

 戦力差を見極め、何ができるかを考える。

 ……だが導き出せるのは博打のような方法ばかりだ。


(お困りのようだな。)

(戦ってる最中静かだと思った、ようやく喋り出したな。…良案でもあるのか?)

(良案では無い。一番マシな博打を提案しに来ただけだ。)

(結局博打なのか。それで?時間が無いから手短に頼むぞ。)

(それは選択するお前次第だ。)


 頭に謎マークを浮かべつつも、ロゼの提案を聞き逃さないように身構える。

 森狼ヴァルトウルフは既に大部分が入り乱れており、乱戦の模様呈している。

 クロツミの考える囮作戦以外に良案などあるのだろうか? 

 

(私の力で、貴様を狼共が殲滅できる力を手に入れる事ができる。)

(なんだと?)


 それは願っても無い提案だ。

 魔力だろうが、武器だろうが、力の支援など願ったり叶ったりだ。

 しかし博打と言うには、それなりの代償があるのだろうか?


(ああ。代償は、貴様の平穏な未来だ。) 

(今の状況が平穏に見えるか?)

(貴様がここに居る全員を見捨てて逃げに徹すれば、逃げ出す事ぐらい容易だろう?私が言いたいのは、それを天秤にかけても、この力は貴様の重荷になるという事だ。)

 

 レン達を見捨てる後悔よりも苦しい未来になるとでも言いたいのだろうか?

 そんな代償は想像もできないが、詳しく聞いている余裕は無い。

 クロツミに選択できるのは、見捨てて助かるか、代償を支払い助けるかだ。

 なら俺は。


(代償を払う。だから力をくれ。ロゼ!)

(後悔するなとは言わん。するだろうからな。だが、お前の選択を尊重しよう。)

(それで、どうすれば…う”っ!?)


 胸元に痛みを感じる。

 視線を落とすと、立方体のペンダントが変形して、細い針のようにクロツミを貫いている。

 同時にクロツミの視界は暗転する。

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