きらめき、まばゆく、見失い


 ずっと、美しい人だと思っていた。容姿という見目だけでなく、心根の真っ直ぐな、内面も美しい人であると。

 それを確信したのは、あなたのその目を見てからだった。

 キラキラと光を反射させる大きな瞳は、澄んだ湖の水面のごとく、輝きに満ちていた。少なくとも私にはそう見えた。

 

 実際には、辛く苦しいことや、心を痛めて傷つくこともあったのだろうが、いつだってその眼は一寸の曇りもなかった。

 むしろ、光を反射するだけでなく、自ら目映(まばゆ)いくらいに煌めいて見えた。


 そんなあなたを、あなたの目を、もっと近くで見たいと、私はあなたに少しでも近付けるようにがむしゃらに頑張った。時に方向性を誤った道に進みかけたけれど、いつも、あなたのその目が、私を正しい方へ導いてくれた。

 そうして漸く、その瞳が変わらず曇らぬよう、あなたの側で見守ることを許された。何物にも変えられないくらいに、それは幸福なことだった。


 しかし、太陽に近付き過ぎて墜落したイカロスのごとく、私はあなたの目映さに目が眩み、あんなに熱望した筈のあなたの隣に立って、そして、あなたから目を逸らすようになってしまった。その煌めきが眩しすぎて、直視できなくなったのだ。

 光が強ければ、影は、闇は濃くなってゆく。あなたの輝きによって、自分の矮小さや卑屈さがくっきりと形になるのが耐えられなくなった。


 そうして、目を逸らし続けた間に、とうとうあなたを見失ってしまった。あんなに近くにいたのに、あなたがいなくなることを、私は予見できなかった。


「待って行かないで」

「もう遅い」


 縋りついて懇願しても、あなたの言うとおり、もう遅い。久しぶりに合わせた視線の元はやっぱり美しく煌めいていた。それは直視し続けるのが辛く感じる程だった。


 煌めき、目映く、見失い。

 あなたが去っていた後も、私の中に残ったあの煌めきは消えることなく輝いている。

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