第45話
私は条件反射で水魔法を、その場でおもいっきり放ってしまった。
「なっ⁉︎ 私の最大限の魔力がこんなゴミに……」
ヴィーネが信じられない表情をしているが、それは彼女だけではなかった。
火傷を負い今も服が燃え続けてしまっている兵士、セドム先生や同級生も、突如具現化された大量の水を見て唖然としていた。
もちろん加減調節をしている余裕もなく、不器用な魔法は全ての炎を一瞬で包み消し、そのまま相殺されることもなくあたり一面に大洪水が完成してしまったのだ。
「「「「「「「「「「ぎゃーーーーーーーー!」」」」」」」」」」
一度具現化してしまった水は魔力を止めても消せない。
授業で習ったことだが、水を具現化するのではなく、この星のどこかにある水を呼び出すと言ったほうが正しい。
つまり、元々存在している水を消すことはできないのだ。
私含めて、全員が大量の水に流されてしまい校庭がプールになった。
校舎内四方八方に水が流れ、ようやく大洪水から解放されたときには全員が呆然として動けずにいた。
服はビシャビシャ。
髪も身体もずぶ濡れ。
女子は慌てて身体を隠して人目のつかない場所へ逃げる。
兵士たちは呆然としていたヴィーネにタオルをかぶせたうえで拘束した。
「兵士一人に殺害未遂。複数名の生徒にも魔法による殺人未遂。これは罪が一気に重くなったぞ」
「……あんな平民の血が混じった女に……。私の魔法が負けた……」
ヴィーネは悔しそうにしながら連行されていった。
私は思う。
せめて、この水浸しになった学園内の処理してから逮捕されてほしかった……。
いや、やらかしたのは私だから仕方ないか。
服装が大変なことになってしまっているし、男子からの嫌らしい視線も気になるが、そんなことお構いなしに学園内の水浸しを処理するための掃除に取り掛かることにした。
そして、その数時間後、国王陛下から直々の呼び出しがあった。
♦︎
やらかしてしまったことを思い出したら、やはり謝罪はするべきだと思った。
今一度、国王陛下に頭を下げて謝った。
「ソフィーナが謝る必要などはない。余計な予算が出るのは仕方ないとして、全ての責任は奴らにとってもらう。むろん、今回かかる出費もな」
「もっと魔力のコントロールができていれば……」
「むしろ、感謝している者もいる。入ってきたまえ」
「え……?」
応接室に入ってきたのは、先ほどヴィーネの魔法で全身黒こげになりかけていた兵士だった。
国王陛下となぜか私に対してまで頭を下げてきたのである。
「あなたの魔法がなければ、焼死していたことでしょう……。命を救ってくださりありがとうございました」
意図的に助けたわけではなかった。
自分の身を守るために必死になっていただけなのに、こんなに頭を下げてくださることがいたたまれない気持ちになってしまう。
しかし、兵士は心から喜んでいるようにも見えた。
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