教室の隅 ホウキを持って笑ったあいつ

三戸満平

教室の隅 ホウキを持って笑ったあいつ

夢の中 一緒に帰ると待っていた 昇降口の 夕方3時


会えないとわかってしまう朝がある 20年後に気づくなよ俺


今ですら会えない人に会う方法は グーグル先生をもって知らない


三年ぶりに 連絡をして聞くことが 他人のことでも 受け止める友


おセンチにそりゃなるよねと笑う友も あとひと月で 母になるらし


フェイスブック ライン インスタ ツイッター きっとどこかに いる気はするけど


なんでまた あいつは普通の 名を持った 鬼龍院とかなら たぶん見つかる


そういえば 結婚という可能性 名字変われば ほんとお手上げ


多分子もいるしいい母親だろう そうじゃないなら何が愛なの


俺の中であいつはいまでも教室の隅でホウキを持っているのだ


窓からの 日差しがあいつにあたってて 今から思えば 美しい春


掃除をしない 俺見て笑う あいつがいて どんな顔した あの時俺は


「おはよう」も 「また明日な」も言ったけど さよならだけは 言ってなかった


会ってから 男女になりたい わけじゃなく ただ会いたいだけ わかられなくても


夢を見た ただそれだけで 会いたくて 鏡を見れない センチメンタル


鎌倉も さいたま市でも ピンとこず あいつがいるのは きっと新宿


「おまえ」って よばすに名前で あいつのこと あの時呼んでいれば よかった


二十年 経つことの意味なんて あったのだろうか なくしてばかり


かわいい子を 好きになるのがルールだと 思っていたから 友達だった


さよなら あなたがきっと好きでした オレンジの空が 今日はただ綺麗



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