第25話 生涯最大の恥
クソ生意気でクソ口の悪いクソ妹に背中をクソ押してもらった、明くる朝。
「……ええと、これはいったいどういう状況なんだ?」
朝、目を覚ました俺は、猛烈な違和感に呆然とそんな呟きを発していた。
そんな風に違和感を覚えるのも、当然のことである。
なんせ朝目覚めた俺は、何と自分のベッドの上に縛り付けられていたのである。
もう一度言おう。
目が覚めたらベッドに縛り付けられていた。
手足共にぎっちぎちに鎖で繋がれている。動かそうにも、かなり強めに縛り付けられているのかほとんど可動域もない。
なんだこれ?
本格的な拘束っぷりに、さすがの俺も戸惑いを隠せない。いや誰だって戸惑うだろこんなもん。びっくりするわ。いやびっくりどころじゃないけどさ。
それでも比較的俺は冷静であった。
誰がこんなことをしているのかある程度見当がついていたからこその冷静さだろう。
俺は、今まさに俺に馬乗りになっている、この事態を引き起こしている主犯に向かって言葉を告げた。
「麻栗……とりあえず解放してくれないか?」
「……え、なんで?」
きょとん、と小首を傾げて、上下の下着のみを纏っただけの麻栗がそう答える。
それから俺の腹の上に下ろした腰をずり下げていき、ちょうど股間の上あたりに自身の腰を落ち着けた。
「う、そこは……」
「ここは、なぁに、聖くん?」
「いや、だって……分かるだろ?」
「分かるって、なにがぁ? わたしがなにを分かってるって聖くんは思うのかな?」
からかうような口調でそう言いながら、俺の股間に押し付けた腰を、彼女は擦るようにして前後に動かし始めた。
パンツとズボン越しに与えられる彼女からの刺激に、俺のムスコの方もきっちりと反応を返し始めてしまっていた。
「ふふ♡ 聖くん、こんな一方的でもちゃんと反応してくれるんだぁ♡ 嬉しい♡」
「嬉しい♡ じゃねぇ! いや待って、本当になにしてくれてんの!? っていうか俺全然動けないんだけど!?」
「だって動けたら聖くん抵抗するでしょ? それはちょっと不都合かなって」
「不都合って、何が!?」
「子作り」
「は?」
「昨日あの後色々考えてたの。聖くんが煮え切らない理由とか、どうして一緒に暮らすの嫌がるのかな、って。それで思ったの。
「短絡的思考!」
あんまりにあんまりすぎて、思わずめちゃくちゃデカい声で突っ込みを入れてしまった。
しかし突っ込みで拘束が外れたら苦労はしない。そうこうするうちにもテントを張り始めたズボンを見下ろし、麻栗は妖しい笑みを浮かべた。
そんな笑みを浮かべたまま、麻栗が俺のズボンとパンツに手をかける。
「ま、待て、待つんだ麻栗! ってか昨日、お前『無理強いはよくないよね』って言ってたよなぁ!?」
「妊娠・出産はほら、天からの授かりものっていうじゃない? だからほら、別にわたしが無理強いしたわけじゃないかなって」
「理屈としてはお粗末だな!?」
「それに……うふふ♡ 聖くんのこっちはぁ、嫌なんて一言も言ってないよぉ♡」
そう言って、ついに麻栗の手で我が息子を護る
そうなれば残るは、討ち死にをも怖れんと槍を手に奮い立つ我が息子のみ……いや奮うな奮うな。鎮まってくれ、な? 頼むから?
「ふふ♡ そ、れ、じゃ、あ~……聖くんとわたしの遺伝子で、ねるねるね~るねしようね♡」
「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
わけの分からんことを言いながら、麻栗が自分のパンツを横へとズラした――そんなところで。
「――うっさいバカアニキ! 朝からなんなのほんっとマジ……で……」
部屋の扉が猛烈な勢いで開かれ、麗香が怒鳴りこんできた。
「で、でかした麗香! 早く俺を助け――」
窮地に追い込まれ、思わず救いを求めてそう言いかける俺であったが、しかし――。
「…………えいっ♪」
ぬぽっ。
――この日俺は、妹の前で生涯最大の恥を晒したのであった。
***
一瞬、本気でフリーズした麗香が、数秒後に再起動してなんとか麻栗の暴走を止めてくれたあとにぽつりと放ったセリフは以下の通りである。
「……マジで汚いモン見た、トラウマになりそう」
……面目次第もない。
――――――――――――――――――――――
麻栗ちゃんの新作イラストも描きましたー
Twitterとpixivで公開しています!
Twitter:https://twitter.com/makkux/status/1675406270210379777?s=20
pixiv:https://www.pixiv.net/artworks/109545197
実はこっそり前回アップしたイラストだと金髪になっていたのを黒髪に直しました。
イラストの方もいいねやリツイートしてくれると嬉しいです!
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