第4話
ジョウキside
次の日、目覚めたら思っていたよりも体は楽になっていて、カーテンを開けて朝日を浴びながらふと昨日の酒臭い女を思い出した…
あいつ本当に俺のファンなのかな…?
ファンらしくないといえば語弊があるかもしれないが本当に俺のファンなの?って思わず問いただしたくなるぐらいにあっさりとしていて変だった。
俺はそんな事を考えながら事務所へと向かった。
J「トウヤくんおはよう!」
T「おはよう!調子どう?」
J「うん。だいぶ良くなったよ心配かけてごめん…マハロくんもおはよう!」
M「おはよう!昨日大丈夫だった?」
J「うん…実は昨日…あれから倒れた…」
俺の言葉を聞いてマハロくんはお茶を噴き出し、トウヤくんは目が点だった。
T「た…倒れたって…家で?」
J「いや…道端で…気づいたら酒臭い女2人に助けられてた…」
俺の話を聞きながら俺より3つ上のメンバーであるハヤセくんは無言のままポッキーを食べてる。
M「その2人…大丈夫だったの!?ファンで騒ぎ立てたりとか…」
J「俺は王子様らしい。」
M「はぁ?」
H「高熱で夢でもみたんじゃない?そんなメルヘンな事言っちゃって。」
ハヤセくんはポッキー二本を同時に口へ入れて俺をからかうように笑った。
J「現実だし!1人は俺のファンみたいで俺の事を私の王子様だって俺がその場を離れてから言ってたけど…何も言わずに帰らせてくれた。」
T「マジかよ…理解力ありすぎだろ…そのファン…」
M「で!?その子可愛いかったの?」
マハロくんとトウヤくんはニヤニヤしながら俺へ近づいた。
J「うーん普通?もう1人の黒髪の子はカナリの美人だったけどな?」
T「ふ~ん!!なんかいいなぁ~!!」
トウヤくんは天を仰ぎながら両手を広げた。
J「どこがですか!昨日は散々だったんですよ?道端で倒れるし鍵は落とすし!探しに行ったら俺が待ち受けのスマホ踏んじゃうし、持ち主はそのファンだし、そのファンはなぜか裸足で泣いてるし、俺の事なんか見抜きもせずに帰っちゃうし…」
H「結局はあれか?私、ジョウキのファンなんですぅ~って甘い声で言ってほしかったとか?」
ハヤセくんがわざとらしく胸の前で手を絡ませ目をパチパチさせぶりっ子しながら俺に迫る。
J「そうじゃないけど…ファンなのにすごいアッサリしてるな~っと思って…」
マハロくんが俺の肩に力強く手を置きながら言った。
M「やっぱ夢でもみてたんだよ?」
この後も誰1人として俺の話を信じてくれないメンバー達に俺は必死になって語った。
アナside
次の日
ユナは朝起きると一旦家に帰り、家で着替えたあと一緒にランチに行こうと約束をした。
ユナとの約束の時間に合うように鏡に向かって準備をし、途中でチケットを発券しそのまま封筒に入れ大事にバッグへと忍ばせてユナとの待ち合わせ場所へと向かった。
A「ユナ!ごめんごめん!遅くなっちゃって!」
Y「大丈夫だよ~でも珍しいね?アナが遅れるなんてさ?」
A「家出る前にチケットを発券してきてさ?」
Y「マジで!?っで!席どこだった?」
A「まだ、見てない!ランチ食べながら一緒に見よう?ほら、出発~!!」
私は戸惑うユナの腕を引っ張って目的のランチへと向かった。
Y「で?どこでランチするの?」
A「ここだよ!トウヤがよく来るって言ってたお店~!!」
私が店を指差しながら言うとユナは少し笑いながらこう言った。
Y「あのさ?ここ…ウチのお兄ちゃんの店!」
A「えぇ~!!ウソ…!!」
Y「ホント!じゃ、入ろうか?」
まさかユナのお兄ちゃんの店だったとは…ってことはお兄様は普通にトウヤ様と会ったことがあるの!?
ってかてか!お兄様が作った料理をトウヤが食べたってこと!?
なにそれめっちゃヤバくない!?と大興奮で鼻息が荒くなる。
Y「何してんの?早く入るよ?個室が空いてるからそこ使ってもいいってさ!」
A「え!?あ…うん!」
中に入ると落ち着いた雰囲気のお店で、お客様みんながゆっくりとした時間を過ごしている。
「こんにちは!ユナがお世話になってます。」
笑った顔が優しくて髭の生えたおしゃれなお兄様がお出迎えしてくれた。
A「は…初めまして!こちらこそお世話になってます!」
「オススメはワンプレートランチだけどどうする?」
A「あ…それでお願いします!!」
Y「私も~!」
「はいよ!じゃ、ゆっくりしていってね?もうすぐしたら隣に予約のお客様が来るけどここはずっとあいてるから!思う存分コーヒーをお代わりしてね?サービスしとくからさ!」
A「ありがとうございます!!」
ユナのお兄様は落ち着いていて笑顔がとても素敵で思わず私はドキッと胸を跳ねさせてしまった。
Y「ウチのお兄ちゃんなんてどう?な~んてね!」
A「え…カッコ良すぎ…」
久しぶりにときめいた相手がまさか親友のお兄様だとは…
でもマジでカッコ良すぎじゃんか…////
そんな事を思いながら熱くなった頬を冷ましていると、しばらくして私たちの元に華やかに彩られたワンプレートランチがやって来た。
A「わぁ~すごい!綺麗!」
「料理は目でも楽しまなきゃね?じゃ、ごゆっくり~」
ユナのお兄様はそう言って私にウィンクを残し微笑みながら消えていった。
Y「アナさ?ウチのお兄ちゃん…タイプでしょ?」
A「え!?いや…うん。カッコいいね…」
Y「顔!似てるでしょ…?ジョウキにもあの人にも…」
私はジョウキのファンになり、あの人への想いを忘れかけていた。
しかし、ユナのその言葉によって鮮明にあの時の感情が蘇り、胸の奥がヒヤッと震える。
A「え?そ…そうかな?に…似てないよ…お兄様の方が男前だよ!」
私がぎこちなく笑いかけるとユナは微かに頷き、話を変えた。
Y「じゃ、そろそろ見ません?チケット!」
ユナの言葉で思い出したかのように私はバッグからチケットの入った封筒を取り出し、ドキドキして微かに手が震える。
A「…ユナが開けて!!」
私がユナに封筒を渡すとユナは驚いた顔で受け取る。
Y「もぉ~仕方ないなぁ~開けるよ?」
A「うん…。」
ユナが手慣れた手つきで封筒をあけてチケットをゆっくりと取り出した。
そして、ユナは座席が書かれているであろう場所をじっと見ている。
A「どう!?どうなの!?」
私の問いかけにユナは叫び声で答えた。
Y「きたぁぁ~あぁぁ~!!」
A「へ?き…きたって…」
Y「神席~!!マハロに間近で会える~!!!」
え?ユナ…いつからマハロのファンになったの…!?って…か…神席!?
A「ふへぇ!?か…神席?」
Y「ヤバイ!過去1だよ!どうしよ?」
ユナが私に見せたチケットにはアリーナAの1列目の文字。
A「ウソだ…マジで…こんなことって…」
Y「あるんだね?最高な最後のライブになるんじゃない?」
A「ヤバイ泣きそう…」
Y「私も…」
私はユナの手を握りユナの目を見つめるとユナの目にも涙がたまっていた。
いつの間にユナそんなにマハロのファンになっていたのだろうか?私は全く気づかなかった。
トントン
「おい!うるさい!隣の個室にもう予約の常連さんが入ってるからもうちょっと静かにね!」
お兄様は隣の個室を指差しながら言った。
A「あ…すいません…」
私が軽く頭を下げると
「なになに!?なに二人して号泣してんのよ!?そんなにウチの料理マズかった!?」
お兄様は焦りながら言ったがユナは軽くあしらった。
Y「もう、大丈夫だから早く仕事に戻って!」
「心配してやってんだろ!ホント冗談抜きで、もう少し静かにしろよな?」
Y「分かったから!」
お兄様が戻ってすぐ私とユナは笑いながらまた、泣いた。
つづく
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