第2話-④

「ごちそうさまでした」


 私と海那うみなさんの前には空になった皿と、ちょっと残ったキャラメルラテとアイスコーヒーが並んでいた。

 あの後すぐにパンケーキが運ばれてきて、あまりの美味しさにパクパクとあっという間に食べきってしまった。

 

 私のパンケーキは、ふわふわなパンケーキの上にバニラアイス、生クリームがたっぷりとかかったもので、海那さんのパンケーキはバニラアイスの代わりに苺のソースがたっぷりかかったもの。

 パンケーキは見た目通りふわふわな食感で、バニラアイスとも相性抜群だった。

 海那さんのパンケーキも苺のソースがとてもおいしくて、1口どころか半分くらいシェアしてしまった。


「お腹も膨れて大満足でした・・・。こんなに美味しいパンケーキ食べたの、私初めてです」


「満足できたならよかった、私も甘いものいっぱい食べれて大満足」


 海那さんも満足したようにお腹をさすっている。

 そこで私はふと思い出した、海那さんにはまだ教えてもらってないこの後の予定のことだ。

 さっきはここの近くに遊びに行くようなことを言っていたけど、詳しくは聞いていない。 


「そういえば海那さん、この後って何する予定なんですか?」


「うーん、まだ秘密。ついた時のお楽しみね」


 海那さんはいたずらする子供のような笑顔でそんなことを言う。

 こういう顔も可愛いな。なんてことを思ってしまう。


「じゃあヒント、ヒントだけください」


「ヒントかぁ・・・」


 海那さんは少し悩んだ後「海に関係していて、私の好きなところ。かな?」そんなことを言った。


「海に関係していて、海那さんの好きなところ。ですか・・・?なんだろ?」


「どこでしょう?それじゃ葉月はづきは考えといて。私はちょっと席外すね、5分くらいで帰ってくるから」


「あ、わかりました。いってらっしゃいです」


 海那さんはそう言ってお店の奥に行ってしまった。

 私は一人海那さんとこの後どこに行くんだろうなぁ。と考えながらアイスコーヒーの残りを一息に啜った。




「ごめん、お待たせ。遊びに行くところどこか分かった?」


 5分くらい経ったタイミングで海那さんが戻ってきた。


「んー、なんとなく水族館とかかな?って思ったんですけど、当たってます?」


「さぁ?どうでしょ?」


 私がなんとなく思いついた場所を言うと、海那さんはおどけるようにそんなことを言った。

 どうやら答えは教えてくれないらしい。

 そこで私は、海那さんからかすかにたばこの匂いがすることに気づいた。


「もしかして海那さん、たばこ吸ってました?」


「あれ、もしかして臭い?」


「全然そんなことないんですけど、なんとなく匂いするなって思って」


「もし嫌いだったならごめんね?」


 海那さんが申し訳なさそうに言うので私は、自分がそんなにたばこの匂いは気にらないほうだと説明した。

 実際、家ではお父さんもたばこを吸ったりするから匂いには慣れてる。


「そっか、ならよかった」


 と海那さんは安心するように言った。




「それじゃそろそろいこっか」


 その後色々話し込んでしまい、気づいたらお店に入ってから1時間ほど経っていた。

 

「そうですね。あ、お金、いくらですか?」


 私が財布を取り出そうとすると、海那さんが「あ、もう大丈夫だよ」と言った。

 なにが大丈夫なんだろうか?と海那さんを見る。


「さっきタバコ吸いに行くときお会計済ませといたから、そのまま行けるよ」


 なんでもないことのようにそんなことを言うのだった。

 ドラマみたいなことを簡単にする人だなと思い、唖然あぜんとしてしまう。

 というかそんなことほんとにできるのか・・・、慣れてるお店だからだろうか?


「さすがに悪いので、自分の分だけでももらってください」


「いや、さすがに女子高生に払わすわけにはいかないよ」


 私がお金を出そうとすると、そんなことを言ってくる。


「いや、でも・・・」


「じゃあ今度飲み物買うとき葉月が奢ってよ」


 私が食い下がろうとするからか、海那さんはそんなことを言ってきた。

 私は「分かりました・・・」というしかなかった。


 山田やまだといい、海那さんといい、世の年上の人たちはなんでこうもかっこいいことをさらりとやってしまうのだろうか・・・。いや山田は同じ歳か・・・。

 私も同じようなことを由紀ゆきちゃんとかにやってみようかな。となんとなく思ってしまうのだった。

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