3.1:Kidnapping - Epi41
見るからに、ラディミル・ソロヴィノフの護衛の一人と判るような、体格である。タキシードを着こもうが、普段から身についている、ボディーガードの癖が丸出しである。その眼付きからして素人ではなくて、歩き方も、構え方も、拳銃を保持している動きそのものが明らかだった。
金持ち連中が揃うパーティーなだけに、その金持ち連中も、危ないボディーガードを揃えているのか、慣れているのか、あまりにパーティーにそぐわない人間がいようが、誰一人、注意を払う者はいない。
向こう側で、無言で控えているボディーガードの姿を見て、ラディミル・ソロヴィノフは会話を離れ、バーから動き出していた。
こんな大勢集まったパーティー会場で、何かを仕掛けられでもしたら、たまったものではない。
パーティーも終えていないのに、一体、何をやらかすのか――と警戒の為、クインは動き出していた。
クインも気配を殺し、ラディミル・ソロヴィノフを追うように足を進めて行く。
表側の入り口に向かう様子ではなく、なんだか、ラディミル・ソロヴィノフは裏口の方へと足を進めているようなのだ。
気づかれないように、クインもラディミル・ソロヴィノフの後を追い、ラディミル・ソロヴィノフが出て行った裏口の隣にある空室に忍び込んで来た。
亜美には、クインとはぐれた場合の脱出方法も知らせているし、この場でドンパチを起こす気がないクインは、またすぐに会場内に戻っていく予定ではあるのだ。
それまで、亜美は言われた通り動かず、クインを待っているはずだろうという目論見はある。
今夜は誰も使用していない部屋が空室で、鍵もかかっていなかった。
暗い室内を真っすぐに進んで行き、窓側でクインは外を確認してみる。
どうやら、この寒空の中、ラディミル・ソロヴィノフはコートも着ずに外に出たようである。
そして、黒いリムジンが静かに近づいてくる。
ラディミル・ソロヴィノフの前でリムジンが止まると、後ろから隠れていたような男二人が揃って出現した。
「なっ――!?」
そして、その腕の中に抱えられている赤いドレス――
「なにを――!?」
あれは、今夜、亜美が来ていたイブニングドレスだ。
クインが見間違えるはずもない。
二人の偉丈夫の男に挟まれて、亜美の姿は確認できなかったが、動きもしない、ダランとした体勢を見ても、亜美が気絶していることが一目瞭然だった。
「気取られた――?!」
まさか、亜美の素性がバレたというのだろうか。
ラディミル・ソロヴィノフは、二人の男に抱えられているような亜美の顔を一度だけ上げさせ、亜美の顔を確認したようだった。
すぐに、赤いドレスが抱えられ、リムジンの中へと押し込められていく。
ラディミル・ソロヴィノフもすぐその後を続いていた。
ラディミル・ソロヴィノフが乗ったリムジンは、跡形もなくその場から消え去っていく。
クインがすぐに自分の携帯を取り出していた。
携帯のアプリを立ち上げると、すぐに、赤いマークが浮き上がって来る。
亜美の携帯に仕掛けたGPSは無事なようである。それなら、亜美を追うことは、まだ可能だった。
まさか、クインが目を離した隙に、あの亜美がラディミル・ソロヴィノフに攫われてしまう状況になるなど、一体、誰が想像できただろうか。
「くそっ――」
雪崩に続き、第2弾のピンチ、である。
納得のいかない状況でも、亜美はラディミル・ソロヴィノフに攫われた。その事実だけは変わらない。
クインは裏口を飛び出して行き、レストランの裏側にある駐車場に入って行った。
クインは駐車場まで走り込んで、そこにあった車を勝手に拝借してしまう。盗難防止の警報装置がついていようが、少々、拝借する程度なら、クインだってお手の物である。
エンジンをふかすと同時に発進して、クインもラディミル・ソロヴィノフの車をすぐに追っていたのだった。
「Call the Control」
クインは車のスピードメーターが並ぶガラスに自分の携帯電話を押し付け、会話の指令だけで“組織”のコントロールに電話をかけていた。
「コントロール」
一度の呼び鈴で、すぐに相手が出て来た。
「アミ・サトウがラディミル・ソロヴィノフに捕らえられた」
「捕らえられた?」
ふざけたことを抜かすな、とでも言いたげな冷たい返答が返される。
「休憩中に
「身分が発覚したのですか?」
「いや、それはない」
――はずだ。
今日の亜美は金髪で変装しているし、瞳の色だって青色に変えている。
ドレスを着込んで、派手な化粧をしているから、普段の亜美の姿を知っていようが、簡単に身元がバレるはずはない――はずだとクインも考えている。
だから、クインには、亜美の
「ラディミル・ソロヴィノフの経歴を、もう一度、洗い直してくれ」
無言だけが返された。だが、コントロールがものすごい速さで、キーボードの上で手を動かし、ラディミル・ソロヴィノフの情報を洗い出しているのは間違いないのだ。
「ラディミル・ソロヴィノフ。国籍、出身、ロシア。現在32歳。性別、男。登録されているビジネスは、国際貿易、及び、オイルタンカーの保有・運航の海運事業です――」
その説明は、アラスカにいる時も聞いた。
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ई उपन्यास पढ़बाक लेल धन्यवाद
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