3.1:Kidnapping - Epi42
「外交用のプロファイルはいい。犯罪記録、及び、テロリスト活動で記録されてるのは何だ?」
時間が惜しいだけに、クインはコントールの説明を遮って、口を挟む。
20xx年、先のウクライナ大使EU訪問時での暗殺未遂容疑。
20xx年、パキスタン反政府テロ活動及び爆破事件容疑。
20xx年、エジプト、サウジアラビア共同、天然ガス開発汚職・横領容疑――
ペラペラ、ペラペラと、無機質な声音でコントロールが羅列して行く犯罪記録が、出ること、止まないこと。容疑がかかって、犯罪証明がされていなくても、“組織”の裏情報からでは、犯罪登録されているのだから、実質上、その全ての事件も犯罪も、ラディミル・ソロヴィノフは真っ黒なほど黒だ。
かなりの情報量が登録されているようで、スピードを上げた車を飛ばしているクインは、レーサー並みの動きで、邪魔になる前や横の車を通り過ぎていく。
ここで、スピード違反で警察に捕まってしまっては、亜美の救出もおジャンになってしまうが、そうは判ってはいても、事は急を要するのだ。
「――20xx年、インドネシア、マレーシア、パキスタン、エジプト、シリアにて、誘拐、違法人身輸出、違法人身売買、違法強制売春容疑――」
止まることもなく連なる犯罪履歴を片耳で聞いているような、素通りしているようなクインは、今、耳にした一言で、一気にコントロールの方に注意が注がれた。
「違法売春?」
「そうです。未成年の少年・少女を連れ去り、違法人身輸出、闇オークションで違法人身売買、または、闇カジノにての違法強制売春容疑がかけられています」
「それだっ! くそっ――」
一気に頭が冷めたクインは、まさか、こんな状況下で、パーティーに出席していた亜美がラディミル・ソロヴィノフのいかれた遊び道具にされるなど考えてもいず、おまけに、その急な状況変化によって、亜美の安全の危機が更に倍増してしまったことに気がついてしまったのだった。
「アミ・サトウの身元は知られていないはずだ。ロシアにやって来ることだって、敵にはまだ気付かれていない。どうやら、ラディミル・ソロヴィノフは、今夜のチャリティーパーティーで見つけた若い女を連れ去って、痛めつけるきだろう」
チャリティーパーティーに参加していたゲスト達は、たぶん、ほとんどが金持ち連中ばかりだった。著名な政治家もいただろうし、有名人も揃っていた。
だから、そんな金持ち連中で顔が知られているような団体から、ラディミル・ソロヴィノフが危険を冒してまで、若い女を連れ去ることはしないだろう。
だから、素性も顔も知られていない亜美のことを、チャリティーパーティーに紛れ込んだ、どこぞの“金持ち観光客だ”とラディミル・ソロヴィノフが考えていたのなら、珍しい若い
わざわざ気絶させて、パーティー会場から若い女一人を連れ去るなんて、初めから、手籠めにする
「今すぐあいつを救出しなければ、必ず、ラディミル・ソロヴィノフの次の餌になるのは目に見えている」
くそっと、吐き出して、クインも一気に車を加速させていた。
売春ルートで亜美を売り出す前に、ラディミル・ソロヴィノフのような男は、絶対に、まず、自分で亜美を十分いたぶってから、それから使い物にならなくなった亜美を、売春ルートに放り投げるのは目に見えている。
今夜だって、違法人身輸出または強制売春を
偶然、亜美をパーティー会場で見つけて、ただ連れ去った――というような感じだった。
バージンは、いつでも、どこでも、高く売れる。今夜の亜美は金髪だから、白人の女として扱われたら、かなりの高額になるはずだろう。
それが目的で亜美を誘拐したのなら、あんな客が大勢いる場で、リスクを負うことはしないはずだ。
そうなると、売春ルートでの売り上げは、亜美をいたぶってからの副利益というだけで、今夜の目的は亜美自身になる。
「救出場所は?」
「GPSをトレースさせている。それを確認しろよ」
亜美の行方を追う為に、亜美の所持品に隠しつけたGPSのトラッキングは、コントロール側だってアクセスすることができる。
「移動方向には、ラディミル・ソロヴィノフが所持する洋館があります」
「自分のねぐらに戻ったか」
まあ、今から違法犯罪行為を考えている非道な悪徳犯罪人が、目立つ街のど真ん中でホテルになどは入りはしないだろう。
自分の居住地ほど安全で、秘密裏に犯罪が行える場所はない。
「アミ・サトウの脱出を試みる。残りの雑事は任せる」
「了解」
「脱出方法は?」
「深夜11時25分発、モスクワ駅からドイツ行きの夜行列車が出ます。後部、普通列車の最後列に」
それまでに、ラディミル・ソロヴィノフの走り去った場所から亜美を救出し、モスクワ駅に駆け込んで、夜行列車を掴まえなければならないのである。
「荷物処理班をすでに送りました。他に必要なものは?」
クインと亜美の偽の荷物が、まだ、ホテルに残されている。コントロールの方も、その回収班を送ってくるのだ。
二人が逃げ出した後、ホテルまで捜索されない為、すでに、回収班の誰かが指令を受け取っていた。
「今の所は何もない。どうせ、その時間などないからな」
ブツッと、クインもそこで電話を切っていた。
助っ人が来るのを待っている暇などないのである。
亜美の身の危険が差し迫っているだけに、悠長にことを構えてなどいられないのだ。
あのバービー人形のような顔に、問題があったのだろうか。
くりくりさせた瞳に、赤い口紅をつけて、いかにも私を襲ってください状態――の
ロシアに着いて早々、一気に、計画変更である。
こうなると、一度、ロシアを脱出しても、再びロシアに戻ってくることは、かなり困難になるのは目に見えていた。
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