第2話 犠牲になるのは自分だけでいい

幼い頃に勇者認定を受けた私。

勇者の証が唐突に手に発現してからというもの、遂に魔王を討ち果たすに至ったこれまでの7年間は、自身の研鑽と魔王軍との戦いでまさに血に濡れた日々だった。


己が利益や名誉の為では無い。私利私欲無く己の持つ全てを魔王軍を討伐することだけに費やした。


自身を高める為に死ぬほど努力したし、理不尽な現場だって多く経験した。

自分の手で守れた人々もいたし、虚しくも守り切れず後悔に苛まれ続けた夜もあった。


この先、犠牲になるのは自分だけでいい。

最後にはそんな想いで歩き通した。


そう、最後まで歩き切ったんだ。


多くの人々が私に感謝をくれた。

民衆達の感謝が無ければ、途中で心が折れていたかも知れない。


自分の生活だって夢や希望も抱けないような民をたくさん見てきたが、そういう人々たちの希望になりたい。そんな強い思いがあったからこそ、困難な道を最後まで歩き抜くことが出来た。


当然、中には悪意を持った人間が私に害するように立ち塞がったこともあったが、それ以上に正義の心を持つ同士と呼べる仲間達が側にいてくれた。


ああ、魔王との戦いまでに散った仲間達も当然いた。

今も皆の顔も名前も覚えている。志半ばで散っていった仲間達の為にも、私が歩みを止めては行けない。

涙などとっくに枯れた。ただ魔族や魔物の息の根を止めるだけの鬼となり、奮戦に奮戦を重ね念願の魔王を倒したんだ。


――なのになぜ今、皆私を嫌悪するように見るんだ?


王様の横に控える近衛騎士団員や軍部の人間達が今すぐにでも私を排除しようと睨みを効かせている。


ここにいる全ての人々が私に対する嫌悪感を持っているように感じる。

これが世界を救った勇者への待遇なのか?


眼前の王の表情には畏怖・嫉妬・焦りetc.

様々な感情が読み取れる。


ハッキリ言ってみたいな状況で私は・・・

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