第4話『野営の準備(雑談)』
日が暮れ、戦後処理を終え始めた頃、騎士隊は焚火を焚き野営の準備を進めていた。
クロツミはというと野営の手伝いだ。
カルドの布令によって、クロツミは自由行動が許されていた。
「にしても、こんなに話の通じる傭兵は久しぶりだぜ。」
「オマケに若くて働き者。雨宮くん、騎士団選んで正解よ。」
「俺も正直、最初に殺されてなくて驚いてます。」
手慣れた様子で使える薪を拾う。
他の二人も無駄口を叩きながら薪を選別して拾う。
「今回は結構楽だったぜ。ケラヴィノス隊長は強い奴しか興味無いから、今回みたいな簡単な奴らだと”雷杭”ぶっぱして終わりとかザラだからな。」
「年長者と強い奴が優先して腕や足を負傷してたから、すぐに君の仕業だと判ったわ。ケラヴィノス隊長は頭部に一撃だからね。」
「皆さんを見てると、俺が必要だったか疑問ですけどね。」
(本当にな。余裕が出来て騎士隊全体を見直す事ができたが、ほとんどが魔法を使えるとは……恐れ入ったよ。)
(ね。ファウダラ連邦でも”ソルブラ孤島”含めても数える程の傭兵団も無いと思うよ。)
クロツミやカルドが容赦なく魔法を多用してるが、そちらの方が稀なのだ。
普通なら戦えば武器はすり減るし、ましてや遠距離から近接武器を投擲(?)で制圧など在りえないのだ。だが雷鳥騎士隊は、ほぼ全員が初級魔法を習得している。例えるならば、蟻の群れと鼠の群れとの違いぐらいあるだろう。
「うふふ。そう言ってくれると嬉しいわね。私たち雷鳥騎士隊は実践や警備を主軸とした前線隊だから、実力が認められるのは素直に嬉しいわね。」
「騎士隊は是非とも雷鳥騎士隊に入って欲しいもんだな。」
「?騎士隊は自分で選べないのですか?」
クロツミが知っているのはミレパクト騎士団という、対魔物の戦闘技術のある騎士団が存在する事だけで、内部事情は一切知らない。あえて言うならば”獅子騎士”という非常に強力な騎士が居る事ぐらいだ。
「ああ。騎士隊は基本的にドラフト制だ。試験を評価する騎士隊長の計4人による抽選制。まあ、団長と副団長が指定する場合もあるが、稀だな。だから原則、新人が隊を決める自由は無い。試験で評価された内容を元に、騎士隊は振り分けられるぞ。」
「大半は最初の試験で振り落とされるけどね。」
「え?そんなに過酷なんですか?」
クロツミは心配そうな顔で不安がる。
だが、二人には鼻で笑われてしまった。
「あのなぁ、騎士の応募はかなり広い。農民から貴族まで自由に応募できる。我らが”レオール団長”様のお蔭だけどな。」
「お給金もいいからね。各地からチャンスを求めて王都に来る人が多いのよ。だけど大半は、こいつの言った通り一般人。あんたみたいな傭兵と比べちゃマズいでしょ?」
「そんなに多いのですか。それよりも、広く徴兵してる事い驚きましたけどね。」
「異邦人のお前さんにも、そう見えるか。魔物の脅威が近いこの国じゃ、戦力はどれだけあっても足りないのさ。」
全員が十分な薪を集め終わる。
ロープで纏めて、3人は簡易拠点へと戻る。
焚火の中央では忙しそうなフィリップが指示を出している。
「編成の振り分けはこれで構わない。次、食糧の振り分けもいいな。ただ、塩と水のペース配分には気を付けるように。次、薪か。ご苦労。これなら保管資材含めて3日は持つな。資材の天幕に置いてきてくれ。あ、雨宮くん。隊長から伝令だ。」
クロツミ含めて3人は薪を持ち直して天幕に向かおうとするが呼び止められる。
男性の方の隊員が、無言でクロツミの薪を代わりに運んでくれる。
フィリップは小さな羊皮紙を取り出す。
「『明日の早朝、盗賊を王都へと輸送する。君も合わせて乗るといい。5日後に公募試験も控えてるから”水精騎士寮”へ行って、入団応募するといい。待ってるよ。』との事です。ですので、明日の輸送隊に同行してください。以上です。予備の天幕を用意してあるので、今夜はそこで過ごしてください。分かりましたか?」
「了解です。」
「よろしい。」
クロツミは結局、騎士隊が就寝に入るまで野営を手伝っていた。
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