第7話 決着

勝ち筋が見えました。

先程は物質変動を使って、ギリギリセーフでした。


「技を防がれたのは心外でしたが、近接戦なら防ぎようが無いはず

ってなんじゃこりゃー」


「かかりましたね。」

私の秘策、土のTHIRD。

これに一度入れば私の勝ちです。

後は固めるだけですが…って、腕を振った風圧だけで泥水を飛ばして脱出しています。

彼の筋肉はどうなってるのでしょうか?

彼にギフトがあったらと想像するとゾッとします。


「そんなへなちょこな攻撃ではいつまでたっても倒せませんよ」

「今度こそは近接戦に持ち込めます。」


「物質変動 タイプ鉄」

これで、操れるはずです。

クッ速いです。

鉄の壁で覆って策を考えましょう。

「スチールウォール」これで一先ず安心です。

そうです、鉄を纏えば攻撃を受けても大丈夫なんじゃ…

「フォルムスタイル 鉄」

やはりできました。これで大丈夫なはず…ッグハ

彼の力が強すぎます。

鉄の壁を貫通して鉄フォルムを殴られました。

二重に防いでもこの威力はチーターですね。


「私はミスリル鉱石も手で切断したことがあるのです。

鉄ごときじゃ軽く殴っても穴が空いてしまいます。」


それじゃあ本気で殴っていないということですか?

本気で殴られたら本当に終わります。

ここは逃げたほうが良いんじゃ………馬鹿なのですか私は、熊と対峙しても逃げてはいけないとどこかで見た気がします。

まあ相手は熊みたいな可愛い者では無いですが…。


「飽きてきたのでもう死んでもらえますか。」


彼が姿を消しました。


『ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい』


現れました!

『でも、もう間に合いません

また死ぬのですか、しかもしっかりスローモーションのタキサイキア現象で死ぬ瞬間を見れてしまいます。

死ぬならもっとこうスパッと終わらせて欲しかったですね。』


「待たせたわね、ケイン大丈夫?」

そう言って彼の攻撃を受け止めたのはシオンさんでした。


別に待ってなかったけど、なんて言ったら殺される事はわかっています。

私は空気が読める大人ですからそんな事を口走ったりしません。

「何故ここにシオンさんが?」


「友達だからに決まってるでしょ!

それに……」


「ほう、貴方は相当の強者に見えます。

なかなか楽しめそうです。」


「私は早く終わらせてシオンとラブ一緒に帰りたいんだけど」


シオンさんからゴブリンさんの時以上の殺気が放たれています。


「私も助けたい人がいるので、勝たせてもらいますよ。」

両者が同時に駆け出したと思ったのですが、消えてしまいました。

すると、突然刀を打ち合っている彼らが現れました。

消えたんじゃないです。

過集中を使っても速すぎて見えないだけです。

それから、ドカンッという爆発音?が何度も響き渡りました。


「あんた、人外かなにかかしら?」


「それは貴方のほうではないですか?」

「私の本気に息も切らさずに付いてくるなんて、人間ではありません。」


「レディに対して失礼でしょうがっ」


シオンさんの蹴りが彼の頭に直撃しました。

あんなに速くて重い一撃をくらったらクラクラしそうです。

思った通り頭を抑えておられます。

「おい、小娘やりやがったな」


「あんたの頭がそこにあるのが悪いのよ」


『それは理不尽過ぎません?』


「もう許さん、俺の究極奥義で葬ってくれる」


敬語が消えました。

これはこれで似合っています。


「さっさと終わらせるために、私も本気だすわね」


「えっ本気じゃなかったのか!まあ良い。」


「奥義 殺風拳」


拳と入っているのにも関わらず剣を使っております。


「ライトニング ON」


消えたと思ったら彼らは互いに背を向け、俯いています。


「やりますね、私の負けのようです。」


そう言うと彼の胸から血飛沫が上げられ、倒れました。

シオンさんが私にピースサインをしてきます。


「シオン、ありがとう。

それにしても何故僕の場所が分かったの?」


「いいって、あっ私お父様に無断で外出してるんだった。

今度また話そ」


「あっちょ」


「いいお友達ですね」


あの攻撃を受けてまだ生きていられているのは可笑しい気もしますが、彼なので納得できます。

「それにしても、助けたい人というのは誰だったんだ?」


「それを聞いて君に何ができるのだね?」


「僕が貴方の大切な人を助る」


「君には無理だ、君は超級ポーションを用意できると言うのかね」


中級ポーションを用意できれば私の物質変動で三グレード上げればできるかもです。

「中級ポーションが用意できるのならばなんとかなる」


「中級ポーションならありますが、これをどうするというのだね?」ッグフ


「もう話さないで、これを飲んで!」


「こっこれは上級ポーションじゃないか。

のっ飲んでしまった。

私はお金を払わねばならぬのか?」


「いえ、メイドが持たせてくれたものですから権限は僕にあるはずだよ。」

お金のことになると以外にも取り乱されますね。


「フゥ助かった、それで中級ポーションをどうするんですか?」


「僕の物質変動でそれを超級まで上げる」


「信じてもいいのですね。」


「もちろん、任せてよ。

ただし、1つ条件がある。」


「元は殺されていたこの命、何にでも使い給え」


「僕の護衛 兼 友達になってくれないか」

キョトンとした顔になっています。

「僕、友達があまりいないから友達になって欲しいんだ」

方法はどうであれ、人を助けようと努力する人は心の奥底では良い人なのです。


「は?」

「私は君を殺そうとしたのだぞ。

許してもらえるどころか職業まで貰えるなら私はどう恩返しをすれば良いんだい?」


「そんなこと言ってる暇があるんならその大切な人の所まで案内してくれる?」


「すいません。

では私にお姫様抱っこされてください」


「は?」

この年の男の子からは聞いたこともないような低い声が出ました。


「君走るの遅いでしょう?」


「遅くは無いですけど…」


「じゃあ取り敢えずお姫様抱っこされてください。」


『私、拘束されて殺されるのですか?』


「さっきまで敵だった私の事を信じられないのなら私の首に鉄剣を突き立てててもいいですよ」


『この人は考える事が物騒ですね』

「分かった。そこまで言うなら信じてるよ」


「私もです」


私はある意味ドキドキするお姫様抱っこをされました。


「では出発しますよ」


「はゔぃゔぃゔぃゔぃ」

速すぎません?

多分新幹線より速いです。


「着きましたよ。」


「はやっ」

やはり彼は人外でしたね。

というか5回位舌を噛んだので千切れて無いでしょうか?


「ここは何処ですか?」


「君がいた王都の隣町のはずれの方だ」


「えっは?ん?」

と、な、り、街?

某アニメの『○こ○もドア』でも使ったのでしょうか。


「どうしたんだ?

普通このくらいできるだろ?」


あっこの人話が通じないようですね。

「それはそうと、助けたい人というのは?」


「私のママだ。」


「ママってw」

可愛いところもあるじゃないですか。


「あ?やはり、殺しておくべきだったか」


「ごめんなさい、ごめんなさい」

お父様程ではありませんが、綺麗な土下座をきめました。


「すまない、冗談だ。

大臣の息子はもっと偉そうだったと思うのですが…分かりました、ついにあの薬を飲んだのですね。」


「あの薬ってなんです?」


「知らないということは違うのですね。

最近、王都で流行ってるポルガンという薬です。」


それって絶対麻薬ですよね!

それを飲んだと間違われるくらいケイン君は違ったのでしょうか。

「それよりも、ママ様の状態はどうなんですか?」


「少し触っただけで、痛いと叫ぶのです。

咳き込む度に骨が折れるようで…もう見ていられないのです。」


それはイタイイタイ病の症状ですね。

それなら直ぐに直さないと彼女の容態に関わります。

「中級ポーション 上部変化」

「物質変動 THIRDアップ」

「これで、出来ているはずです。」

「飲ませて上げて来てください。」

私は超級ポーションを舐めました。

何故するかって?

彼の警戒心を解くためです。


「気遣いありがとう」

「それでは行ってくる。」


それから十分後、あの真面目な顔からは想像できない程の満面の笑みで帰ってきました。


「治りました!」







_________________

今回も読んでいただきありがとうございました。

次回の投稿は7月6日0時00分を予定しています。


「俺は中二病だが、良い中二病である」の第一話の更新をしました。

良ければ見ていって下さい。

https://kakuyomu.jp/works/16817330659643327882/episodes/16817330659655056115










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