第7話 揺りかごから
探偵は諦めかけていた。地上の臨時拠点へ向かう道中で、足を滑らせて崖から落ちた。全身の痛みはさておき、大怪我しなかったことは奇跡だった。だが自分がどこにいるのか、さっぱりわからなくなってしまい、取り敢えず山中を歩き回っていた。
同じ景色がずっと続いているような感覚に陥る。自分自身の目的がそもそも何だったのかわからなくなった頃、体力も限界になり木にもたれかかっていた。
もう外に出ている人は少ないのではなかろうかと探偵は推測した。地上の拠点は敵味方問わずほとんどが破壊された。非常時の為に用意された地上の臨時拠点に船長たちはいるはずだが、そこが無事かも不明である。いずれにせよ明らかに我々は劣勢だ。
コロニーというものが本当にあるなら、そこに人々が集まっているのではないか。
探偵がぼうっとして思惑していると、視界に何かが入り込んだ。
「なんだ……?」
背の高い木々から何かが飛び出ては消えてを繰り返している。
たぶんあれは道化師だ……!
「おーい!! ここだ!! 助けてくれ!!」
探偵は懸命に声を上げたが、それが届くことはなかった。道化師は遠くに行ってしまった。
「畜生……ここで終わりか」
探偵はポケットを探る。そこには手帳があった。探偵はここにきてからのことを仔細に記していた。それは以前からの習慣であり、心を落ち着けるための手段でもあった。
書くためのペンを探すが見つからず、探偵は先ほどより苛ついてしまった。そしてその様を客観視すると滑稽で思わず笑ってしまった。
「つまんねぇな」と探偵は呟く。
こんな状況なのに暇で仕方がないと思っていた。このまま死ぬとしたらそれまでどれほどの時間を要するのだろうか。考えることは嫌いじゃないし、むしろ好きな方だが、それにしても退屈だった。
探偵が少しうとうとしていると「誰だ?」という声が聞こえた。急に聞こえたその声は幻聴かもしれないなと思い、無視した。
「いかにも怪しい男だな……」と、その男、無職は呟いた。
無職は道に迷っていた。船長に渡された地図も、道化師にしてもらった案内も全てが無駄だった。山中を彷徨っていると、誰かの声が聞こえたので、そこに向かった。すると派手なシャツを着た、ロングヘアーに髭を蓄えた男が木にもたれかかっていた。
「オレは無職だ。お前は?」
探偵は目を覚まして目の前の男、無職を見て答える。どうやら幻聴ではなかったらしい。
「俺は探偵だ。無職ね……無職か……」
探偵は笑った。馬鹿にされたと思った無職は少し腹が立ったが、目の前のボロボロで今にも死にかけているような男に向かって怒鳴ることもないと思った。
「無職は珍しいか? てめえこそなんだ? 探偵だと? いかにも怪しい見た目しやがってよ。ヒッピーなんじゃねえのか?」
「なんだと……? 逆にこれぐらい派手な方が怪しまれないんだよ。あと無職は実際に珍しい。職業が被ったって話はあったが、無職って名乗るやつはいなかった。だってスリが職業って言って良いなら何でもありだろ?」
「スリ……そう。老いたスリって知ってるか?」
「あぁ仲間だ。お前どっち側だよ?」
「さっき船長と組むことになった」
「なら俺とも仲間だな。よろしく無職……ところで地上の臨時拠点はどこか知っているか?」
「知ってるも何も、さっきまでそこにいた」
「じゃあ連れて行ってくれ! 料理人が裏切ったんだ、早く知らせないと……」
「もう地上の臨時拠点は襲撃されて、みんなコロニーの中にいる。それと裏切りの事は皆すでに知ってる。老いたスリから通信があったんだよ」
「本当か? くそ! 置いてきちまった。助けに行かないと」
「そのボロっちい身体でか? オレは助けにいくためにコロニーから出てきたんだが、その……道がさっぱりわからねえんだ」
「嘘だろおい……俺もここで立ち往生だよ」
「なにやってんだ……」
「いやあまったく愚かなだな。さすが同じ人間と言ったところか」
「愚かだ? ああ? さっきからケガ人だと思って調子付きやがって」
「おいおい、まあ落ち着けよ。な? 一旦落ち着いてここに座ってくれ」
探偵はポンポンと地面を叩いた。無職は納得がいかない様子だが、仕方なくそこに座る。
「無職よ。お前は今日船長と手を組んだと言ったな。今までは何していたんだ?」
「今日この世界に来たんだ。それか記憶喪失のどっちからしい」
「ええと……待てよ。それはどういうことだ……?」
「言葉の通りだ。普段通りの日常を過ごしていて、起きたらこの世界にいた」
「管理者の話は?」
「聞いていない。さっきからなんだよ質問ばっかり」
「いや、料理人の件があったからな」
「オレがスパイか何かだと? まあ何と思ってくれても構わねえよ。オレだってこれ以上説明できない。それに……」
「なんだよ?」
「なあ、並行世界から来たオレ達に何の違いがあるんだ? オレはお前みたいな恰好をしたいと思ったことは無い。何がオレたちを、まるで別人たらしめているんだ?」
「基本的な生活環境は同じはずだが、決定的な分岐点がある。それは全員十歳の時に何か人生を変えるような出来事を体験してるってことだ。その影響で皆、違った人生を送る。そして別の職業を、別の服装を、別の趣味を選ぶ」
「なるほどねぇ。それじゃあお前は何があったんだ?」
「なんでそんなこと言わなきゃいけないんだ。初対面の奴に……」
無職は包み隠さず話すことに抵抗があったが、この機会を逃してはならないと思った。探偵はある程度信用できそうだ。
「実はな……オレは元の世界にいたときの記憶も怪しいんだ」
「噓……ではなさそうだな」探偵は無職の表情を見たが、それは紛れもなく本当のことを言っている顔だった。
無職は考えを整理しながら話し始める。
「ここに来る前のことを思い出そうとすると、何か断片的なイメージが浮かぶんだ。最初は自分が殺人を生業にしているんだと思いこんでいた。引退してこの島に来たんだと。だが、教師だったような記憶もあるし、盗人だったような気もする。何が本当のオレなのか分からないんだ。だからさっきの話を聞いて思った。もしかしたらお前の生い立ちを聞けば、何か思い出すんじゃないかと」
「うむ……なるほど。しょうがないな。わかった。話そう」
「恩に着るぜ」
「いいってことよ……。あれは俺が十歳の時、街中でひったくりを目撃した。俺は何もすることができなかった。だが一人の老人が、そのひったくりを見事にのしちまったんだ。俺は感動したね、これぞヒーローじゃないかと。俺は老人に話を聞きに行った。『何者なんだ?』とね。老人は答えた。『しがない警官さ』と。だから俺は警察官になることをその瞬間に決めた」
「警察官か……最悪だな」
「まあそう言うなよ。それで十年後には晴れて警察官になった。ただがむしゃらに働き続けたよ。
あと俺には弟がいた。その数年後には弟も、俺に憧れて警察官になった。そしてアイツは俺なんかより優秀だった」
「そうだったな、まあ愚かしいところもあったが」
「ふふ……。だがある日、弟が殉職した。俺は何もできなかったし、警察はろくに動かなかった。むしろ探りを入れる俺の邪魔ばかりしてきたんだ。
だから辞めて私立探偵になった。地道に仕事しつつ、事件について調べ上げだ。そしてある組織が浮上した。あまりに大きくて社会の暗いところにある組織だ。名前も無い。ただ『組織』。
俺は組織を追ってアメリカに飛んだ。現地の自警団たちの協力もあって、とうとう弟を殺したやつを見つけた。馬鹿げた力を持って日本刀を振り回す変態野郎だった。ピチピチの黒タイツみたいなのを着やがってよ……」
「とんだ変態だな。それで? 殺したのか?」
「殺さなかった。証拠を見つけ出して法の下に裁いてもらったよ。そして全てが終わり俺は休暇に思い出の島に来たってわけさ」
「なるほどな……。人に歴史ありと……」
「浅い感想だなあ……。何か思い出さなかったのか?」
「いやぁ……何にも……危ない!!!」
無職は探偵を押し倒した。
今まで探偵がもたれていた木に切れ目ができる。
「おい! 立てるか? 逃げるぞ」
「俺は無理だ。置いていってくれ」
「畜生……」
木は斜めに切れ、ゆっくり音を立て倒れた。
倒れた木の向こう側に黒いピチピチのタイツを着た日本刀を握りしめる自分と同じ顔の人物を見て探偵も無職も驚愕した。
「おいクソ変態が! 何しやがる!」無職は声を荒げる。
「悪い事は言わない。生きたまま輪切りにしてあげよう」と男は返す。
「さっき話を聞いたばかりだから胸糞悪いな。イカれクソ殺人鬼になってるパターンのオレってことか?」無職は問いただした。
「失敬だね君。そう、私のことは『クレイドル』と呼んでくれ。まあもうすぐ死別するわけだが、その名を胸に刻み逝くが良い」
クレイドルは刀をクルクルと何周も回転させた後、探偵に斬りかかろうとした。しかし彼自身もそのカッコつけた回転が仇となるとは思ってもみなかっただろう。
探偵はクレイドルが刀を回転させている間に地面の土を掻き集めていて、刀を振り切る寸前に顔面に向けて投げつけた。「先手必勝だ」
「ぐぁっ! ぺっ、ぺっぺっ」
クレイドルが怯んだ隙に、無職は渾身のジャブを顔面に叩き込む。まるで銅像を殴ったかのような叩き心地に無職は驚いた。相手は全くそれに動じなかった。
しかし効果がなかったとしても隙は今しかない。相手の方が武器を持っている分、圧倒的に有利だ。この間にカタをつけるしかないと思っていたが、決め手にかける。とりあえず人間である以上弱点は同じはず。無職はクレイドルの股間を蹴り上げた。
「むぅ!!!」
さすがに効いたようで、クレイドルは蹲った。無職は刀を奪うか逃げるかで逡巡したが、手を伸ばしたところあまりの殺気がして、腕が切り落とされるイメージがしたため諦めた。
「なかなか賢明な判断だったな」クレイドルが金的のダメージから回復し、顔を上げるとそこには誰もいなかった。
「何か策はあるか?」無職は探偵に肩を貸している。探偵はなんとか足を動かす。
「それが何もない。アイツが俺の世界にいた奴と同じ能力を持っているなら、本当に勝ち目はない」
「そんなこというなよ! 弱点とか無いのかよ?」
「何もない! あいつには銃すら効かないんだぞ。それにあの刀はただの金属じゃない。少し紫がかっているだろ? あれに切れないものはない」
「まてよ! ってことは……」
二人のうちどちらが、つまづいたのかはわからないが、ともかく二人はまた斜面を転げ落ちることになった。
「いってぇ……おい探偵、大丈夫か?」
「あぁこれだけの目に遭って生きてるのが不思議だよ。親に感謝になきゃな」
「あぁ、母親にな」
「ははは。そりゃ違いねえ」
「おい! ここ!」
二人の目の前には洞窟があった。
無職が近づいて中を覗き込む。
「いかにもって感じの穴蔵だ」
「奴に追いつかれる前に中に入ろう」と探偵がせかす。
「いや、こういったとこにはクマがいると相場は決まってる」
「離島にクマはいないだろ」
「わからねぇだろ! ほら!」
二人は何かの生物がそこにいることに気づいた。獣の匂いがする。そしてこちらに向かってきている。
そこには一匹の虎と、一人の男がいた。
「おい、お前らここから出ていけ!」男は怒鳴った。
「おっ猛獣使いじゃねえか」
無職は顔をほころばせた。
「猛獣使い!!」探偵は一気に警戒したが、無職はそれを制した。
「オレだよ! 無職だ。拠点で会っただろ」
「何だ……お前か。俺を始末しにきたのか?」
「違うよ。刀を振り回す変態から逃げてきたんだ」
「もしかしてクレイドルか……? あいつはやばいぞ」
「知ってるのか?」
「あいつは所謂アウトローさ。二つの組織どちらにもつかずに人を殺してまわってる正真正銘の下衆だ」
「下衆いな〜」
「しかもアイツはしつこいんだ。仲間が何人もやられた。絶対に追ってくるぞ」
「じゃあお前も撃退するのを手伝ってくれよ」
「は? なんでそんなことをしなきゃならないんだ」
「一回助けただろ? 借りがあるはずだ」
「ちっ……確かにそれはそうだが」
虎は恐る恐る無職に近づいた。無職も敵意を感じなかったので虎を撫でる。虎は気持ちよさそうに声を上げて転がった。
「珍しい。白が他人に懐くなんて…」
「白って名前なのか。うん。良い名前だ。それに、俺らは他人じゃないだろ」
「ありがとう。それもそうだが……。わかった。お前らと組んでやる」
「お? 急にやる気になったのか。いいね」
「白が懐くやつに悪いやつはいない。それにオレはもうゼロサムにも戻るつもりはないしな」
「俺は反対だ」探偵はきっぱりと言った。
「なんで?」無職は理解できなかった。
「この猛獣使いは今までたくさんの仲間を殺してきたんだ。そんな奴と一緒に戦うだなんて無理だ」
「でも今そんなこと言ってる場合じゃないだろ? 変態がここを嗅ぎつけたら全員死ぬだけだぞ」
「わかってるけどよ……割り切れない」
「なぁ探偵。時には考えないことも重要だぜ。別に仲良くする必要はないだろう。ここで変態を殺したら解散だ。我慢してくれ」
「ちっ……くそ。わかったよ」
「よし! 『チーム無職』結成だ!」
「なんでお前の名前なんだよ」猛獣使いがぼそっと言った。
「お前らの匂いはわかりやすい。ほぼ自分自身と同じだからな。私の五感は全て強化されている。後を追うことなど容易い」
クレイドルは斜面を駆け下りて洞窟を見つけた。
「ふむ……この洞窟の中か」
洞窟に向かう途中、クレイドルの足元に何かが引っかかった。罠が作動して木々の間から丸太がスイングしてきた。それを全身で受け止める。
真後ろから探偵が現れて、至近距離でクレイドルの頭に銃を撃つ。反動で少し前のめりになった無傷のクレイドルは少し苛立ち、後ろを振り返った。
そこには誰もおらず、虚を突かれたクレイドルは、虎がすぐそこに飛んできていることに気づかない。
虎に噛みつかれて吹き飛ばされる。その先には人為的に作られた穴があった。そこにまんまとハマったクレイドルだったが。笑い出した。
「こんなお粗末な戦い方でこの私を殺せると……本当に思っているのか?」
「あぁ、思ってるさ」
猛獣使いはズボンのポケットから一冊の真っ黒な本を出して、誰も聞いたことのない言語を音読し始めた。猛獣使いの右手に白い炎の渦が巻き上がり、それは徐々に大きくなっていった。
「くらいやがれ!」
穴に落ちたクレイドルは大きな火柱に包まれた。
「それマジだったのかよ……」探偵は呆然としている。
「少し
火柱が止み、穴の中の煙は晴れたが、中には誰もいなかった。
猛獣使いと探偵の真後ろに黒焦げのクレイドルがいた。ところどころ黒いタイツが破れており皮膚に煤が付いているものの、火傷は負ってはいなかった。
「許さん! 裁きを与えてや……あれ?」
クレイドルは背中に下げた日本刀を取ろうとしたが、そこには何もなかった。
「忘れ物だぜ」
クレイドルは自分の胸から貫き出る刃を目にした。
「なに……? いつの間に?」
「お前はオレらを舐めすぎた」
無職は手に握った刀を抜き取ろうとした。
しかし抜けない。
「くっ……」
クレイドルは音速を超えるほどのパンチを目の前にいた探偵に向かって放った。
探偵がゴム人形のように不規則な回転をしながら、木々をへし折り遠くまで飛んでいく。
「うそだ……」と呟いた猛獣使いであったが、続いたクレイドルの蹴りをまともに食らい吹き飛ばされる。心配した虎がクウウンと鳴いて猛獣使いの元に駆け寄った。
「貴様には最も苦しい死を与えてやろう」クレイドルは無職をじっと見つめた。
「いやあ、お前が今ので死ななくてよかったぜ。オレは殺人が嫌いなんでね」
クレイドルは無職の顔面を殴りかかった。瞬間で無職は避けるも、頬を拳が擦り、肉が抉れる。
かわした無職はクレイドルの股下を潜って、刺さった刀の柄を握り、背負い投げの要領で動かした。
微かに刀は動き、クレイドルは吐血した。
無職はこれが効果的であると知り、全力で刀を動かそうとする。
クレイドルは叫びながら身体を回転させた。刀の柄を握ったままの無職も一緒に回転する。やがて回転が速度を増したとき、すっぽ抜けて無職は吹き飛んだ。
クレイドルは膝をついた。内臓のダメージが響いている。刀は随分と傷口を開けていた。無職が抜けた刀と共に飛んでいったことに、クレイドは気づいた。
そして刀を回収するべく、無職が吹き飛ばされた方向に向かった。
猛獣使いと虎が立ちはだかる。
猛獣使いは本を読み上げる。すると虎が白く輝き出した。
最初、クレイドルはそれが幻覚のようなものだと思ったが、感じる熱気は紛れもない本物で、それが高温で燃えているのだと気付く。
白い炎を纏った虎は、猛獣使いの指示でクレイドルに突っ込んだ。
クレイドルの皮膚自体にダメージは無かったが、それが傷口なら別の話だ。傷口から内臓が焼ける。クレイドルはうめき声をあげ、口から熱くなった血と煙を吐きながら、白い虎を掴み、遠くまで放り投げた。
猛獣使いは飛ばされた虎の元に急いで駆け寄り、本を読み上げて白い炎を解除した。幸いにも怪我がなかったことに、猛獣使いは安堵した。
クレイドルが再び刀を取りに向かおうとした時、目の前に探偵が立ちはだかる。
探偵の左頬は大きく抉れており、歯茎が剥き出しになっていた。左腕はまるで不器用な人が作った折り紙の鶴のようにひしゃげている。
探偵は震える右手でクレイドルの胸の傷に二発の銃弾をぶち込んだ。
クレイドルは一瞬気絶した。だがすぐに覚醒し、目の前に立ちつくしている探偵を睨みつけ叫ぶ。
「この薄汚い凡人風情が……くたばれ!」
「こっちの台詞だよ」
探偵の後ろから刀を持った無職が現れて胸の傷口にそれを突き刺す。
そして全力で刃を持ち上げる。
いつのまにか近づいていた猛獣使いも柄を持ってそれを手伝った。
刃が少しずつ身体を昇っていく。二人は全身に血を浴びながら刃を一番上まで持ち上げた。
クレイドルの胸から上は縦に真っ二つになって、そのまま後ろに倒れ込んだ。
「大丈夫か?」無職は探偵に駆け寄った。
「……勝ったのか?」探偵は焦点の定まらない眼を無職に向けて言った。
「あぁ、勝ったぞ」
「そうか、そりゃあ良かった」
「良い顔になったな。なあ大丈夫だ。絶対に助かる」
「そんな言葉言わなくても良いんだぜ。なんとなくわかるからな。なぁ無職。さっき洞窟で言ったこと覚えているか?」
「あぁ。もちろんだ」
「良いか、これの先何があっても、決めるのはお前だ。全て任せたぞ」
「良く分からんが、まかせとけ」
「さあ、先に行ってくれ。消滅するところは恥ずかしいから見ないでほしい」
「はは。わかったよ」
無職と猛獣使いはその場を離れた。
しばらくして無職は自らの瞳がうるんでいることに気付いた。
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