T/F

純天導孋儸

TRUEorFALSE

『T/F』

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@概要(ログライン)

美術部で高校三年生になったばかりの深山ヒカルは、秘密の恋仲で去年クラスメイトでもあった、結城アギトのうわさを耳にしてしまう。病弱な彼はダブりで二年生を再度しており、クラスが別々になっていてそのクラスに新任教師の坂木トモノリというイケメン文学教師が現れ、人とあまりかかわりを持たないはずの結城と二人がよく一緒に姿を消すのだとか。

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@世界観

ぐんまー 現代高校

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@登場人物

・深山ヒカル(17)明るく友達も多いが落ち着きのある男。周りからはノリもよく接しやすい人物だと思われているがその実、あまり人に心を開かない性格。不安症気味。独占欲強め。

・結城アギト(18)遅生まれ。アルビノ気質のある少年。青い瞳と物静かでけだるげ、無気力。人とのかかわりを好まず、いつも窓際でうとうと、寝息を立てている。ねこっけがある。

・坂木トモノリ(25)ド近眼メガネ男性。寡黙で人当たりもいい。院卒。文学教師。

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【1ページ】

〇群馬県 富岡市 山岳(昼) 引き絵

   群馬県の富岡市山岳部は緑の多い山々の間にある谷に集積都市を持つ。


〇都市を囲うU字型山脈の先端の丘にある阿武木高等学校の校舎(モデル:富岡市西中学校)

   山脈より町を見下ろす校舎は四六時中日当たりがいい。


〇教室棟 四階 3-B教室内

   英語担当教師が黒板に、授業で用いている小説の一文を抜粋し記している。深山ヒカルは教師の声を聴きつつ、頬杖をつきながら窓の外に目をやり、物思いにふけっている。

教科担当教師「ええ、ですのでここで言われている〝simple〟という言葉には相手に対する命令的意識。そして諭すことの意味があると捉えられます。では~深山君。物語を通じて伝えたかったことは何でしょう」

   突然刺されたことに動揺しつつバッと立ち上がり教師の質問に答える。

ヒカル「え、あ、はい! え、えっと…人生そのものに対する暗喩、ノーマル・イズ・ザ・ベスト…みたいな感じですか?」

   教師が自愛の笑みをヒカルに向ける。

教科担当教師「うん、いい捉え方です。どうもありがとう。ここでは〝simple〟というワードをよく耳にすることに重きを置いてみましょう。登場人物の潜在意識の中に――」

   ゆっくりと席に子を下ろし、苦悶の表情で再度窓の外を見た。



【2ページ】【3ページ】

〇タイトル:『T/F』(見開き)

   深山ヒカル、結城アギト、坂木トモノリの三人絵。頭を中心に円を描くように。



【4ページ】

〇同・校内 三階廊下(昼休み)

   廊下を足取り早く、つかつかと進んでいく。胸に抱かれたお弁当の入った巾着袋からはカチャカチャと箸ケースがぶつかり合って音をたてている。

〇同・校内 2-D教室

   教室の前で深呼吸をしたヒカルは

ヒカル「すみません、アギト…結城アギトくんはいますか?」

   廊下近くの席でだべっていた女子生徒に一人がヒカルの方を振り向いた。


【5ページ】

女子生徒あ「ああ、結城くんならあそこに…あれ? いない…ねぇ、結城くんどこ行ったか知らない?」

女子生徒い「ああ、結城くんならさっき坂木せんせぇとどっか行ったよ~」

   眉間にしわを寄せ、不安そうな表情に気迫のある強い言葉で質問した。

ヒカル「どこに行ったか分からない?!」

   ヒカルに両肩を掴まれ揺さぶられ、戸惑う女子生徒あ。

女子生徒あ「えあ!? えっと…多分、古典用の書庫に行った…と…」

ヒカル「おけ、ありがと!」

   ヒカルは階段に向かって駆け出した。


【6ページ】

〇同・校内 階段→一階廊下

   二フロア分階段を駆け下りた、ヒカル。ほかの階より暗い一階では、冷たい空気が流れ、階段から二部屋先の教室の前に行き、忍者のように壁にへばりつき、そっと扉の窓から部屋をのぞくと、アギトと思われる白髪のシルエットが長身の男と顔をぴったりと突き合わせているように見えた。

〇同・校内 一階 書庫

   教室に飛び込むヒカル。

ヒカル「なにしとんのやぁあああああ」


【7ページ】

   体を大きくびくつかせて驚く坂木教諭に対し、いたって落ち着いて振り向く、アギト。

アギト「ヒカル…どうしたの?」

   静かに問うアギトに、焦りを隠せぬままヒカルは問い返す。

ヒカル「ア、アギト…何して…」

   不思議そうにアギトは顔を傾けてから淡々と述べる。

アギト「せんせぇのネクタイ曲がっててさ。直そうと思ったのに彼身長高いんだもん」

   目を丸くしながら二人を交互に見る。


【8ページ】

ヒカル「え…? あ、あぁ、そう、なんだ…」

   ほっとしていると、坂木教諭は顔をバッと勢いよく上げ、ネクタイを左右にいじくり、顔をそらした。

   気まずい表情を浮かべるヒカルに両手を後ろに回して近寄ってくる、アギトが小声で耳打ちする。

アギト「嫉妬…した?」

ヒカル「…っ!」

   顔を赤らめるヒカルににやりと笑うアギト。


【9ページ】

坂木「あ、あのぉ…結城くん…」

   なよっとした坂木教諭が声をかけてき、それにアギトは振り返り、応じようとする。

アギト「あぁ、せんせぇすみません。今戻り——」

   強く、アギトの手をヒカルはつかみ、宣言する。

ヒカル「すみません、先生! 俺が彼に非常に重要かつ、拮抗した事象が発生したため、用事はおひとりでお願いします!」


【10ページ】

坂木「あ、ちょ」

   静止も聞かずにアギトの手を引き、飛び出したヒカル。教室に残された坂木教諭は呆然と突っ立っていた。

〇同・校内 階段

   息を切らしながら階段を駆け上がるヒカルに手を引かれるアギト。

アギト「ちょっと、ヒカル。痛いって」

ヒカル「…」


【11ページ】

   無言で階段を上り続けるヒカルにポそりと謝罪を述べる、アギト。

アギト「ごめん やりすぎ、た…」

   背を向けたまま立ち止まったヒカル。

アギト「ごめんて… !?」


【12ページ】【13ページ】

〇同・校内 階段 斜め下よりアオリ(見開き)

   ヒカルが下段に立つアギトを抱きしめている。ヒカルの後ろにある階段踊り場にある窓からは強い光が差し込んでいる。


【14ページ】

   震えるヒカルの背をやさしくなでる。

アギト「ヒカル…」

   うつむき顔の額アップ。

ヒカル「本当に、不安になった」

   アギトの顔アップ。

アギト「ごめん」

   ヒカルの後頭部からアギトを覗き込むように。

ヒカル「なんであんなことしたん?」


【15ページ】

   アギトとヒカルの横からアングル。

アギト「違う暮らすじゃん?」

ヒカル「うん」

アギト「たくさんかまってほしくて」

ヒカル「弁当、あるやん」

   悲しみの表情をアギトに見せるヒカル。

ヒカル「俺はマジで不安だった」

アギト「それはマジごめん」


【16ページ】

   申し訳なさそうに下からのぞき込んでくるアギトが小さく言う。

アギト「お弁当…もらっていい?」

   目元を赤くしたヒカルが小さくうなずく。

ヒカル「…ん」

   ヒカルとアギトが会談に座り込み、アギトがヒカルの頭をなでて慰めながら返事を返す、柔らかい絵。

アギト「ごめん おいしいよ」

ヒカル「ん」

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