2-3◆中田 朔の秘密
事故が起きたのは、
歩行者用信号が青色の
自車レーンの信号は、青色に変わったため、そのまま速度を落とさず直進した。しかし、横断歩道の手前まで来た時、渡り終えた
そして、弁護士が言うには、非は突然飛び出した陽奈子にあり、回避行動をとり、同乗していた妻を失った相澤本人も、陽奈子の自殺に巻き込まれた被害者であるというのだ。
陽奈子がそんな行動を取ったことは、
自宅に向かって横断歩道を渡っていた時に事故に
結局その事実が、相澤の証言を裏付ける形となり、量刑は、かなり軽減された。車が目前に迫ってきている横断歩道に飛び出した、という行動は自殺が考えられるとなったが、未だに納得することが出来ない。陽奈子はそんなことをしていないと、今でも思っている。ただ証明ができないだけなのだと。
事実と状況を、都合の良い話で
「……法律か……じゃあ法学部? 二年の一回目だから、あまり気にせず、自分の好きなように書けばいいと思うよ」
「法学部なんて、やっぱりレベル高いですし、ちょっと考えてるだけです。それに、大学進学だと、祥子さんにも迷惑かけるので」
そうだった、この子には頼るべき親がいないのだ。あの事故で日常を失ったのは、彼女も同じだ。前に話を聞いた時、自分と同じように苦しむ彼女を見て、助けてやりたいと、思わなかったわけではない。
しかし相澤の娘だと思うと、冷たい感情の
「そうか……、度会の場合は大学進学が、お父さんと仲直りする良い機会かもしれないな。相談してみても、良いんじゃないかな? 迷惑かけるって悩むくらいなら」
「そ……うですね。けど、私もまだ、真剣に考えているわけじゃ、ないので……」
ミラーを見るふりをして、彼女を盗み見ると、俯いて、
けれど、生きている限りはいつか、この親子も和解する日がきっと来る。そんな希望が残っていることすら、許せない。こんな子供を殺そうと考えたり、苦しめたり。どうかしていると思う。たぶん、陽奈子を失ったあの時から、もうずっと何かが壊れている。
「ごめん、担任でもないのに、余計な世話だな。あ……、あの橋渡ったらもう着く」
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