第1回カクヨム二十首連作部門ノ1

名無しのオプ=アート

ナツノツキ

息を吐く 胸に残るは 初夏の風 浮き立つ心 満月を吸う


家の戸を 開けて魔法は 消え失せる 溢れる光が 夏を消し去る


透明な 窓から漏れる 月明かり 誘われていく 夏の夜の手で


夏の夜は なぜこんなにも 青いのか 月の見えない マンションの陰


歩いても 歩いてもまだ 歩いても 歩ききれない この夏の夜


月光に 夏のロボット 色めいて 四角四角の 郵便ポスト


月影で 思い出すのは 夏の陽に 照り輝いた 丸いポストだ


郵便の 配達人が 満月に 半透明で いれば素敵だ


狐なら ロマンチックで 狸なら ユーモラスさと 青い黒猫


アスファルト 青い光に 照らされて 静かな海を 月面歩行


気がつけば 渇きを覚え 月の下 喉を潤せ 風も背を押す


自販機の コーヒー缶の 落ちる音 夏の夜の夢 ハッと目覚める


満月の 月の光が 重たくて 肩へ腰へと のしかかる夜


向かい風 押し返されて 疲れ果て 月の光を 泳いで帰る


夢遊病 家に着くまで もう一度 足が止まって 月を恨んで


恨んでも 恨み足りない この夜に 何かわからぬ 夏の匂いが


家の戸を 開けて溢れる 光には ただ嬉しくて ただいまという


長い夜 浴びて目覚める シャワーの湯 あの猫の目は 狐だったか


夏の夜に 汗ばんで寝る 目を閉じて 一番大きな 満月を見る


夏の夜の 月に見られて 寝る夜は 夢か現か 定かではない

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第1回カクヨム二十首連作部門ノ1 名無しのオプ=アート @nameless_op_art

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