3.2:At Last - Epi43
ぼんやりを目を開けると、見慣れない天井が視界に入って来る。薄暗い場所で、ぼんやりとした灯りが照らされているようだが、亜美には、なぜ、自分が今横になっているのか全く記憶にない。
ガバっ――!
本能的だったのが、亜美が一気に起き上がっていた。
起き上がった場所はベッドの上で、一瞬、全く見知らぬ景色を見て、亜美はパニックしかかっていた。
「な、に……!?」
「なんだ。やっと気が付いたのか?」
軽蔑したような、つまらなそうな、そんな口調だった。
パッと、咄嗟に亜美が横を振り返った。
薄暗い室内に、まだタキシードを着た男が、ワイングラス片手に立っていたのだ。
「――――!!」
ちょっと待って……!
目の前に立っている男は――クインが絶対に要注意人物だと、亜美に執拗に忠告してきた男ではないか。
ラディミル・ソロヴィノフだ!
一気に身の危険を感じて、亜美がベッドの上で半立ちになっていた。
すぐに、薄暗い室内を確認するように、その視線が四隅に向けられる。
ドア側とは反対には、窓がたくさん並んでいる。でも、カーテンはかかっていなかった。そして、月明かりがほんのりと差し込んだ明かりが漏れている。
ベッドのすぐ向こうに、テーブルの上にワイングラスを置いたラディミル・ソロヴィノフが、獲物を狙い定めたような嫌らしい目つきをしながら、襟元のブラックタイを緩めていく。
――まずい、狙われる……っ!
本能的に危機を察して、亜美は瞬時に自分のドレスを見下ろした。
まだ、ドレスを着たままだ。裸ではなかった。
そんな悠長に安堵している暇はないっ!
バッ――と、亜美はベッドから飛び降りていた。ドアに向かい駆け出しかけたその腕が、乱暴に引っ張り返される。
【おい、どこに行くんだ? お楽しみはこれからだろう】
「いやっ、離して――!」
【なんだ、English なのか? まあ、いい】
必死で腕を解こうとする亜美の努力も空しく、腕を掴まれたまま、亜美はベッドに放り投げられた。
ベッドの上で飛び跳ねた亜美の躰の上に、ラディミル・ソロヴィノフが伸し掛かって来た。
「離してっ――!」
ものすごい抵抗をみせて、亜美が必死で腕を振り上げてみるが、ラディミル・ソロヴィノフはその光景を愉しんでいるかのように、目が爛々と輝き出す。
両腕を取り上げられ、どっかりと亜美の躰に伸し掛かったラディミル・ソロヴィノフの体重で、足をばたつかせようがビクともしない。
片手で亜美の両腕を押さえつけているラディミル・ソロヴィノフの顔が近づいてきて、亜美は必死で顔をそむける。
ラディミル・ソロヴィノフが、その顎を無理矢理押さえつけ、亜美の顔を上げさせた場で、ラディミル・ソロヴィノフの口元がゆっくりと上がっていく。
――こいつ、狂ってんじゃないの……!?
その爛々と輝いている瞳は、追い詰めた獲物を捕獲した獣がその機が熟す時を待ち、追い詰められて弱った獲物を食い散らすかのような、そんな残忍さが映し出されている。
【うるさい子猫も、悪くない】
「離してっ――!」
腕はがんじがらめ。重たい体重が伸し掛かって、呼吸も苦しければ、足をバタつかせても、蹴り上げることもままならない。
兄である晃一を探し、救出する為に、ロシアくんだりやって来た亜美は、今、大ピンチを迎えていた。
ラディミル・ソロヴィノフの口が亜美の首に押し付けられて、悪寒が走る!
虫唾が走り、鼓膜を突き破るほどの悲鳴を上げても、全然足りはしない!
その時――
ドンドン、ドンドンッ!
室内に繋がるドアの向こうで、激しくドアが叩かれたのだ。
【なんだっ!】
ラディミル・ソロヴィノフが怒鳴りつける。
【ソロヴィノフ様、侵入者が――】
【侵入者?】
【ガーデン側で爆破が起きて――】
チっと、ラディミル・ソロヴィノフがあからさまに気分を害したように、舌打ちした。
それで、乱暴に亜美の腕を放り投げ、ベッドから飛び降りていく。
【なにをしているっ!】
【申し訳ございません――】
ドア越しで自分の苛立ちも隠さず怒鳴りつけるラディミル・ソロヴィノフは、さっさとドアを開けて消えてしまった。
一瞬の出来事だった。
まだ、その状況に追いつ行けず、今世紀最大の危機から脱出できたような亜美は、はあはあ……と、激しく肩を揺らしている。
「…………助かったぁ……」
ラディミル・ソロヴィノフが消え去って、はあぁ……と、亜美は思いっきり安堵の息を吐き出していた。
「助かったぁ……」
後一歩で、貞操の危機が犯されるところだったのだから。
誰だか知らないが、屋敷で大騒ぎを起こしてくれた人物に、感謝、感謝、大感謝、である。
助かった……と安堵しているのも束の間、亜美はすぐに起き上がり、パッと周囲を見渡していた。
見慣れない部屋に亜美は閉じ込められていて、おまけに、無理矢理、気絶――させられたのだろうか。
それで、あの男の屋敷に連れ込まれたのである。
パーティー会場でクインとはぐれてしまい、クインだって、亜美のことを探しているのだろうか。
だが、トイレに向かった亜美をさらった男――
大変なことになってしまった。
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体調不良で、投稿が遅れてしまいました。大変申し訳ありません。
この章も、まだまだ危険にスリル、亜美の苦難は続きます。
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Źěkujomy se, až sćo toś ten roman cytali.
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