第3話 勇者&魔王 共闘
『ところでお主、名は何と申す?』
森の中を歩きながらノクティラが聞いてきた。
『そういえばまだ名乗ってなかったっけ。俺だけ教えないのも不公平だもんな。俺の名はヴォルター・ラインハルトだ』
『そうか、良い名じゃな!』
『そりゃどうも』
…なんだか気まずい。歩きながらノクティラが色々と話しかけては来るが、受け答えがぎこちなくなってしまう。停戦したとは言っても魔王と勇者だ。どう接すればいいのか分からない。そんな俺の雰囲気を感じ取ったのか
『…なぁ、お主は我の事が嫌いなのか?』
ちょっと悲しそうな顔で聞いてきた。
『いや、嫌いというか何というかちょっと難しいな。ずっと倒すべき相手だと思っていた奴と急に仲良くしろと言われても難しいだろ?お前も同じじゃないのか?』
『そんな事はないぞ。我はお主に会える日を楽しみにしておったからな!』
『それはどういう…』
『ほれ、村に着いたぞ!』
気がつけば村の入り口だった。話の続きも気になるが後回しだ。
『だれかおらぬのかー!』
ノクティラは何も気にせずズカズカと入って行く。おかしい、人がいなさ過ぎる。入り口に見張りの一人ぐらい居てもいいと思うのだが。
その時、背後から殺気がした。既の所でよこに飛び退く。すると
バゴッ!と音と共に棍棒が地面に叩きつけられる。
見ると地面が陥没している。あと一瞬気づくのが遅かったら自分がああなっていたのか。身震いが起きる。
『なんじゃなんじゃ⁈』
ノクティラも気付いてこちらに向かって来た。
『またお主か!どうやらまた痛い目が見たいようじゃのう!』
見上げると棍棒を持ったオークだった。
『オマエラ!ミツケタゾ!!』
オークが叫ぶとあちこちからオークが出て来る。合計10体ほどだろうか?オークが話している。
『エルフノガキトニンゲンノオス。コイツラカ?』
『ソウダ!エルフノガキハチカラツヨイ!キヲツケロ!』
腹に包帯のような物を巻いたオークが言った。きっとさっき戦ったオークだろう。
『誰がエルフじゃと⁈我は現魔王であるノクティラ・フォン…』
『お前ら!ここの村の人達はどうしたんだ⁈』
ノクティラを制し、俺が聞くとオーク達は笑い始めた。
『ココハオレタチノムラダ!オマエラガカッテニハイッテキタ。ダカラコロス!』
なんて事だ。俺たちはわざわざ自分達からこのオーク達の縄張りを目指して歩いていたのか。
『おい、どういう事だ?』
ノクティラの方を見ると目を背けて下手な口笛を吹こうとしている。
『お前、俺を嵌めたのか⁈』
『違うんじゃ!ワザとじゃないんじゃ!』
『お前がこっちに村があるからって案内したんだろ⁈』
『こっちの方から複数の魔力を感じるから、もしかしたら村かもしれぬのう、と言ったまでじゃ!実際に村はあったじゃろう!』
『オークの、だけどな!』
『ええい!うるさい!我のせいにするな!此処まで付いて来たんじゃから一蓮托生じゃ!』
『クソッ!仕方ないか!』
確かに言い争っていてもどうしようもない。まず此処を切り抜けなければ!
『戦うぞ!ノクティラ!』
『そう来なくてはのう!腕がなるわい!』
『オマエラ!カカレ!』
その言葉を皮切りにオーク達が突っ込んで来た。
『一網打尽にするぞ!魔力を溜めておけ!』
『我に指図とはのう…まぁ良い!では任せるぞ!』
そう言うとノクティラは拳を突き上げて魔力を溜め始めた。悔しいがノクティラの方が完全にパワーは上だ。溜め技で一気に方をつけさせる方が良い。ならばここでの俺の役目は足止めだ。勇者の癖に足止めだなんて情けないが、これが最善の策だろう。
『唸れ!雷鳴よ!』
剣を突き上げ叫ぶ。だったら全力で足止めするまでだ。
『勇者の力、見せてやるよ!』
勇者と魔王の異世界放浪記 @etoranz
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