第2話
アナside
ユナは私がどんなにジョウキに貢いで貢いで貢いで貢ぎまくっていたのかを知っていて、興味のないはずのライブにも一緒に付いてきて、見たくもないはずDVDを一緒に見てくれた。
Y「いい加減、現実の男に恋しなよ~!」
なんて言いながらも
Y「最近、あっちの国こっちの国とあなたの王子様は忙しそうだね?」
なんて言いながら私の生きがいだあるオタ活を理解し付き合ってくれていた。
だから、こんなに必死になってくれるユナの気持ちはすごく嬉しい……
だけど………
Y「アナ!いいの!?ジョウキだよ!このままでいいの!?」
ユナは必死な顔で私の腕を掴み、痛いぐらいに私の体を揺らしながらそう言った。
よくないよ…やっと出会えたんだもん…
本当はよくない…でも…でも…
A「熱出てんだよ!?そっとしといてあげようよ!可哀想じゃん!私の王子様!」
これも私の本音…
本当はサインだって握手だってしてほしかったけど、倒れるほど頑張ってる人にそんなこと私はとても言えないよ。
Y「知らないからね!後で後悔しても!もう、こんなチャンス来ないよ!」
A「分かってる!あれはジョウキじゃなくてジョウキに似た人だったって思うから!」
Y「あんたバカじゃない!?」
A「バカじゃない!」
Y「もう、勝手にしなさい!私!帰る!」
A「ユナのバカ!私も帰るし!もう知らない!」
酔っている勢いでユナと口論になり、1人で寂しく帰り道を歩いて帰った。
ジョウキに会えたのに何も出来なかった悲しみとユナに八つ当たりしてしまった後悔が胸に押し寄せる。
マンションに近づきふと無意識にバッグからスマホを取り出そうと手を差し込んで私は気づいた…
スマホを落としたことに。
焦る私は必死で記憶を遡り、どこで落としたのか私は考える。
ユナと飲んでいた飲み屋だろうか?
いや、店を出る時にクーポンを見せたからあの時はあったはず…
電車でユナとの写真をSNSにアップしてバッグに入れて…
あ…あの時だ!
私はジョウキを見て驚いた時にバッグを落とした拍子にスマホを落としたのかもしれないと思った。
私は今朝ハイヒールを選んでしまった事を少し後悔しながら小走りであの場所へと向かった。
でも…走れば走るほど酔いが回って気持ち悪くて吐きそうだ。
痛くなってきた足を解放するかのように私はハイヒールを脱ぎ、手に持って星空を眺めながらゆっくりと歩いた。
綺麗な三日月が揺ら揺らとゆれて見えるのは私が酔っているせいなのか?
それとも涙が滲んでるからなのか?
絶対会う事なんてないと思っていた人が目の前に現れただけなのになんだろこの虚しさは…
現実と妄想が入り混じり、現実の恋が一生出来ないかもしれないと思ったら…
ふと怖くなった…
ジョウキside
なんとかの思いでさっきの場所まで戻ってきたが、暗くてよく見えない俺はフラつく体にムチを打ち地面を必死になって探していると…
バキッ!!と俺の足元から鈍い音が鳴り響いた。
恐る恐る俺は自分の足元に視線を落とすと、そこには画面がバキバキに割れてしまったスマホがあった。
慌てて誰かのスマホを手に取り、ホームボタンを押すとロック画面に顔の俺が映し出された。
俺はそのスマホのちょうどいい光を借りて鍵を見つけてお気に入りのクマキーホルダーが待つチェーンへ引っ掛けた。
そして、必要のなくなったスマホをどうするべきか考え込んでいるとそのスマホが慌ただしく鳴り響いた。
〜着信 ユナ 〜
液晶にはそう名前が表示されていて、俺は押さなくてもいいボタンをスライドしてしまい仕方なく耳を当てた。
Y「もしもし?アナ?さっきはゴメン…アナがジョウキの事本気で好きなの知ってるからつい…ゴメンね…」
J「………。」
Y「もしもし?アナ?ユナだけど…まだ怒ってんの?」
J「スマホ落としたみたいです。そのアナって人…」
Y「え!?あ…すいません!今どちらですか!?」
J「あ…交番所に預けておきますので…では…」
Y「え!あ…ちょっと!!」
俺はそう言って一方的に着信を切った。
俺は仕方なく1番近くにある通りの交番所へと向かおうと歩き出すと、目の前から裸足のあの酒臭い女が泣きながら歩いてきた。
J「あの……」
A「ひやぁ~あぁぁ~!!」
恐る恐る声をかけたのが悪かったのか、悲鳴をあげられ俺は慌てて女の口を押さえた。
J「俺だよ俺!」
果たしてこの言葉があっているのか俺には分からないが、さっきの悲鳴は黄色い悲鳴はなく不審者に向ける悲鳴だった…と思う。
J「これ…落し物じゃない?」
A「え…あ…はい…ありがとうございます」
女はスマホを手に取り頭を下げるとホームボタンを押した。
A「画面がバキバキに割れてる……」
J「えぇぇぇえ?マママママジで?ななななななんでだろな?」
俺は焦りながらそうとぼけて頭の後ろをポリポリと掻く。
A「あ、すいません…ありがとうございます。お体お大事に…」
すると女はハッと我に帰ったような顔をしてあっさりとその言葉だけを残し、そそくさと去って行き、俺は1人ポツンと取り残された。
つづく
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