転生のベルセルク ~俺をパーティーから追放した女勇者が死んだけど、実は愛する俺を守るため仕方なく追い出したのだと知り、過去に転生して二人の出会いをやり直すことにした~
第55話 彼女×彼女×彼女×彼女×彼女×彼女×彼女×彼女×彼女
第55話 彼女×彼女×彼女×彼女×彼女×彼女×彼女×彼女×彼女
「モニカ?」
フードの下から出てきたのは、さきほどまでカイルと試合をしていたリリーエ学院のキャッチャー、モニカであった。
まさか、観客席まで高速で移動して来たとでもいうのか?
カイルはちらりとリリーエのベンチに視線を向けた。するとどういうわけか、あちらにもユニフォームを着たモニカがいるではないか。
同じ人間が、二人存在している。
双子ということもありえるが、この場合はゴーレムを疑うのが自然だろう。
果たしてどちらが本物のモニカで、どちらが作り物のモニカなのか。考えるまでもない。
「お前がゴーレムか」
「……」
返事はない。図星なせいで言葉が出ないのか、はたまた自爆でもするつもりなのか。
幸いとうに確保が済んでいるのだから、おかしな真似をしたら空に向かって放り投げればいい。そうすれば空中で偽モニカだけが弾け飛んで、汚い花火となって終わりだ。
「言え、お前は誰に製造された?」
「……」
「だんまりを決め込むつもりか? それならそれで、体に聞くことになるがいいか?」
どっちが悪役なんだかわからないセリフだが、他に方法がない。女相手の尋問となると、そういう手段を用いのが一番手っ取り早いのだから。
カイルは右手を伸ばすと、偽モニカの胸を乱暴に掴んだ。
「……痛……っ」
「ふん。ゴーレムの分際で、こんなところまで人間に似せてるのか。自爆用のお人形にこの弾力は必要なのか?」
もむもむと、豊かな乳房を揉みしだきながら尋問を続ける。カイルとしては全く下心などなく、世界の平和と速やかな情報収集のために行っているのだが、背後で喚き始めたレオナ達は違う解釈をしているようだ。
「……うっ……く……」
偽モニカは、目尻に涙を浮かべながら唇を嚙んでいる。恥辱に耐えるような顔でいやいやを繰り返す様は、とても犯罪者には見えない。
全く。どこまで人間ぶるんだ、このゴーレムは。これじゃ本当に人間の女の子を強姦してるみたいじゃないか。
「俺だってこんなことはしたくないんだ。さっさと情報を吐け。言えば楽になるぞ。力任せに房を握られるのは辛いだろう?」
「……だっ、誰が王都の男なんかに屈するものですか」
「ほう」
咄嗟に感情が漏れただけかもしれないが、それでも今の発言は聞き逃せない。
どうやらこのモニカもどきは、王都に強い敵愾心を抱いているようだ。となると今回の件は、あちらの過激派愛国者が黒幕だろうか?
わざわざゴーレムにまで政治思想を吹き込むほどの、こじれたテロリストが関わっているらしい。
「お前の雇い主も、似たような思想で動いてるのか?」
「……っ」
偽モニカは一瞬だけ目を見開くと、「しまった」といった表情で口を閉ざした。本来なら一言たりとも喋るつもりはなかったのかもしれない。
「まだ知っていることがあるはずだろう?」
カイルの手が臀部に触れると、少女の肩が小さく跳ねた。肉付きのいい脚は、小刻みに震えている。
怖がっているのは間違いなく、気力で耐えているようだ。
どこまでも強情な女だ。
「……しょうがない。これだけはやりたくなかったんだが……」
カイルはモニカの襟元に手を差し入れると、囁くような声で言った。
「今から俺は、お前を犯す」
「……っ」
「なんだそのポカンとした顔は。まだわかないのか? 俺の正義で、お前の悪の巣窟をかき回してやろうっていうんだよ」
「……なっ……」
「俺だってここまでの非道に手を染めたくはない。さっさと口を割らないと後悔するぞ? 初心な反応でわかる。お前、処女なんじゃないか?」
「……」
致し方あるまい。カイルがズボンのチャックに手をかけると、モニカは観念したような顔で息を吐いた。
「……私はゴーレムじゃない。誰かに作られたわけじゃない」
「なに?」
「……ゴーレムは、あっち」
モニカは――震える指で、ユニフォーム姿のモニカを指した。もう一人のモニカを。終始カイルに好意的だった方のモニカを。
「ていうか、あそこにいるのは全員ゴーレム。王都の人間に好意的な人格を刷り込んだ、紛い物の女子硬球部ってわけ」
「なんだと?」
「あは……っ。本物の私達が、あんたなんかに惚れるわけないじゃない。鼻の下伸ばしてるんじゃないわよ」
「……あいつらはそのことを知ってるのか?……いや、メイ件の反応を見るに、気付いてないのか」
「そういうこと」
つまり。
カイルを試合をしていたリリーエの生徒達は、今も自分を人間だと思い込んでいることになる。
一体どんな顔で伝えればいいのだろう?
「俺も散々殺生に手を染めてきたが、こんな形で命を弄んだことはなかった。反吐が出るな、貴様らのやり方は」
「女の子に乱暴しようって男にも反吐が出ると思うけど」
口の減らない女だ。
カイルはモニカの延髄に手刀を打ち込み、失神させた。
「こいつを頼む」
ぐったりとしたモニカをレオナ達に預けると、スタンドを飛び降りる。
口下手な自分に、うら若い女の子の精神的なケアなんて務まるだろうか?
苦みを噛むような顔をしながら、カイルはリリーエのベンチへと歩く。
「か、カイル様。メイが……メイが生き返ったんです!」
「取れたはずの首が勝手に繋がって! どうなってるんですの!?」
「奇妙な出来事もあるものだな……」
となると、自動蘇生機能のついたゴーレムなのだろう。これならば稼働年数も長いかもしれないが……。
「カイル様?」
モニカは不思議そうに顔を傾げている。こちらのモニカさきほどスタンドで確保した方と違って、全く邪気のない目をしている。
この上カイルい明確な恋愛感情を抱いているとなると……とても言い辛い。
だが、いつかは露呈することなのだ。
こういうのは、早い方がいい。
「落ち着いて聞いてくれ」
カイルの言葉に、リリーエ硬球部の九人のゴーレムが姿勢を正す。
再生したばりのメイは、しきりの自分の首元をさすっていた。
「さっき、観客席でもう一人のモニカを捕まえた」
「……どういうことです?」
「そいつが本物なんだ。……お前達はゴーレムだそうだ」
「何をおっしゃっているのかよく……」
「メイの体を見ただろう。きっと全員がああいう作りになっているはずだ」
重い沈黙が流れる。そんなわけないじゃない、何言ってるのカイル君は、とボソボソ言っているのが聞こえてきたが、皆心のどこかで気付いてるのではないだろうか?
「……でも……私……ちゃんと自分が人間だってわかります……家族の記憶もありますし……」
「……王都側に好意的な人格を用意した、とあちらのモニカは言っていた。その記憶も作られたものなんだろう」
「……そんなの……嘘ですよ」
「……」
「カイル様?」
俺にできることならなんでもする、とカイルは呟いた。
その瞬間、モニカはぺたんと地面に座り込んで、わっと泣き出してしまった。
「……すまない」
カイルはそっとかがみ込むと、モニカを優しく抱き寄せた。
ピンクブロンドの髪を慈しむように撫で、子供をあやすようにして慰める。
「……じゃ、じゃあ、私達は皆メイさんと同じで、体の中は護符でいっぱいの空洞なんですの?」
不安そうな顔でたずねてくるミリアに、そういうことになるな、と答える。
触り心地は普通の女の子と変わらないので、相当精巧に作られているようだが。
「それじゃ……これからどうすれば……ゴーレムなんて、製造者の都合でいつ破棄されるかもわからないんですのよ!? 使い捨ての使い魔なんですから!」
途方に暮れるミリアに、カイルは力強く答える。
「お前達は人間じゃない。ならば扱いは備品だ」
「備品!? 貴方、私達をいきなり物扱いする気ですの!?」
「そうじゃない。最後まで聞け。あくまで書類上は備品として処理するというだけの話だ。たとえ人格を持ったゴーレムであろうと、魔法で作られた物体であれば学用品として登録できるのが魔法学院だ」
モニカが力なく顔を上げる。
泣き腫らした目に、希望の色が宿っているのがわかる。
「この試合が終わったら、俺がお前らの面倒を見てやる。俺の手元に置いて――全員を人間の女として扱う」
「カイル様……?」
「心配するな。お前達は今から、全員が俺の側室だ。ゴーレムだろうとなんだろうと、物のように扱うのは俺が許さない」
カイルの言葉に、モニカは安堵するような顔を見せた。どこか吹っ切れたような……あるいはもっとカイルへの依存を深めたような顔でもあるが、他に方法ない。
カイルは新たに得た九人の恋人に、次々に慰めの言葉をかけていく。抱きしめ、口付けを交わし――自分が予知された通りの未来を進んでいることに、奇妙な感覚を覚えるのだった。
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