第44話

 疲れた……。

 言いたいことは山ほどあるが、今はもう考えたくない。

 学園でしぶしぶと後処理をしている最中、私だけが国王陛下に呼び出された。

 思い当たる節が多すぎて、今回は怒られてしまうのではないかとヒヤヒヤしている。


 いつもどおり応接室へ行くと、すでに国王陛下たちが待っていた。

 これはマズい。


「学園の庭を荒らしてしまい申しわけございません……」

「不可抗力で正当防衛なのだろう? 気にすることではない」


 今日、私はとんでもないことをやらかしてしまったのだ。

 国王陛下は優しく言ってくれているが、悩ましい。


 ♦︎


 国王陛下が大きくため息をはきながら胃を痛めていそうな状況の話は少し前に遡る。

 学園内で騒動が起こった。

 というのも、魔法訓練の授業で全員で校庭にいるとき、いきなり兵士のような人たちが一斉に学園に入ってきたのだ。

 しかも、私たちがいる校庭にやってきて、ヴィーネがあっという間に捕らえられてしまう。


「なにをするのですか⁉︎ 首席の私に対して無礼ですよ!」

「調べはついている。抵抗せずに大人しく取り調べに同行してもらう」

「嫌ですわよ!」


 昨日、国王陛下が言っていたことを思い出した。

 デズム子爵を中心に、モンブラー家全員のことを調べるようなことを言っていたっけ。

 ヴィーネも捕まってしまうのか。

 私はヴィーネと全くの無関係な血の繋がらない相手だということを知り、もうなんの同情もない。

 首席を乗っ取った相手というだけだ。


「不正に首席につき、尚且つ本来首席になるべき者に対し、長年にわたり侮辱、暴行、監禁などをしたという疑惑もある。故に同行願う」


 ヴィーネが私のことを八つ裂きにするというような目で睨んできた。

 むしろ、そうなりそうになった。

 ちょうど、今炎魔法の使いかたの授業中で、使い用途としては料理や雑草の焼却などを目的として習っていた。

 もちろん、ヴィーネも魔力が高い。

 火力が強すぎたため、セドム先生から注意を受けていたくらいだ。


「ぐ……」


 ヴィーネは持ち前の魔力を活かして兵士に火傷を負わせ、そのまますぐに私に向かって炎を放ってきた。


「ぜんぶ……、全部ソフィーナのせいよ! あんたなんかが生まれてきたから……。すべて狂ってしまったのよ!」


 恨みのこもったような炎。

 ヴィーネが全身全霊をかけて、全ての魔力を使って放ってきたような感じだ。

 学園全体が燃えてしまいそうな勢いである。


 咄嗟のことで、さすがのセドム先生もすぐに対応ができなかった。

 私目掛けて飛んできている炎の巻添えを受けてしまいそうな同級生もいる。

 これは本当にマズい!

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