第19話 覚醒

そんなこんなで4日経ちました。

「人と話したいです」


ガチャッ


クラさんでしょうか、まあそれ以外は考えられませんが。

「久しぶりだね、カイティー。

随分やつれているが、まあ大丈夫だろう」

「解除」


や、やっと終わったのですね。


「それじゃあ今から私の能力を授ける」


「も、もうですか」


「先に言っておくけど激痛がはしるからね」

「じゃあいくよ?」


「ま、待ってください、まだ心の準備が…」

クラさんの顔がいつもとは違い真剣な表情に変わりました。


「ここにあるは武神の一柱、クラリス!

ここにいたり高橋海斗を我が眷属にする、捧げたるは能力

コルよこの願いを聞き入れたまえ」


クラさんが纏っていた光の一部が私の体の中に入っていきます。

なんだか体がビリビリします、重力で凝った肩をマッサージしてもらっているような感じがします。

「あのー成功したのですか?」


「…………フッフハハハハハ、君はなんとも無いのかい?」


「ビリビリするくらいですが」

何が可笑しいのかわかりません。


「コル様に認められなかった場合は能力を得ると共に激痛を伴う。

あくまで伝説の話だが、認められると痛まないどころか、コム様の能力の一部さえも貰えるらしいのだよ。

もし君を殺していたら永遠に殺され続けられる事になっていたかもね」


「伝説って、嘘ですよね?

ケイン君は本当に誰からでも好かれますね。

それに、コム様って誰なんですか?」


「ケインじゃないよ、中のケイティーが好かれてるんだと思うよ。

コム様って言うのは魔神も含める神全員を従える凄い人だ、誰もあの方のお姿を見たことがないから存在しているのかどうかもわからない。

私達神の中でも伝説なんだ」


「そんな凄い人がなぜ?」

存在するかも怪しい、そんな方が私を認めていらっしゃると?

いえいえ、流石にないです。

アマテラス様か誰かが勝手にやっているだけですよね?


「わからない、でも1つ言えることは君は気に入られているという事だよ

君が来てからこの世界は安定している、私の推測だが君が死んでしまったらこの世界は壊れる。

その証拠に君が死んだ世界は滅びたと聞いた。」


「う、嘘言わないでください

わ、私のせいで1つの世界が壊れるなんてそんなの狂ってますよ。

私は別に普通の生活がしたいだけなのに、なのになんでそんな大きな物を背負わなければならないのですか!」

私のためにそこまでするなんて神様は怠惰です。

私を機械扱いした、上司も後輩も自分なりのやり方で命に縋りついていました。

交通事故で亡くなった両親は事故という理由があって死にました。

それなのに、「それなのに理不尽じゃないですか!

一人の人間が死んだ程度でその世界を滅ぼすなんて、そこに住んでいた生物は私のせいで死んだのですよ

そんな無責任な神なんて死んでしまえばいいのです。」


「そうは言ってもだな…」


その日はずっと泣いていました。

そして次の日も、また次の日、泣き続けました。

4日目にもなるとそれまで励ましてくれていたクラさんの顔が引き攣っていました。



そろそろ立ち直らないと家族に心配をかけます。

今も探してくれているでしょうし。


「大丈夫かい?」


私の様子が変わったのを察したのかクラさんが話しかけてきました。

「はい、もう大丈夫です。

私決めました、いつかコム様という方を殺します。」


「それは良くない決心だね、言っておくけど神を殺せば神殺しの最悪の称号がついて全神を敵に回す事になるよ?」


「私の気持ちは変わりません、殺せなくても死んでいった人達の痛みを味あわせてやります。」

どんな事があろうと、理由もなく人を傷つける事は許せません。


「と、取り敢えず家に帰ろっか」


「はい」

気持ちを切り替えて、家にかえりましょう。

そう思い目を開けるとそこは家の前でした。

「えっ?

クラさんはもう帰ってしまったのでしょうか」


シュンッ


「うわっ、もーびっくりさせないでくださいよ」


「驚きなのは私の方なんだけどねぇ…」


「なんでクラさんが驚くんですか?

だってクラさんが送ってくれたんじゃ…」

なんか凄い顔になってます。


「そんなわけがないだろう、君が私の能力を使って瞬間移動したに決まっているだろう、初めてでできるなんて人外だね。

しかも無詠唱なんて聞いたこと無い、君はバグか何かかい?」


「ウソですよね?」


「いや、試したことはないが、普通の人間なら多分一回やるだけで、骨がバキバキだろうし、魔力が尽きて死ぬだろうね。」


「そんなバカな、人外なんて嫌です」

私の目的、普通の生活がしたい、からどんどん遠ざかっている気がします。


「まあ今日はもう遅いし明日たっぷりシバいてあげるよ」


「丁重にお断りいたします」

シバいてですか、私なんか悪い事しましたか?


「じゃあね、明日も迎えに行くからね!」


「嫌です、ってもういないです」

家に着いたのはいいのですが、能力を得てから筋肉がバキバキに浮かび上がってきています。

どうにか物質変動で外側に出さないようにできませんかね?

物質変動、フォルムチェンジ

おおーこれも無詠唱でできました。

以外と無詠唱は簡単なのですね。


ガチャッ


おっ誰か出てきますね、誰でしょう。


「け、ケイン君?ケイン君なのですか?

こ、これはご主人さまに報告ですってうわっ、むーむー」


「スミごめんなさい、でも1つ約束してほしいことがあります」

これ以上はアミさんが息苦しいだけなので解放しました。


「約束ってなんですか?」


「シオンやエイファには僕が帰ってることは知らせないで欲しいんだ」


「なぜです?

も、もしかして私と禁断の恋をしてみたいとか?」


冗談ですよね?

アミさんはとても魅力的な方です。

特にお尻とか、でも禁断の恋なんてしたらその背徳感から戻れない気がします。

「もーからかわないでくださいよ」


「わかりました、これ以上は問いませんが彼女達には気をつけてくださいね」


えっ?


それからアミさんには家に戻ってもらいました。

私は人気のない場所に移動して瞬間移動を使って自室に戻りました。

良し、とりあえず入ることはできました。

お風呂に入りたいですがバレると厄介なので今日は我慢でいきましょう。

私は着替えて布団に入りました。

「もしかすると明日は魔法の練習をするかもですし、魔法書を読んでおきましょうか」

魔法書を見ているとトラップ魔法があったのでアミさんに注意されたため部屋に入ってきたら縛られるロープトラップをしかけました。

「おやすみなさい、シオンさん、エイファさん」

本当は会いたいですが今日は疲れているので勘弁してほしいのです。


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