3話 クズで愚かで最高の親友

 


「で、大丈夫なのかい間宮。僕の新しい身体の方は」

「あぁ、ホムンクルスだろ? 一週間後に戦う四天王の一人が持ってるあのレアアイテムの指輪を奪えば何とかなるさ。俺の聖剣めっちゃ強いからどうせ勝てるし」


 翔太郎には新しい肉体を用意して、そこに魂を移して生き返ってもらう算段になっている。


 ……ちなみに俺が使える術式と四天王の指輪を組み合わせると、不思議なことにロリっ娘の見た目をしたホムンクルスしか錬金できないみたいなのだが、これは直前まで黙っておく。文句言われて他の方法を探せと言われても面倒だから。


 相棒にはおとなしくTSしてもらおう。戻った後の生活の面は責任もって俺が何とかするので。


「……ていうか間宮。きみ四天王から指輪を奪ったらホムンクルス錬金のためにパーティをこっそり抜けて雲隠れするんだろう? しかもこの世界からはいなくなるんだし、パーティの女の子がかわいそうとかあんまり気にしなくていいんじゃないの」

「おいクズが過ぎるぞ翔太郎。お前を生き返らせるのやめようか」

「ご、ごめん」

「ハァ、萎えた。やめるわ俺」

「ねぇーえー! ごーめーん!!」


 まぁ二人で協力しないとほぼ無理ゲーだから生き返らせないのは嘘だが。


「……結局、間宮はどうしたいのさ」


 その質問に対する正確な答えを俺は持ち合わせていない。

 できるのは感情の吐露だけだ。


「おっぱいが、揉みたい」

「やればいいじゃん」

「あの三人に嫌われたくない……」

「じゃあどうするの」

「わ、わからない。──分からないんだ!」


 地面に拳を叩き落とす。

 項垂れて、涙を流して、俺は叫んだ。


「ああああぁぁぁァァッ゛!!!! 触りたいいいいぃぃぃぃ……ッ!!!」


 帰りたいのは本当だ。

 こちらへやってきて数ヵ月、いやそろそろ半年が経過がしようとしている。

 家族も友人も大学の授業も実家の猫も心配だ。本当に、一刻も早く帰りたい。


「でも、でも、あのクソデカおっぱいを揉まずに帰ったら絶対後悔するし、勢いに身を任せ彼女らの気持ちを無視して触り逃げしても俺の心に後味の良くないものを残す……っ!!」


 さらにいっそう声を張り上げ彼に問う。


「どうしたらいいんだ親友ッ!! 教えてくれェッ!!!」


 涙ながらに、縋るように、俺は幽霊になっておっぱいも触れなくなった哀れな男に心の内をさらけ出した。


 いま俺の感情をぶつけられるのは彼しかいない。

 バカな俺では答えを見つけられない。


 いつでもSNSでの承認欲求に飢えて女装しまくっていたこの男にしか見えない道もあるはずなのだ。

 俺一人では叶わなくとも二人ならきっと解決の光をもたらすことが出来るはずだ。


 そうだろう、翔太郎。

 そうであってくれ、頼む。

 俺にはもうお前しかいないんだ。


「──はぁ、まったくしょうがないなヤツだな」

「ッ!」


 ふと顔を上げるとそこには不敵な笑みを浮かべる男の顔があった。

 俺にはそれがとても、とても眩く見えた。


「生粋のエロゲマスターであるこの僕が教えてあげるよ。殺伐した世界に生きる少女たちのおっぱいをどうすれば合法的に揉めるかを、ね」


 そう。

 滝川翔太郎という男はカスでクズで愚かな変態だが、それでもやはり。

 

「ありがとう……翔太郎」


 やはり、俺の親友なのであった──

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