第１回カクヨム二十句連作部門ノ１

真夏の狂想曲

夏の海　朝の六時に　駅前で

駅の前　わたしはうみねこ　今日だけね

ゆられゆく　電車のゆれは　夏の波

潮風に　ふくらんでいく　鼻の穴

本物の　うみねこ見上げ　ペンギンが

海の家　駆けこんでいく　乙女たち

お互いに　背を向けあって　サンオイル

熱視線　嬉し恥ずかし　塩浴びに

芋洗い　飛びこんでいく　ビキニたち

あちちのち　ビーチサンダル　はき忘れ

お昼時　イカとタコとの　二刀流

涼しげな　すいすいのすい　かき氷

サイダーが　息切れをする　長話

かき氷　気取ったメロンの　ボインちゃん

すだれ越し　会話がとまる　海をみる

なぜわたし　息をとめたの　うみねこの声

陽が落ちて　影がのびてく　家のほう

熱視線　あつめて残る　水着痕

夢誘う　夏をあつめた　帰りの電車

あつめても　こぼれ落ちてく　夏の夢