第14話 監獄は最高の訓練場

そうして、私はキウロスさんを誘ってテレポート場所までやってきました。


「これは驚いた、昔私が作ったテレポーターじゃないか。

まだ残っていたとは」


えっこれって国家機密なんですよね?

まあ伝説と謳われるキウロスさんなら納得ですが。


「そういえば、家族や許嫁に聞いたのですが、キウロスさんは幽霊なんですか?」


「少し違うね、まあ言うならば神に近い存在って感じかなぁ」


近いとは?

もう、神でいいじゃないですか!


「神に近いキウロスさんが何故僕に敬語を使うんですか?」


「君は神の眷属だろう?

私は神に近い存在であって神ではない、だから君には敬語を使う必要があったというわけだよ。

神は下界に間接的にしか干渉できないが私は違う。」


なるほどです。

つまり、神と同等の力を持っているが、神にはなりたくないということでしょうか。


「こんな事を永遠と話してたら日が暮れちゃうよ!

早く移動しようか。」


「はい!」


「テレポート」


一瞬真っ暗になりましたが、目を開けると、この前シオンさんとテレポートした扉の前に出ました。


「これから、私が君の師匠だ!」


ありがたいですが、別に頼んでないんですよね。


「はい!」


「まずは基本的な体造りから始めようか。

今日は筋トレだ!」


この世界に筋トレという概念が存在したのですね

「って、ん?魔法とかじゃないの?」


「言っとくけど君が止めようとしてる魔神の眷属は普通の魔法でどうにかなるものじゃない。

国の書物にも載ってないような最強の魔法が必要だ。

今の君が使えば力が制御できなくなって破裂して死ぬよ」


「わ、わかったよ。」

破裂するなんてどうやったらするんでしょう。

強いだろうと思っていましたが、私が思った以上に強いようですね。


「じゃあ先ずは腕立て1000回からいこうか」


「ふぇ?今何回といった?」


「1000回だけど?」


当然とばかりに笑顔で返してきます。


「わ、わかった」


「じゃあ、数えるよ1.2.3.4.5.………996.997.998.999.1000」

「私が教えた中でも君が一番ついてきている、君人外かい?」


「ハァハァ、数えながら、腕立てしてるキウロスさんの方が、人外ですよ!」

この人エグいです。

1000回腕立てしたのに、息を切らしていません。

私なんかもう手が動きません。


「私は人間じゃないから当然だよ。」


そうでした。


「じゃあ少し休憩したらプランク3600秒いこうか」


プランクって、は?頭可笑しいんですか?

「でも3600秒くらいならって一時間じゃないか!」


「君は面白いね気に入ったよ、僕の眷属にもならないかい?

僕の場合は神じゃないけど『マリータ』という種族で、言わば神様の次に偉い位だね。

まあ僕は元々人間だけど、死んでからマリータになったんだ。」


えっ?めっちゃ偉い人じゃないですか。

眷属かぁ、またアマテラス様に怒られそうですが、キウロスさんは良い人そうなので問題ないでしょう。


「お願いします。」


「できれば一番良いところを授けたいんだけど、少し問題があるんだ。」


「問題ってなんですか?」

アマテラス様から頂いた目は問題なく体に馴染みました。


「ケイン君の体がもたないということだ。

神様からは目をもらったようだけど、私が君に授けるのは能力だ。

神でも知っているかわからないレベルの話だ。

他のマリータや妖精などは心を授けるのが一番強くなると思っているが、私は違うと思う。

心を授けるのは親密な関係にあるか、人間の闇に漬けこんでいるかのどりらかだ。

これはどうにかしようとすればなる話だ。

だが能力は違う。

能力は人の下限の最下点までいった者のみが受け入れる事ができるものだ。

そして、ケイン君は苦痛の最下点を経験した。

あとは肉体の最下点まで落ちるだけだ。

肉体はなんとかなるが苦痛はどうにもならないからこれまでの弟子たちに授けることはできなかったが、君ならできる。

だから君は鍛えなければならない」


私、苦痛の最下点を経験していたのですね。

人生が黒歴史の私がなんだか誇らしく感じます。

「神様から聞いたのですが、魔神は心を授けているみたいだよ?

それなのに何故それ以上の物を求めるの?」


「神と同じ力を持っていても位はマリータのままだからね、与えられる強さに制限があるんだ。

神の心はマリータの心の5倍に相当する。

だが、マリータの能力だと、神の心の3倍の強さになる。

いくら神様からの目とマリータの心があっても二人いるんじゃ話にならないかもしれない。

一応の保険だよ」


「なるほど」

確かに一度にあの二人を相手するのは背筋が凍りますね。


「休憩はここまで!

さあプランクやるよ」


「は、はい」

プランク3600秒なんてこの体がもつでしょうか。


「よーい、スタート

1.2.3.4.〜1800、後半分ガンバレ!」


もう頭が働きません。

キツすぎます。

こ、こんな時は某会社を思い出してキツさを紛らわせましょう。

ってカウント止まってますよ?

ちょっ早くー


「1801.1802〜3598.3599.3500!

もう少しいけるよね?」


その笑顔女性ほどではないですが、ハイと言わなければ殺すという圧をかんじます。

「ハ、ハィ」


「3501.3502〜3599.3600終わり!」


「や、やっと終わった、な、なんで汗一つかいてないんですか!」

マリータか何か知りませんが、そういうものなのでしょうか。


「まあ日課だからね。

こんなに早く終わった人間は初めてだよ。

時間が余ったから後は…」


なにか嫌な予感がします。


「ちょっと足開いて?」


「こうか?ってイッテーーー」

「何するんだよ!」


「ここから1時間はストレッチをしようか、ここならどんなに絶叫しても迷惑にならないから大丈夫だよ!」


「ちょっちょっちょっとタンマーーーー」

この人私の反応を楽しんでますね。

しかも骨が折れるか折れないかという加減をわかっているのかギリギリまで足を広げてきます。

まあ会社よりはマシです。



そうして、ストレッチを終えると日が傾いていました。


「もうこんな時間か、帰ろうかケイン君」


「はい!」

やっとこの地獄から解放されるのですね。


「ちょっと待ってて……待たせたね、この本は初級は違うけど私が作った魔法が載ってる本だ。

読んで初級の欄だけ練習してくれ、初級はこの世界でも使われている魔法だ。

好奇心で中級魔法を使おうとすれば、君じゃ破裂間違いなしだ!」


「わかりました。」

めちゃくちゃ速いですね。

見えないです。

キウロスさんが作ったものということは中級でも人を殺しかねないということです。

間違っても挑まないようにしましょう。


「おっと、日が沈んでしまう。

僕のテレポートで家まで帰ろうか。」


「本当なら歩いて帰るつもりだったの?」

しかし、何故キウロスさんはこんな紋章を残したのでしょうか、キウロスさんなら紋章無しでもいけそうです。


「本当は君をモンスターと戦わせながら帰らそうと思っていたんだけどね、君の家族に心配はかけられないよ」


最後の最後まで鬼でしたね。

「良かった。これ以上やったら死ぬ」


「はっはっはっはっはっ、今日やったのはウォーミングアップ程度のことだよ、しっかりしてくれ

これ以上話す時間はないよ、『テレポート』じゃあまた明日、迎えにくるからね!」

「テレポート」


追い返しましょうかね。

というか、もうどこかへ行ってしまいました。

まあ彼の気が変わらないうちに帰っていただけるのならば問題ありません。

「ただいま!」

私はこれまでで一番大きい声でそう言いました。







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