第4話 片棒担ぎ
優吾はマグカップに入れた、コーヒーを味わいながら、
「話してあげてもいいけど、生徒会の秘匿事項だから、SNSに挙げる様なバカな真似はもちろん、他の生徒に洩らしても退学処分だよ。それでも聞く?」
「う!退学処分は嫌だけど、秘匿事項…逆らえぬ魅惑の囁きです」
「僕らに話して、優吾先輩は処分されないんですか?」
矢部が心配そうに聞く。
「ヤベチー、心配してくれてありがと~、でも大丈夫。ミステリー研究部員に限って、生徒会長直々に許可をもらっているから」
「それだけあたしらを信用してくれてるんですね」
「ん~?そういう事だな」
優吾がしれっと答えると、
「んな訳あるかい!あの優秀な生徒会長と誘爆誤爆のパイセンが、何のメリットもなく人を信用する訳ないっしょ!」
みことが、これ以上ない疑いの眼差しを向ける。
「おいおい、みことちゃん。俺そんなに信用ないのか、傷つくな~」
「はん?何を今さら。パイセンのそんな殊勝な態度、へそが茶を沸かしそうですわ。で、何が条件なんすか?」
「そんな大した条件じゃないよ。俺の汚れ仕事の片棒担いでくれればいいだけだよ」
「パイセン、もう少しオブラートにくるくるちゃっちゃって包みましょうよ。自分で汚れ仕事って言っちゃってますよ」
「片棒担ぐって何?」
「ヤベチー、気にすんのそこ?」
「いや、ゲイの皆さんの専門用語かと思って」
「ちげ~わ!ってモジモジすんな、ヤベチー。パイセン、かんべんしてつかーさい。ヤベチーのキャラが崩壊寸前なんですが!」
「ふ、ヤベチー。俺の片棒で可愛がってやろうか」
「………」
「だからそこー、片棒がらみで見つめあってんじゃねーですよ!」
なぜか、みことが真面目キャラになってしまっている。
「片棒でも、すりこぎ棒でも担いであげますから、ゲイ方面の脱線から戻って来て下さい」
「すりこぎ棒…とっても太くて固そう、みことってばエッチ」
「だー!パイセン。いい加減にして欲しいっす」
「わかった、わかった。じゃあ2人とも俺の裏活動の助手もよろしく」
優吾が両手を挙げて降参の意思を示しながら言う。
「了解です。とりあえず今、手伝うことってあるんですか?」
「最優先は新1年生の部活動勧誘だ!最低2人な、ヤベチー可愛い子を引っ張って来てくれ」
「まかせて下さい」
「なぜに、ヤベチー1択なんすか?」
みことが不満げに言うと、
「だって、みことにまかせると変なヤツしか来なさそう…類は友を捕獲する的な」
「だ~!パイセンも大概に失礼ですね。あたしのコミュ力モンスターの力、見せてあげますよ」
「生徒会長からの依頼って、他にはないんですか?」
プンスカポンスカ怒りまくってるみことを尻目に、すでにミステリー研究部が、生徒会の下部組織の様な前提で矢部が尋ねる。
「以前から追っているのは、いじめだな。特に学年が違うと把握が難しくてな、何か気付いたら教えてくれるか?」
「わっかりました。これは汚れじゃなくて、マトモな依頼ですね。ヤベチー、2年でいじめの噂ってあったっけ?」
「あまり聞いたことないですね」
矢部が首をかしげながら答えた。
「かなり巧妙で根が深いみたいだよ。生徒会の方でも把握して泳がせている案件もあるらしいから、何か聞いたり、見たりしても手は出さずにまずは報告してくれ」
「なんか怖いですね。で、片棒担ぐ以上は秘匿事項も話して下さいな」
「片棒担ぐ?」
「ヤベチー、またそこに戻るっすか?話の流れで察しようよ。協力するって事ですよ」
「英語教師の
「ええ、僕達も教えてもらってます。海外の生活が長いから、ネイティブな英語を習えるって生徒にも人気高いですよね」
「名前の通り、いつも凛としていて女子の憧れですね、凛子お姉様って」
「それを言うなら凛子先生だろ」
「パイセン、固いです」
なぜか、矢部が顔を赤らめている。
「え?凛子先生の名前が出てくるって事は、あの時の生徒会長からの依頼は凛子先生がらみだったんですか?」
「あまりに完璧だったからかな、熱心だし生徒の相談にもよく乗っていたからね。学院の総理事長が、気を張りすぎる先生ほど壊れやすいと思って、心配して麗奈に相談したらしいよ」
「学院の総理事長って、麗奈パイセンのおばあちゃんですよね」
「よく知ってるね、出藍小中高等部の理事長は麗奈のお母さんだけど、出藍グループの総理事長は麗奈のおばあさんなんだよ」
麗奈の家は、物凄く女系の力が強い家系なんだよなと優吾は思った。
「で、凛子先生のお母さんが、総理事長の元教え子なんだって。だから色々気を回してあげてるらしいよ」
麗奈からこの件の依頼をもらった時にも、生徒会がらみではないと言っていたなと優吾は思い返していた。だが、学院の総理事長がらみだったら、尚更断るという選択肢はないに等しかった。
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