転生のベルセルク ～俺をパーティーから追放した女勇者が死んだけど、実は愛する俺を守るため仕方なく追い出したのだと知り、過去に転生して二人の出会いをやり直すことにした～

第68話 外道なる交渉術

　仲間が欲しかった。

　その言葉が意味するところは、一体なんだろうか。

　カイルは瞳孔の開き切った目でアンを見据える。

「オークが人間の女を襲ったら、ハーフオークが増えると考えたのか」

「……」

　沈黙は肯定のサインと見ていいだろう。

　つまりこの少女は――オークどもに凌辱をさせるために、進んで斥候を買って出てたのだ。

　寂しかったから。自分と同じ境遇の仲間が欲しかったから。ただそれだけの理由で、化物どもに手を貸した。

「どう責任を取るつもりだ？　お前が与えた情報を生かして、オークは町を襲ったんだ。死者だって出たかもしれない」

「……殺して」

　アンの目尻から、涙の雫が伝い落ちる。

「生きたくない。殺して」

　死ねばお母さんに会えるから。そう呟くアンの眼は、真っ暗な洞窟のようだった。

「いいや。駄目だ。死にたがっている相手を殺したところで、罰にはならない。むしろそれは救いだ。なんでお前の自殺願望を叶えてやらなきゃならない？」

　生きて罪を償うんだ、とカイルは告げる。

「お前はこれまでの人生を、地下で過ごしてきた。それはオークの生き方だ。これからは地上で人間として過ごしてもらう」

「……」

「知っていることは洗いざらい話してもらうぞ。お前の手引きしたオークの軍勢は、まだ生き残りがいるのか？　どこかに潜伏しているのか？」

「……知らない。……知ってても教えない」

　ほう？　とカイルは眉を吊り上げる。

「……私は半分オークだから」

「仲間の情報は売れないというわけか」

　いいだろう、とカイルは笑う。

「だったらオークらしい方法で吐かせてやる。豚人間は雌豚として扱うのがふさわしい」

「カイル様、まさか……この子の体に聞くおつもりですか？」

　さすがにそこまで鬼畜ではないですよね？　とモニカは不安げに覗き込んでくる。

「おいおいモニカ。いくら狂戦士な俺でも、合意なしに十歳前後の幼女を抱くほど落ちぶれちゃいない」

「で、ですよね」

「抱くのはお前だ」

「え？」

　言うなり、カイルは強引にモニカを抱き寄せた。

　そのままアンに見せつけるようにして、口付けを開始する。

「そ、そんなカイル様……っ！　いけません、子供の前で……そんな――」

　オークは性欲の強い種族である。

　当然、その血を引いているアンもドスケベ幼女であることが予想される。

　目の前でモニカと一戦交えてやれば、間違いなく欲情するはずだろう。

「……っ」

「どうしたアン？　物欲しそうな目をしているな」

「……知らない」

「言えば楽になるぞ？　お前が知っているオークの情報を吐けば、モニカと同じことをしてやる」

「……え……」

　アンの目に光が宿る。何かを期待しているような眼差し。

「お前が十歳だろうと九歳だろうと構わん。俺は年齢で女を差別しない。……抱いてやる。幼女だろうが、問答無用で抱き尽くしてやる」

「……」

「言えよアン。ただ知ってることをしゃべるだけでいい。それだけでお前は女になれるんだ」

　それからカイルは、無言でモニカを抱いた。その回数は十七回に及んだ。

「……」

　やがてハーフオークの少女は、ぽつりと言った。

「……南の……廃屋に……生き残りが集まってる」

　アンの目は真っ赤に充血している。どうやら我慢の限界なようだ。

　よく言えたな、とカイルは優しく頭を撫でてやる。

「……約束……守って……」

「ああ。わかってる。ちゃんとお前も抱いてやるよ」

　もう五年経ったら抱いてやるさ、とカイルは笑う。

　そう。

　カイルはモニカと同じように抱いてやるとは言ったが、今すぐ抱いてやるとは言っていない。

「……！」

「さすがに実年齢が幼女では、抱く気にならんのでな。ロゼッタならまだしも」

「……ひどい……私、どうすれば……？」

「お前は今日一日、一人でムラムラしてろ。それが償いになる」

　言い終えると、カイルはモニカを抱き上げて風呂を上がった。

　一仕事終えた充実感で、カイルの顔には爽やかな笑みが浮かんでいる。

　一方、人前でズコバコと抱かれたモニカには、疲労の色が見える。

「……カイル様は色んな意味で酷いお方です……」

「やっと理解したのか？」

「ですが、優しいお方です」

「……どこかだ」

　完全に鬼畜な行動だったと思うが。どこにも擁護の余地がなかったと思うが。

　これはさすがにモニカも怒るだろうかと覚悟していたのに、ぽっと赤面されるとは意外だ。

「あの子を殺さずに情報を引き出そうとしたのですね。……オーク族の雌をたぶらかすには、ああするのが一番ですし。亜人の生態を熟知した手法だったかと思われます。そ、それに……私もカイル様と混浴して、頭の中がヤリたい一色になってましたし……気持ちを汲み取って下さったのですね？」

「俺は単に、手っ取り早い手段を選んだに過ぎない。さっきはああするのが一番だった」

　そういうことにしておきます、とモニカは笑っている。

「ふん」

　鼻で息をしながら、カイルはアンの言葉を反芻する。

　南の廃屋。そこにオークの生き残りがいる。

　いいだろう、すぐに駆け付けて、全員殺し尽くしてやる。