〜1話〜 出会い

じりりりりりっ

1人の男が目覚まし時計に起こされる


「起きてるってうるせーなー」


布団にくるまりながら目覚まし時計を止める

針は午前7時を指していた。


男は気だるそうに体を起こし寝巻きから制服へと着替える


男はあくびをしながら部屋を出ていく


「よお!相変わらず浮かない顔してんな!」

「相変わらずうるせえ奴」

「こんな生活うるさくてしなきゃやっていけねーだろ」

「まーな」


そう言いながら廊下を歩く。やがて外に出る


「さあ元気な元気な太陽のお出迎えだ!」

「はりきりすぎだよ太陽さん」


2人以外にも制服をきた男たちが続々と外へ出る。そして朝礼台の前に規則的に並ぶ


朝礼台に登るのは1人の男。マイクを持ち話す


「我らが英雄タイタンに感謝を。彼は我が国を救った英雄。傷1つ負わない戦闘力、未来が見えているかのような判断力、皆を統率するリーダーシップ。味方を見捨てない人間性。

そんな彼の才能はある日突然開花したと言われています。それは普段の訓練あってこそ。皆さんも彼にならって……」


だが毎日聞かされるつまらない話は1人として真面目に聞いてはいない


その後に準備運動、筋トレをする。

だが筋トレ中にサボっているやつがいていつもの倍やらされた。なにやってんだ…


「我らが英雄、タイタンに感謝を!」


その言葉で朝礼は終わる


「よお!やっと終わったなー!酒、行くだろ?」

「ああ、行くか」

「出撃の前日はやっぱ酒に限るよなー!酒がなけりゃやっていけねーよ」

「二日酔いはよしてくれよ」

「俺の酒の強さは知ってるだろ?」

「そーだな」 


その後2人で飲み、語った

そして出撃の日…


輸送トラックに揺られながらあくびをする2人の男


「ちっと飲みすぎたかもしれねえ…」

「だから言っただろばか」

「すいませんねえ」


だが2人に不安はない。2人はこれまで数多の戦場を駆け抜けてきた相棒だからだ


2人は今までの戦場で負けどころか傷一つ負ったことがない。戦いのスペシャリストなのだ


輸送車がとまりドアが開く。屈強な男たちが次々と外に出る。そして最後に2人の男が外に出る


目の前には大きな倉庫。中には戦争の武器、巨大なロボットであるエクリプスが大量に保管してある。


男たちが続々とエクリプスに乗っていく


「酔いは覚めたか?」

「まあ大体は覚めたぜ!まあこれからアドレナリンドパドパだから心配すんな!」

「俺がいつ心配したかよ」

「薄情なやつ」

「ふっ、それじゃ戦場で会おう」

「おうよ!」


2人はグータッチを交わしそれぞれのエクリプスに乗り込む


「死ぬんじゃねえぞ…」


小さくそう呟き操作レバーを強く握った


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「出撃せよ!!」

「了解!」


操作レバーを前に倒す。エクリプスはバックパックからガスを出しながら勢いよく前へ進む


発射口から飛び出す。と同時に前方で爆発。


「狙撃だ!直ちには避難せよ!」


エクリプス内での無線で報告が入る。既に5畿のエクリプスが何らかの傷をおい、3機のエクリプスが活動限界に達し爆発していた


「避難って言ったってどこに避難すれば良いんだよ!」


周りを見渡しても建物は一つとしてなく真っ平。倉庫に戻るわけにもいかない


辺りを見回していると隣の発射口から出撃しようとしていた一機のエクリプスが爆発した


「あいつは俺の後に出撃だったはず…このままじゃまずい!狙撃を止めねえと!」


この狙撃はどこからだ…見渡す限り誰もいない…どこだ!?


次の瞬間目の前のエクリプスが狙撃される。コックピットを正確に狙った射撃だ


「まさか…相手のエクリプスか!?」


狙われた角度から大体の方向はわかったがそちらを見ても何もない。いや、小さく建物が見える


「くそ!あんな遠くからの狙撃なんてあってたまるか!」


無線を味方全員に聞こえる用に切り替える


「敵北北西!極めて遠い位置からの狙撃!目視はできず!」

「了解!」


とりあえず射線を切らなければ。腰に刺してあるソードを取り出し地面を切る。そして肩からグレネードを切った地面に向けて打ちバックステップを踏む。


爆発。

周り一体に土煙がたつ。よし効果ありだ


再び無線をつなげる


「グレネードを使え!土煙を使って射線を切れ!」

「了解!」


そろそろあいつが出撃してくる頃だ。2、3個グレネードを投げておこう  


「待たせたな!!」

「やっと出てきやがったか」

「やべえスナイパーがいるって?」

「ああ、あの距離であの正確な射撃…間違いなく今までで1番やばい」

「はっ、俄然おもしろくなってきやがったぜ

!」

「あたりは真っ平らだ。土煙を立てながら行くぞ!」

「りょーかい」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やっとここまできたな」

「ああ、目の前だ」

「にしてもここに辿り着くまでに結構やられちまったな」

「ああ、やつは逃したらダメだ。ここで必ず仕留めるぞ」

「ああ、そうだな」


俺たちが近づいてると分かっているのに逃げない。よほど腕に自信があるのかそれとも罠か…誘い込まれていると分かっていてもこいつを放置するわけにはいかない


目の前には古びた住宅街が広がっていた。ビルなどもあり遮蔽物は多い


「散開せよ!」


無線からの声


「了解!」


一斉に散開する


ん?今何か光ったような…


左側で爆発音


「1機やられた!!狙撃に注意せよ!!」


まずい、このあたりには遮蔽物が何もない。狙撃銃のリロードの時間は約15秒。間に合ってくれ


やっとの思いでビルに隠れる


「危なかった…」


すると次の瞬間ビルが爆発する


「なっ、嘘だろ!」


まずいまずいまずい

すぐ移動できる範囲に遮蔽物はない。やつのリロードも終わっているはず。爆発でできた煙が消えてく。


考えろ考えろ、どうすればいい…


チカっと光る。

あ、死ぬ


そう思った瞬間時の流れが遅くなり、走馬灯が流れる。


そして俺は地面に倒れていた。


死んだ…?いや体が動く。機体の損傷もないなぜだ?いやなんでもいいからまずは射線を切ろう


相手のリロード時間中に次のビルに隠れる


なんで当たらなかったんだろう…外したのか?まあ何にせよラッキーだ。


だがそんな楽観的な考えはすぐに壊される


「よお…無事か…?」

「な、何があった!?」


まさか…、悪い予感がした。振り向きたくなかった。でもゆっくり振り向く。そこにはバチバチと今にも爆発しそうな音を鳴らしながら倒れている1機のエクリプスがいた


「お前…!俺をかばったのか…!なんでだ!かばうなんて…俺は子供じゃねえんだぞ!」

「ははっ…子供だよお前は…いつも危なっかしくてよ…」

「ふざけんな!俺をかばって死ぬなんて絶対許さねえぞ!」

「残念だがそれは無理だ…もうじき爆発する…あばよ…元気でな」

「待てよ!死ぬな!!ばか野郎!!」


エクリプスが爆発する。破片は飛び散り跡形もなくなった


「ふざけんな!なんであいつが…くそっ!許さねえ…必ず敵討ちしてやる…」


俺の目の前に落ちた1本の剣。これはあいつが愛用していた剣だ。拾い上げ握りしめる


「まってろよ…」


その後ビルを遮蔽に使いながら距離をつめる

狙撃に注意しながら進む


すると次の瞬間突然の衝撃がはしる。バランスがとれず横に転がる


『機体の損傷を確認。機体の損傷を確認。』


操作パッドを確認する。損傷部分は右脚だ。綺麗に右脚だけ。他は何も損傷はない


それに注意して見ていたのに何も見えなかったし聞こえなかった。狙撃ではないし何らかの罠なんだ。…なんだ…考えろ…罠で音がない、爆破物ではない、見えなかったから刃物でもない。でも足は綺麗に切られていた…まてよ、ワイヤーか?ワイヤーなら音は出ないし見にくい。そして振動ワイヤーならエクリプスの足でも綺麗に切れるだろう。


体を起こす、が片足がないためバランスはとれない。でもバックパックを使えばまだ動けるだろう


ワイヤーは一見すると見にくいがあると分かってしまえばそれほど脅威ではない


エクリプスの頭のライトをつける。これだけでワイヤーはハッキリ見える。不用意に進まない限りは大丈夫だろう


だが罠を張っていたということはやつが近くにいるということだ。おそらく100mもない交戦はすぐだろう。先手を取りたい…慎重に探すか

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〜10分後〜


見つけた…

やつはビルの屋上にいる。ビルの間を低姿勢で歩いていた時にたまたま上を見たら銃の先端が飛び出して見えた。運も実力のうちというやつだ。


先に見つけたとは言えこっちは片足しかない

かなり不利だ。かといって仲間を呼んだら勘づかれてしまうだろう。ここで俺がやるしかないのだ


戦略は立てた。分は悪いが勝てないわけじゃない。うまくハマれば勝てる。


小さく深呼吸をする


「よし、行くか」


まずは先手を取る。腰から棒状のものを突き刺しスイッチを押す。棒は勢いよく伸び一気に屋上まで飛び上がる。


完璧に背後をとった。はずだった

やつは気づいていた。銃はフェイク、俺の場所も分かっていた。


飛び上がった俺に銃を撃つ。左肩からフックを出し即座に回避。そしてなんとか着地


ここら屋上の中でも広い方で、俺とやつの間には少しの距離があった。互いに動かず睨み合う。


沈黙を破ったのは俺の銃。こっちは片足しかないんだ、受け手にまわってしまったら勝ち目がない。


だが一瞬の対峙でわかった。

こいつはスナイパーとしての腕だけでなく近距離戦もそこらの雑魚とは違う。俺も自信はある方だがそれでもこいつと互角…いやそれ以上かもしれない


バックパックで片足分を補いながら戦う。やつはスナイパーのため剣は1本。対する俺は近距離戦用のため剣が2本。手数では勝ててるが機動性では劣る。戦いは拮抗していた。


だが徐々に差は現れ始める。かすり傷を受け始めた。対して俺はかすり傷もつけれない


このままではまずいな…ジリ貧だ。

一か八かだがやるしかない…超近距離戦だ


相手が距離を詰めると同時に距離を詰める

俺の行動に不意を突かれ距離を取ろうとするが、とらせない。先手は取れた。このまま押し切れればいける。相手の太刀筋も見えている


相手が俺の剣に押され少しよろめく


隙ができた、いける。狙うはやつの左腕

バックパックから勢いよく噴出する。やつの上空を飛び交差する瞬間左腕に切りかかりそのまま奥へ着地


斬られたのは俺だった。バチバチと音を鳴らしながらひざから崩れ落ちる。


『活動限界、活動限界』


コックピットは赤く光り警告音が鳴っている

そうか俺は負けたのか…


コックピットを開け外に出る。


「おい!聞こえるか!」


すると相手もコックピットを開けて顔を覗かせた。綺麗な顔をした女性だった。


「なんだよ…女に負けたのかよ…」

小声で呟く


「なんの用だ」

「俺は今まで多くの戦場で戦ってきた。負けたことはないし自分の腕にもかなり自信があった」

「でも私に負けた」

「ああ、そうだ。お前ほどの操縦士は初めてみた」

「どうも、お前こそなかなかだった。両脚揃っていればどうなったかは分からなかった」

「結果論だ。でもあいつならお前なんか…俺は親友を殺したお前を許さない」

「そんな言葉腐るほど聞いた」

「お前の名前は?」

「りな。お前の名前は?」

「俺に名前はない、とっくに捨てた」

「そうか、お前との戦闘楽しかったぞ。名もなき操縦士よ。さらばだ」


そう言ってコックピットを閉じエクリプスが動く 


「ちくしょう…」


エクリプスが剣を両手で持ち勢いよく振り下ろす。

俺は死んだ。

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短編小説集 ガッデム乳山 @gaddemutitiyama

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