第11話 彼女の手作り弁当をもらって嬉しくない男なんていねえよなぁ!?
その後、淫獣化した麻栗と愛を求める獣化したDTを引きずって、どうにか学食へと辿り着く。
その頃には、麻栗もDTもどうにか食事にするだけの平静さを取り戻してくれていた。
「聖夢~。今日は昼飯なんにする~?」
「あー、俺はどうしよっかな」
食券を買う列に並びつつ、DTとそんな言葉を交わす。
うちの学食は、A定食・B定食・ラーメン・カレー・味噌汁定食、の五種類しかなく、はっきり言ってラインナップに乏しい。その分、だいたいの生徒は日替わりで内容に変動のあるA定食かB定食を選ぶことが多かった。
俺もその例に漏れず、食券横に置いてある看板に書かれてあるメニューへと視線を向ける。……ふむ、今日はB定食がトンカツか。アリだな。
「よし、じゃあ俺はB定食に……」
「聖くん聖くん」
「ん?」
普段なら一緒に列に並ぶはずの麻栗が、なぜか列から外れたところで俺の肩をつんつんと突いてくる。
なにかと思い視線を向けると、彼女は手にしたバッグの中をごそごそまさぐると、「じゃ~ん!」と二つの包みを取り出した。
「ま、麻栗……まさか、それは!」
「うんっ! 聖くんの分のお弁当……だよ?」
そう言って、ちょっと恥ずかしそうに頬を染め、麻栗が包みを持った手で口元を隠す。
それから、いかにも初心な表情で、
「せ、聖くんに……おいしくて栄養のあるもの、いっぱい食べてほしいな、って♡」
と言ってきた。
「ま、マジか……ありがとう! 嬉しいよ麻栗!」
素直に俺は感謝の言葉を告げる。
この世に彼女の手作り弁当をもらって嬉しくない男がいるか? いや、いない!
もしそんなやつがいるとするなら、それは男ではない。外道か悪鬼か畜生の類である。
愛する彼女が丹精込めて作ってくれたお弁当。それは俺にとって、千金にも値する宝物だ! たとえ億積まれたって売ってやんない。金には換えられない価値がそこにはある。
その価値とは、例えば目には見えない、そこに込められている愛とか想いとかそういうやつだ。愛や想いってやつは本当に凄い。それがたっぷり込められているだけで、たとえどんな素朴な料理だったとしても超高級な懐石料理やフランス料理のフルコースにすら勝る味になるんだから。
極論、ただ米を握ったおにぎりでさえ至福の美食となる。
……付き合って二日目でこんなご馳走にありつけるなんて、俺もしかしたら今日死ぬのかもしれないな。
「ありがとう麻栗。俺は今日このあと死んでもいい」
「え、なんでそうなるの!? え? え?」
感動に打ち震えながら、俺は麻栗から弁当の包みを受け取る。
何やら麻栗がうろたえているが、いったいどうしたのだろうか? 俺、なんかおかしいこと言っちゃいました?
「じゃあDT、俺、先に麻栗とテーブル行ってるわ!」
「お、おう、そうか……末永くお幸せに」
「おう!」
俺はDTにそう告げて、麻栗と連れ立って空いているテーブルを探しに行く。
なにやらDTは微妙な顔つきをしていたが、いったいどうしたんだろうなぁ。
なお、背後から、
「……オレ、やっぱ今日は一人で食おっかな」
などというDTの言葉が漏れ聞こえてきたのは余談である。
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今後も頑張って更新続けていきますので、この二人のいちゃらぶをこれからも楽しんでいただけると嬉しいです!
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