第7話 奪いに行きます
今の私は、あの頃と一緒だ
あの頃の私と一切変わっていない
ただ変わってしまったのは
今回はあのころとは違う
本当に奪われてしまうという事だった
焦りは募っていった
私は一週間の有休をとった
そして
凌太を探し
この気持ちをぶつけに行こうと思った
異常な行動だ
でも
居てもたってもいれなかった
何年も会っていないのに
身勝手極まりないことくらいわかってる
だけど
これが私なんだ
見切り発車もいいところだった
私はどうしたいのだろう?
この年齢になっても
凌太のこのになると
ポンコツ並みに理解不能な行動をしてしまう
次は
若気の至りでは済まない
大火傷してしまう
凌太に会うまでに
ちゃんと
自分の気持ちを整理しなくちゃ
私は
それだけを
理性の欠片として握りしめて
彼を探し始めた
探し始めは
中学・高校の頃の友達にあたった
今の時代
人探しは
簡単に終わる
ほんの1時間で
凌太の現住所・今の職業の事が分かった
凌太
賢かったから
良い大学行ったし
やはり
良い会社に入ったようで
充実した社会人生活を送っていて
最近のSNSを知る友人から見せてもらった画像は
ハワイに旅行に行った時のものらしく
アロハシャツにハーフパンツで
ラフな感じが自然で格好よく
勝手に胸がキュンッとして
”凌太ってこんな感じだったっけ?”
と思ってしまうくらい
だけど
笑顔はあの頃のまま
優しく誠実さが溢れている
その写真一つで
私は間違えなくを胸のときめきを確信してしまった
絶対に欲しい!!
わがままでいい
私は凌太が欲しい!!
そして翌日
私は彼に会いに行く
住所をチェックして
最終確認
早く寝よう
お肌のためにも
後悔のない再会を果たしたい
”菜々美ってこんなにいい女になったの?”
って、思われたい
翌日
なんだかんだ考えていたら眠れなくて
思ってたより遅く目が覚めた
顔を洗って
鏡を見た
ちょっと・・・いまいちだけど
悪くはない
凌太の相手
”年下じゃなけれないいな・・・”
ナチュラルに潤ったお肌には
勝てないよね
私はもう
化粧でごまかしてしまう年齢になって来たから
ちょっと自信喪失しちゃう
いや
私達には
それ以上の思い出がある
年下だろうが
何だろうが
勝てる
私は
そう意気込んで
彼に会いに向かう
電車で1時間
バスで15分
ちょっと迷子になりながら
着いたのは夕方過ぎ
マンションの下から見上げる
ここに住んでいるんだ
高そうな所に住んでるんだね・・・緊張が走る
私はエントランスに入り
何度も確認しながら
部屋番号を押す
手が震えて
間違えないように
しっかり
ゆっくり
”ピンポン・・・ピンポン”
「はい」
女性の声だ
えっ?間違えた?
そう思い
メモと番号を見比べていると
「菜々美さん?」
私の名前を呼んだ
戸惑う
「はい」
返事はした
だけど
意味が分かっていなかった
オートロックの自動ドアが開く
「どうぞ」
その女性は
私に部屋へ上がって来いという
”・・・どうしよう”
優しい声だった
でも
怖かった
ここまで来たら
逃げようはなかった
声の主は誰なんだろう?
エレベーターに乗った
そして
8階のボタンを押した
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