第10話 キス

私達はそれから

少しだけ残った高校生活を満喫した


いつも一緒にいた

仲間ともいたし

二人きりになりたい日は

授業をサボって体育館の裏に行った


話したり

手を繋いだり

じゃれあっていた


でも

キスまでは遠かった


卒業間近


「ねぇ、凌太」


「何?」


「・・・しないの?・・・キス」


凌太はこちらを見て


「菜々美・・・したいの?」


ちょっと微笑んで

意地悪な返しをする


私は恥ずかしくなる


「凌太・・・そんな奥手だったっけ?って思っただけ

けっこう経験あるし

それなのに

私には・・・何もしないな・・・って」


たどたどしく言うと


「大切にしたい」


そう言って

私のおでこにキスをした


もう鼻血が出そうなくらいに興奮した


凌太が好き

凌太が大好き

こんないい男と長い間一緒にいたのに

どうして私は・・・もっと早く好きな気持ちに気が付かなかったんだ!!


自分自身に怒りを感じた


それからすぐに

卒業式


クラスの皆で打ち上げパーティーをした

二次会のカラオケで

凌太は私の手を握ってにっこり笑った


「ちょっと二人になろう」


そう言って

私達は

ワイワイとにぎわうボックスの中なら逃げ出した


私達はフラフラと街を抜けて

小さな公園に着いた


「懐かしい」


そこは

小さな頃

凌太と一緒に遊んでいた公園だった


「タコの滑り台ってあんなに小さかったっけ?」


そういって

凌太は滑り台を駆け上り

私にも上って来いと手を出した


私だって運動神経は悪くない方だけど

あまりに滑っるから

凌太の手をかりてやっと上ることができた


タコの中に入ると

真っ暗ではなく

外の街灯でぼんやりロマンティックな空間になっていて

凌太は私を座らせると

後ろから抱き着くように自分も腰かけた


顔が見えないと

余計に緊張する

いつも

じゃれてるけど

なんだか今日の雰囲気は・・・素敵すぎて

ドキドキが止まらない


「なんで何も話さないの?

何か話してよ・・・緊張する」


私が言うと

凌太は私の首にキスをした


柔らかくて

優しいキスに

興奮する私・・・


キスがしたい

唇に・・・キスしてほしい

私の中で欲求が爆発しそうになった時


凌太はくるっと

私の体を自分の方に回し向き合った


細く奇麗な指先で

目にかかった私の髪の毛を撫でるように避けて


「菜々美・・・好きだよ」


そう言うと

ゆっくり顔を近づけた


来る来る来る来る


そして

ゆっくり

優しくキスしてくれた


私はその間

目を見開いて

焼き付ける様に凌太の顔を見ていた


奇麗


凌太は真面目で優しい


だから

軽く触れた唇は

数秒でゆっくり離れていった

そして

ギュッと強めにハグして


”ふ~っ”


っと、声になりそうなため息をついた

凌太の鼓動が聞こえた

きっと

彼も緊張してたのかも


私なんかより

経験豊富なのに

こんなに緊張して・・・可愛いかった


彼は私のものだ

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