麒麟のセレナーデ


 子犬のワルツ、黒猫のタンゴ。私が知っているのはこのくらい。とても有名で、その癖、タイトルの意味も、どんな曲調の誰が作ったものなのかも、子どもだった私は一切知らない。

 

 意味も理解わからず、無邪気に歌った黒猫のタンゴ。練習させられても上手く弾けず、ピアノを嫌いにさせた子犬のワルツ。

 どちらもノスタルジックで、センチメンタルな思い出の曲。だから、今の私に必要なのはこれじゃないのだ。

 

 それなら麒麟のセレナーデ、なんてのはどうかしら。私が貴女のために作った曲。既に存在していないかどうか、確認もしていないけど。

 

 セレナーデの意味は、大人の私は知っている。小夜曲セレナーデは恋人や女の人を称えるために演奏される楽曲。そう、私があの人に捧げたいのはそんなセレナーデ。けして恋人ではないけれど。

 

 麒麟の首が長いのは、大好きな貴女に逢えるのを、首を長くして待っているから。なあんてね。

 

 でも、それなら、あそこまで長くなるまで待つなんて、いつから会えていないのか。いつまで待てば会えるのか。

 このセレナーデは悲しい曲になりそうです。

 

 麒麟のように背が高くほっそりした貴女。

 麒麟のようにつぶらな瞳に長い睫毛が魅惑的な貴女。

 

 告げるつもりはないけれど、私は確かに貴女に恋をしています。ひっそり、こっそり、けれど、しっかり、これは恋心です。

 

 麒麟に捧げるセレナーデ。

 私に語彙力があれば、もっと素敵な詩になったのに。残念な仕上がりのまま、終わりの言葉は決めているの。

 

 らららららん、らんらん。

 

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