二人の王子様
樺純
第1話
アナside
今日も飲みすぎた…
いつも仕事終わりにユナと2人でベロベロになるまで飲んだくれるのが私の楽しみで、いい歳した女2人がフラフラと千鳥足になりながら腕を組み鼻歌交じりに夜道を歩く。
A「あぁ~今日も飲んだなぁ~!ユナ、酒強すぎ!」
Y「アナには言われたくないわ~アナこそ強すぎ~!」
ユナは黒い艶やかな髪をかき上げながら私に微笑みかけた…っとその時!!
私は何かに引っかかり転びそうになった。
A「痛っ!何!?」
私は隣にいたユナに支えられながら態勢を整えお気に入りのヒールを少し気にした。
Y「え…ちょっと…あれ…」
私はユナが指差す方をみると男性が倒れていた。
Y「ねぇ…アナ…どうする?」
A「どうするって…放っておくわけにも…」
Y「だよね?」
私たちは仕方なく倒れた人に近づき様子を伺った。
A「ユナ、救急車を…」
Y「うん…」
ユナはバッグからスマホを取り出そうとするが酔いが邪魔をしてうまく手が動いてない。
私は倒れた人の肩を優しく叩きながら耳元で声をかけた。
A「大丈夫ですか!?私の声聞こえますか!?」
「すいません…迷惑かけて…もう大丈夫なんで…」
弱々しい声でそう言う彼は起き上がろうとする彼の腰にぶら下げられたチェーンに目がついた。
そこには古びた小さなクマのキーホルダーがぶら下がっており、私はそのキャラクターに見覚えがあった。
A「救急車呼びます?」
「本当に大丈夫なんで…」
彼はゆっくりと起き上がり何度か頭を振って立ち上がる。
A「本当に大丈夫なんですか?」
「……はい…」
そう言って歩き出すがすぐに足元がフラついた。
A「全然大丈夫じゃないですよ。」
咄嗟に彼を支えた体からカナリの高熱が出てる事が分かった。
「すいません…歩いて帰れるんで…」
A「どう考えても無理でしょう!?救急車で病院に…」
今まで暗くてはっきりと顔がみえなかった…
がしかし…
立ち上がった彼の顔に街灯の光があたり顔を確認して私は震えた。
え?ウソ…ウソでしょ…?
今、私の目の前にいるのは…
Y「えっ!?ジョウキじゃん!?アナ!UNoのジョウキだよ!あんたの王子様じゃん!」
酔いがスーっと冷めていき頭の中でジョウキという名前がグルグルと回る。
会いたくて握手会特典付きCDを何枚も買った…
会いたくて同じ公演のライブ何度も見た…
神様これは夢ですか?
気づけば私はご褒美で奮発して買った大切なバッグを落として震えた手で彼を拝んでいた。
ジョウキside
朝からずっと体調は悪かったが、仕事を休むワケにもいかず俺は重い体を起こして仕事に向かった。
なんとか収録を終え、マネージャーに家に送ってもらって部屋に入るなりベッドに倒れ込んだ。
頭がガンガンと痛いくカラダが焼けるように熱くて死にそうだ。
足元がフラつきながら冷蔵庫に向かうが中身は空っぽ…
俺は虚な頭のまま財布を手に取り、鍵を腰に引っ掛けコンビニへと向かったはず…
なのに?
気づけば酒の匂いが漂う女が必死な顔して俺に話しかけている。
背中に伝わるコンクリートの冷たさと見上げた星空を見て俺は気づいた。
あぁ…俺…倒れたんだ…と。
J「すいません…迷惑かけて…もう大丈夫なんで…」
俺は必死に起き上がろうとしても体に力が入らない。
A「今、救急車呼びます?」
J「本当に大丈夫なんで…」
俺はゆっくりと起き上がり、何度か頭を振ってヨタヨタと立ち上がったが自分の体が自分の体じゃないみたいだ。
A「本当に大丈夫なんですか?」
J「……はい…」
そう言って歩き出したものの、俺の足が言うことを聞いてくれず力が入らない。
A「大丈夫じゃないですよ。」
何やったんだろ…俺…女に支えらるなんて情けないな…
そう思いながら息を吸い込むと、想像以上の女の酒臭さに吐きそうになり思わず息を止めた。
J「すいません…歩いて帰れるんで…」
A「どう考えても無理でしょう!?救急車で病院に…」
その声はフェードアウトするかのように消えていき、目の前の女は俺の顔を見てまるで目をまん丸とさせ、金魚のように口をパクパクとさせていた。
Y「えっ!?ジョウキじゃん!?アナ!UNoのジョウキだよ!あんたの王子様じゃん!」
後ろの黒髪の女が甲高い声でそう叫び、目の前にいる小柄な女は小動物みたいに目を丸くし、両手を合わせ俺を拝んでた。
J「助けていただいてありがとうございます。すいません…失礼します…」
俺は一刻も早くこの場所から逃げたくて、回らない頭をフル回転しながら、ヨタヨタの足でその場を立ち去った。
すると、後ろから女2人の会話が微かに聞こえてきて俺は聞き耳を立てる。
Y「アナ!いいの!?ジョウキだよ!このままでいいの!?」
A「いいの…熱出てんだよ!?そっとしといてあげようよ!可哀想じゃん!私の王子様!」
なんだよ…勝手にお前の王子様にすんなよ…
そう内心思いながらも、今の俺にはそっとしといてもらえる事のありがたみが身にしみた。
そして、俺はマンションに着きいつものように腰のチェーンに手をやり気づく…
家の鍵を落としたことに………
つづく
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