第6話 高2の春

そう言えば

凌太に彼女ができる度

私は何らかのちょっかいをかけていたな・・・

もしかしたら

あの頃から

私、凌太を好きだったのかもしれない


ふり返ると

過去の自分の恥ずかしい思い出が出てきた


【高2の春】


凌太には付き合って一年の彼女がいた

その前につきあっていた初めての彼女は

中1~2年の冬まで付き合っていたけど

彼女が両親の転勤で引っ越し

塾もやめてしまったので

なかなか会えなくなって自然消滅した

子供だったから

バスや電車を乗り継いで

片道3時間は遠すぎる恋だのだろう


彼女とは、キスくらいはするかと思ったけど

結局、手を繋ぐ

軽くハグするくらいで終わったらしい


しかし

二度目の彼女は

なかなか速いスピードで進み

半年もかからないでキスまでは進み

そろそろ

二人きりでいるとイチャイチャしてしまうことが止まらなくなってきていたらしい


「とうとう凌太

やっちゃうのかな?」


仲間で話すのは

いつも凌太の話だった


「いや~あいつ顔はいいけど

チキンだからね・・・彼女がグイグイくればやっちゃうかもね」


みんな知らない

あいつ

結構、肉食系なのに・・・男らしいとこ

結構あるの知らないのかな?


「菜々美はどう思う?」


少し考えて


「凌太が…ないでしょ」


私は、そういった

そう願っていたのかもしれない


「でもさ・・・もしやったら

仲間の中で一番最初だね」


私の中で

最初だね・・・という言葉が頭に残った


別に

私が誰かと一番先にやって

自慢したいわけではなく


凌太の最初が

失われてしまうことに

不安を覚えていたのかもしれない


大切にしていた玩具を取られてしまうような

感覚に近かった


あの日も眠れなかった


【あの日の夜】


私は夜

凌太にメールした

居てもたってもいれなかった


”寝てる?”


”寝てないよ”


”会える?”


”は?”


”は?だよね”


”何かあった?”


”いやいや

ちょっと話したい”


”じゃ、電話しよか?”


”会って”


”出れるの?”


”親は寝てる

そっと抜けれる”


”どこで会うの?”


”凌太の部屋の窓開けて”


”俺んち?”


”ダメ?”


”いいけど”


”じゃ、開けて”


そうメールした時には

既に部屋の前にいた

凌太の部屋は一階の奥

窓の前に立つと

カーテンが開き

凌太は私の姿を見つけビックリした顔をして

直ぐに部屋に入れてくれた


「もう来てたの?」


小声で話す凌太


「そお?」


何故か強がる私


「もし寝てたらどうしてたの?」


「窓、叩いて起こしてた」


凌太はクスクスッと笑って


「菜々美っぽいね」


そういってまた笑った


「っで

何なの?」


凌太が心配そうに聞く

それはそうだ

急に部屋の前まで来るなんて・・・どうかしている


不器用な私は

いまいち

言いたいことが言えないで


「凌太と彼女の事

気になって・・・」


そう聞くと

凌太は頬を赤くして


「ま、まぁ・・・話してる通りだけど・・・」


戸惑う凌太

私はそれ以上話を続けることが出来なくて


ワンピースを着たまま

ブラを取り

スカートの下から

パンツも脱いだ


「どうしたの?菜々美」


驚く凌太は固まる


自分でもどうしたいのか分からなかった

だけど

服を脱ぐ勇気は無かった


「どうしたいと思う?」


そう聞くと

凌太は私が脱ぎ捨てた下着を拾って


「分からないけど

脱がない方がいいよ」


私から目を逸らして冷静に言うから

腹が立って


「凌太が彼女と初めてをする前に

私が触れられたい」


そう言うと

凌太はしばらく考えて


「それって・・・告白?」


私も考えて


「違う」


キッパリと言った


すると

凌太は


「じゃ何?

俺、友達の・・・っていうか幼馴染の体に何したらいいの?」


そうだよね

そうだと思う

私、何してるんだろう?


自分がしたいことが分からない

ただ

凌太を困らせて

私も

恥ずかしくなってしまうような状況になってしまって

涙が出そうなくらい

苦しくなって


私は何も

それ以上はなすことなく

無言で窓を開け帰っていった


後日

そっと

紙袋に入れた下着を

凌太が私の鞄に入れてくれていた


凌太が童貞を捨てたのは

それから間もなくの事だった


彼女の事を

大切に

大切に

愛したらしい


その話を聞いた仲間は


「あ~私も凌太みたいな彼氏欲しいな~」


とため息をついた

私は直接

凌太の口からその話が聞きたくなくて

用事をでっちあげてエスケープした


だから

友達というフィルターを通して

凌太の初めてのはなしを聞いた


私も

心底、羨ましく思った


でも

それは

その頃特有の興味なだけで

恋とか愛とかとは結びつけたりしてなかった


あの恥ずかしい夜

私が貰えなかったものを

彼女が貰えたことへの嫉妬はあるけど

平常心・・・平常心・・・


あの日の私は苦しみに近い胸の痛みを抑えながら、冷静に受け止めた

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