第17話 モンスター退治②

「おーい、こっちにでっかいのいるよー」


上司から呑みに誘われたときぐらいイライラします。

「今行く」

あれ?なんか走るの速くなってません?


「やっと来たか、遅いよ」


「で、どれなんですか?」


「あそこ、まあ此処から一キロ位先の木の陰にいるホブゴブリン」


「ホブゴブリン?」

なんかここら辺ゴブリンさんばかり出ますね。

「というか、もっと近づいてから言ってもらえるかな?」


「いや、これくらい見えない方が悪いっしょ

それと、ホブゴブリンは普通のゴブリンよりも頭がいいから気をつけてね」


上司の『無理は嘘つきの言葉だ』と言われたような感覚です。

「あーはいはい、取り敢えず見に行きます」

あれ?また足速くなってません?

気のせいにしときましょうか

まだ私は人間であることを望みます。

「あっいた!」

本当にいたのですね。


「信じて無かったのかよピエン」


先ずは観察です。

ゴブリンさんは一度戦っていますが、ホブゴブリンさんはまだなので、しっかり偵察をしないとですね。

「過集中」

体格は、ゴブリンさんよりも一周り大きい気がします。

あと、ゴブリンさんと違うのは武器のレパートリーが多いところですかね。

弓に杖?それに剣とどれも雑な作りですが種類が多いです。

先に長距離攻撃の弓から倒しましょうかね。

裏から接近すれば…良し、取り敢えず近づけました。

「もらったー……うおっ」

何という不覚、落とし穴があったなんて

あれ?全然落ちませんね。

目を開けると手を振り回していた風圧で空高く浮いていました。


「ハハハハハ、君は本当に面白いな

死ぬ前の私でもこんなヘンテコな事できなかったよ」


「そんな事言ってるなら助けてよ!」

というか、高すぎません?

普通に百メーターは上がってます。


「言っただろ?

力加減を考えろと。」


確かに…やはり、私じゃ何もかもキウロスさんには勝てない気がします。

まあ私ごときが勝てるなんて思ってたことが間違いでしたね。

やっぱり、私が彼女達を助けるなんて無理です。ショボン


「いや、そんなに落ち込まないでくれ」


可哀想な子だ、みたいな目で見ないで欲しいです。ショボショボン


「ごめんよ、お兄さんが悪かった。

だから機嫌を直してくれ」


落ち込むのはここまでにしましょうか

落ちるのは物理的にだけで十分ですね。

人を困らせて楽しむ趣味は無いですから。

切り替え、切り替えです。

「フゥ、もう大丈夫です。」


「よ、良かった〜」


このまま落ちたら死ぬこと間違い無しです。

魔法でなんとかしましょうかね。

あっだめです、キウロスさんに魔法は使ってはいけないと言われましたんでした。

物質変動で土を泥水にして、衝撃を軽減すればいけるでしょうか。

しかし、高くから落ちたら水でもコンクリート並みの硬さだと聞いたことがあります。

なら泥水を操作して上まで持ってくればいけるでしょうか。

ちょっと待ってください、物質変動した泥水がある前提です。

打つ手無しです。


「そういえば、もしテレポーターまで辿り着かなかったら君が大切にしているあの娘たちを殺すからね!

どうせ、君のことだから助けようなんて思っているんだろうけど多分無理だよ。」


は?

「お前何いってんだ!」


「事実を述べているだけだよ」


「まだ決まったことじゃない!」

こいつ殺してやります、絶対に。


「いいや、無理だ。

私がいなければこの世界はもう2度終わっていた。

魔神は何世紀かに一度眷属をつくる。

私が教えたの二人共が眷属一人に負けた。

そして、私が時間を止めて巻き戻した。

その度にそれまでとは違う神の眷属が来た。

君で3人目なんだよ、もう私は弟子を失いたくない、だから私がこの手で奴らを殺す。

君は無力だ。所詮はただの人間。

10億年という月日をほぼ一人で生きてきた私が本気をだしたら余裕で勝てる位の強さの敵の心を浄化するなど馬鹿げてる。

本来なら私を見えるものにしか干渉してはいけないのだけども、例えこの地位を剥奪されても、私が殺されても奴らを消せるのならば命なんて惜しく無い」


いつもポジティブでフレンドリーな彼にこんな過去があったなんて…この性格はつらい過去を持つ彼が少しでも寂しさを軽減するように作られた仮面だったのですね。

私が眷属だと知っているならもう言葉使いに気を付けなくてもいいのですね。

「あなたが、どんなつらい過去をお持ちかなんて、一生かけても分からないでしょう。」


「私の過去に何がいいたい」


「あなたは10億年生きてきたのに自分の人生の欠陥に気づいてないのですか、」

「友情ですよ!」

「私も一度目の人生ではそれを知りませんでした。

でも、この世界に来て気付かされました。

あなたが殺そうとしている彼女たちからね。

シオンさんは私がエイファさんに襲われている時に危険を顧みずに私を助けに来てくれました。

エイファさんは護衛を任されて寝ずに見張っていてくれました。

彼女達は友達だからという理由で行動したのですよ、そんな人達を殺そうものなら私を殺してからにしなさい!」


「結局私はどちらにせよケイン君、君が死ぬ所を見なければならないと言うことか。

確かに私は友情を知らない、だから君が私に教えてくれないか?」


「わかりました。

その代わりちゃんと指導してくださいね。」

わかってくれましたか。

それに、私の事情を知っている人がいると、気楽に話せていいですね。


「もちろんだ。

一つ気になるのは何故あの高さから落ちて生きているんだい?」


え?

「まだ空中にいるんじゃ…ってええーーーー」


「ハハハハハ、君なら何でもできそうだね!

で、君の本当の名前は?」


「高橋海斗です」

この人なら本当の私を受け入れてくれる気がします。


「改めて私の名前はクラリス・キウロスだ。

気軽にクラと呼んでくれ」


「わかりました。

それにしてもさっきのホブゴブリンさんはどこに行ったのですか?」

クラさんは目が良いため分かるかもしれません。


「それならさっき、カイティーの風圧で死んだよ」


〜おい、マリータの分際で僕のカイティー呼びを真似するな!〜


神様って忙しいんじゃないんですか?


「これはこれはアマテラス様、もしや海斗はアマテラス様の眷属なのですか?」


〜そうだ、僕の一番のお気に入りだぞ!〜


「すまなかったよ海斗君」


「いや、全然いいですよ。

むしろ敬語使われる方がやりにくいですし」

お気に入り頂きました!


「それを言ったら海斗、君も敬語を辞めるべきだよ?

実際、その体で敬語喋られると気持ち悪いし」


マジですか?

ちょっとショックです。ショボン


「ご、ごめんって、

そういえばアマテラス様、海斗を眷属にしたいのですが一応許可とってもいいですか?」


〜おい、マリータ!僕のカイティーを悲しませるんじゃねぇーよ

眷属にするのは構わないけど、カイティーに捧げるのはお前らの心以上のものにしろよ?〜


「能力を授けるつもりです。」


〜ほう、能力とは良い所に目を付けたな。

僕ぐらいの神じゃないと能力の存在を知らない。

でも、それほどの物を授けるには時間がかかる筈だぞ!

精神的な苦痛の最下点と肉体の最上点を目指さないといけない筈だけど、あとどれくらいかかる?〜


「始めから精神の方は達成しておりまして、実は肉体がついさっき完成しました。」


マジですか。

2日目で完成とは早い方なんでしょうか


〜さっすが僕のカイティーだ!

能力の訓練とその他諸々も宜しく頼んだよ!

お前は優秀だからカイティーと呼ぶことを許してあげる。

じゃあ仕事に戻るから…バイバイ〜


「だってさ、カイティー。」


「ほ、ホントにもう完成したんですか?

破裂したりとか…」

確かに、筋肉はついた気がしますが2日でなんとかなるような物ではない気がするんですけどねぇ。


「しないしない、まあ若干激痛が走るかもしれないけどね。」


「若干激痛ってなんですか!

それ矛盾してますよね?」

絶対駄目なやつです。


「どんなに鍛えても結局は体が不純物だとみなして追い返そうとして激痛の運命だから、いつやってもかわらないさ。」


「流石に能力を授けたらすぐさようならじゃないですよね?」

今の私じゃ暴走しそうです。


「もう、カイティーは心配性だなぁ

大丈夫だよ、まだ力加減の訓練もしてないんだ、このまま解き放ったら魔神の眷属よりも先に君が暴れて王都を破壊しそうで怖いよ」


「そ、そうですよね、良かったです。」


「じゃあ儀式をしなきゃだから取り敢えず城まで行こっか、もちろんさっきのルールを守ってね!」


「鬼畜は変わりないんですね」


「なんの事かな?さあっいくよ!」

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