眠れない夜と罪悪感


 いけない。またやってしまった。

 前日寝過ぎて眠れない。毎回、眠れなくなってから後悔する。あんなに寝なければ良かった。次の日のことを考えるべきだった。


 そして眠れないせいで余計なことを考える。例えば、あの人を本当に好きなのか。好きでもないのに好きな振りをしているのではないか。好きな振りをしているのは自分の為だけの打算ではないのか。

 

 普段から思っていて、考えないようにしていることが吹き出してくる。

 

 本当のことを言える正直者を美徳としてきた幼い自分と、嘘が相手を思いやることもあると知った大人の自分と。その狭間に立って眠れない自分。

 おかしくなりそう。

 

 全部手離してしまいたい。

 何もかもなかったことにして、初めからやり直したい。でも、初めからって、一体どこから?

 

「これから好きになっていくかもしれない」

 

 不眠に抵抗するようにぎゅっと目を瞑って、現実を見ないようにして。そんなことしたって何も変わらないし、眠りにだってつけっこない。

 

「別に嫌いなわけじゃない、騙しているわけではない」

 

 ひたすら目を瞑って、自分に言い聞かせて。結局、朝になっても一睡もできていなかった。

 

「今何時なの」

 

 引き寄せたスマホの画面にメッセージ通知。マナーモードにしていたせいで気付かなかったそれは、ほんの十分前に届いていた、あの人からの連絡だった。


『夢にあなたが出て来て嬉しくなりました。今日も一日がんばれそうです』

 

 寝不足だけの所為でない頭痛と胸の痛みは、そう、罪悪感。

 

 せめて、あの人の夢の中の私は、あの人のことを本当に好きでありますように。

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