第31話 某シ〇アの名言を我が身で体験する青少年の図

「ぐ……ぬぉおおぉおおおおおおおっ!」


 そこまでの記憶を思い出したところで、俺は黒歴史の痛みに耐え兼ねてその場で頭を抱えて蹲る。

 まったくもって認めがたいものである。若さ故、幼さ故の過ちというやつは。今ならシ〇アの気持ちがよく分かるような気すらした。


「ぬぇ!? せ、聖くんどうしたのいきなり悶え出して!?」


 そんな俺を見下ろして、編集とのやり取りを終えたらしい麻栗が心配そうな声をかけてきた。


「大丈夫!? 苦しいの!? おっぱい吸う!?」

「だ、大丈夫だ! あとおっぱいは吸わない!」

「吸わないの!?」

「吸わない」

「……吸わないの?」

「うん、吸わない」

「なんでぇ……」

「吸ってほしいの?」

「うん」


 あとでな?


「っていうか、すまん。今日ちょっといったん家帰るわ……」

「え? え? あれ、なんかわたし気に障ることした!?」

「いや、してない。してないぞ」


 途端に不安そうな顔になる麻栗に、俺は慌ててフォローの言葉をかける。


「ちょっと個人的に、考えないといけないことというか……アレだ。向き合わないといけないことができたというか」

「……どういうこと? わたしになにかしてあげられることあるなら協力するけど……」

「……いや、それは大丈夫だ」


 麻栗の手を借りたら意味がない。それだとなんにも変わらない。


 だって、イキってた頃の俺の記憶にぶん殴られて、ようやく分かってしまったから。麻栗に『同棲』を持ち掛けられた時に覚えた違和感の正体を。

 それと同時に、思い出したのだ。俺が麻栗に、昔っからずっと変わらない感情を抱き続けていたことを。


 だから、こればっかりは誰の手を借りることもできない。

 俺が、俺のために、たった一人俺だけで……向き合わないといけない過去がある。


 そしてその過去は、今もそこに眠っているはずなのだ。俺の部屋の、押入れの奥深くに。


「――ってわけだから、とにかく今日は俺は帰るよ。明日になったら全部話すから」

「む、むぅぅぅぅ……」


 そう言って立ち上がる俺に向かって、麻栗が不服げに頬を膨らませる。

 まるでリスみたいで可愛いなー、なんてちょっとだけ和やかな気持ちになっていると、彼女が俺の服の裾を不意にくいくい掴んで引っ張りながら、言った。


「……じゃあ聖くん帰る前に一回だけエッチしてこ?」


 これまでお前一回だけで済んだことあったっけ?

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