第5話
ジョウキside
俺たちは公演前のリハを終えて昼食を取ることになった。
J「あぁ~昨日からろくなもん食べてねぇから腹減った~!!」
M「ねぇ、今日は久しぶりに外に食べにいかない?」
マハロくんが嬉しそうに俺の首に腕を巻きつけながら言った。
H「いいねぇ~!あっ!トウヤがオススメしてたあの店に行こうよ!」
ハヤセくんがそう言いながらトウヤくんを誘う。
T「いいねぇ!あそこ個室もあるしゆっくり出来るよ?マスターに電話して個室あけといてもらおうっと♪」
マハロくんの声に乗っかったハヤセくんとトウヤくんも珍しくウキウキしている。
J「そんないい店あるんだ~何食おうかな~?」
M「そこのワンプレートランチがオススメらしいよ?」
J「ワンプレートで足りるかな~?」
H「ジョウキもうこれ以上大きくならないで〜w」
ハヤセくんがわざとらしくふざけながら俺に言った。
T「個室あいてるみたいだから行こうか!」
トウヤくんの言葉により俺たちはタクシーでその店に向かった。
外観はアンティークな感じの小さな喫茶店。
中に入るとヒゲの生やしたオシャレなマスターが優しく微笑みかけてくれた。
トウヤくんは軽くマスターに挨拶をして慣れた足取りで店の奥へと入っていく。
俺たちもその背中に続いて入っていくと、とある個室の前から聞き覚えのあるような声が微かに聞こえた…
ような気がした…
J「…ん?」
M「どうした?」
J「いや…なんでもない…」
M「もぉ~早く入って!」
マハロくんに背中を押されて急かされた俺は個室へと入り柔らかいソファに座った。
T「ワンプレートでいいっしょ?」
トウジくんは座るなりメニューをひろげず勝手にワンプレートランチを頼んだ…
M「隣…女の子だね?」
マハロくんは隣から微かに聞こえる声に耳を澄ませて嬉しそうにそんな事を言っている。
H「マハロの頭の中は女の子の事ばっかり~?ファンが知ったら泣くよ?」
M「男なんだから仕方ない!」
2人のそんなやり取りを見て俺とトウヤくんが笑っていると隣の個室から叫び声が響いた。
T「今、隣の子さマハロって言ったよね?」
H「言った!マハロのファンが隣にいる!」
M「マジか…めっちゃテンション上がる。」
三人が頭を寄せて小声でワチャワチャする中、俺は考えていた。
隣から聞こえてくるこの声…やっぱりどっかで聞いた事があるな…と。
T「ジョウキ?隣の子が自分のファンじゃなくて拗ねちゃった?」
J「んなわけないでしょ?」
トントン
マスター「すいません隣うるさくて…ウチの妹なんかですぐ静かにさせます」
H「妹さんがマハロのファンなんですね?」
マスター「マハロ?ですか…?」
その言葉を聞いて知名度がまだまだだと気づいた俺たちはもっと頑張らなきゃな…
と思った…。
アナside
喜びから少し落ち着いた私たちは涙でほぼスッピンになったままの顔でランチを食べ終えた。
そして、お兄様のこだわりコーヒーを飲みながらゆっくりとした時間を過ごした。
Y「服買いに行かなきゃなぁ~マハロのために。」
A「ってかさ?いつからそんなマハロのファンになったわけ?」
Y「え?アナが初めてライブ連れてってくれた時からだよ?」
A「ってか言ってよ!」
Y「いやさぁ~散々アナに現実見ろとか言っておきながら自分が芸能人にハマったとはなかなか言えないでしょ?」
A「確かにねぇ~!」
Y「まぁ~そういうことよ!ねっ!あぁ~マジでマハロLOVE~!」
A「声が大きいから!隣にもう人いるんだよ!」
Y「あ…またお兄ちゃんに怒られる。」
A「気をつけてよ。あ、ごめん…ちょっとお手洗いに行ってくるね?」
Y「は~い!右の奥にあるから!」
A「オッケー!」
私が個室を出てユナに言われた通りに右奥へと進むと、ふと鼻についた香水の香りに私の胸がドキッと返事をした。
この匂い…昨日、ジョウキの手から香っていた香水と同じ匂いだ…
頭の中にジョウキの顔がフラッシュバックして胸の奥がぎゅーっと締め付けられた。
ダメ…ダメ…
相手は芸能人もう会うことなんてない…
一方的に私が見てるだけなんだから…
諦めるんだから一週間後のライブが最後…
私は現実の恋をするの。
まるで自分を言い聞かせるかのように頭の中で何度も唱え、止まってしまった足を進めてお手洗いへと向かおうと最後の角を曲がると…
勢い余って出会い頭に人とぶつかり、私は尻もちをついた。
A「痛っ…あ…すいません…」
「すいません…大丈夫…って…マジか…」
私は痛いお尻を撫でながら相手を見上げると小さなクマのキーホルダーが揺れている…
このキーホルダーって…
A「わ…私の王子様?」
J「だから勝手にあんたの王子様にするなって!」
A「私の王子様!!」
想像より大声が出てしまったせいでユナが個室から顔を出した。
が…そのあと次々と信じられない顔が私の目の前に現れた。
え…ウソ…!?
ジョウキだけじゃなくてトウジにマハロにハヤセまでいるの!?
その現実に私がパニックになっているとユナの声が店内に響き渡る。
Y「ぎやぁ~マハロ!?」
J「…うるせぇ…あの声ホント耳に響く。」
A「あ、すいません…いつもはクールなんですけど…って…あ!ジョウキさん体調よくなったんですね良かった。じゃ失礼します」
私はそう言ってペコっと頭を下げジョウキの横を通り過ぎようとすると、何故かジョウキに呼び止められた。
J「あ、ちょっと!あんた…本当に俺のファンなの?」
A「え…?え…っと…」
ファンですが一週間後にはファン辞める予定です…
な~んてこの時の私は口が裂けてもジョウキ言える気がしなかった。
つづく
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