第7話 村月麻栗はムラつきまくり
「そのー……麻栗さん、何をしていらっしゃるのでしょうか?」
「
「すんなよ」
いかん、だいぶガチトーンの声が出てしまった。
まあでも、どうやら恋人になったところまでは俺の妄想ではなかったらしい。良かった。
……っていやいや、良くない! 良くないよ!
なぜなら今は四限目の授業前。しかも場所は男子トイレ。
幸いのところ、今は誰かが入ってくる様子はないが、もしこんなところを他人に見られたら俺の社会的生命はその瞬間に消し飛ぶことだろう。
どれだけ麻栗が一方的に押しかけてきたのだと主張しようとしたところで、聞き入れられるわけもない。俺と麻栗、どちらがより
『清純派アイドルに強制淫行!? 幼馴染の立場を利用し強引に迫る少年S』
瞬間的に、頭の中でそんなタイトルの見出しが躍る。
そんなものが三文記事で荒稼ぎしている週刊誌なんかに掲載されたらヤバすぎる! 最悪、本当にもう日本で生きていけなくなるのではないだろうか!?
素早く思考をそう巡らせたところで、俺は必死で麻栗に囁きかけた。
「お、おい麻栗。早くトイレ出てけって……こんなところで変なことするわけにもいかないだろ!?」
「う、うん、それはね、分かってるんだけどね、えとね……」
麻栗は恥じらいに頬を染めつつ、俺から視線をそっと逸らすと。
「……あ、朝からムラムラしちゃってぇ……もう、ガマンの限界……ふひっ」
「ふひっ、じゃなくてですねぇ!?」
「実は今朝聖くんに会った瞬間から発情しちゃってて……なのに聖くんったら、大胆に外で手を繋ごうとしてくるんだもん。あんなセ〇クスアピール、濡れるの止まらなくなっちゃう……」
「そんなアピールしてないが?」
「でもさすがに外はマズいかなって思って、その場で押し倒すの必死で我慢してたんだから。ね、ね、わたし偉いでしょ?」
「エロいの間違いだろ」
「そ、そんなに褒められたら……んっ、興奮しちゃうぅ……」
ダメだコイツ早くなんとかしないと。
見れば麻栗は完全にメス顔スイッチが入っていらっしゃる。発情のツボがあまりにも浅すぎるだろ。笑い上戸ならぬエロい上戸ってか? やかましいわ。
ともかく、今のこの状況は本当にマズい。冗談抜きで色々ヤバい。
俺は麻栗を必死で宥めようとした。
「あのな、麻栗。外はさすがにマズいってさっき言ってたけど、学校の男子トイレでってのも普通にめちゃくちゃマズいからな?」
「う、うん、それはね、分かってるの。理性ではいけないことだってね、ちゃんとわたし分かってるのよ聖くん」
「そうか分かってくれるか。じゃあ、ほら、今朝働かせたばかりの理性を今この瞬間もう一度働かせてみてくれ。な! 麻栗はやればできる子だぞ!」
「ヤればデキる……聖くんの赤ちゃん……ごくり」
「そっちの意味じゃねえ!」
「やっちゃダメとかマズいとか……そう思えば思うほど興奮しちゃうことって、あるよね?」
「頼むからその一線は踏み越えないでくれ!」
いや分かるけども!
あるけれども!
そんなことを話している間にも、麻栗の「にぎにぎ」が、次第にそんな可愛らしいものではなくなってきたりするわけで。
いやほんと待って!? 頼むから! そんなに動かれるとマイサンが素振り始めちゃうから!
「麻栗! た、頼むから落ち着け、落ち着いてくれぇ!」
「うん、大丈夫わたし落ち着いてるよ。だから聖くんがちょっとずつ興奮してきてるのも分かってるよ?」
「性欲ではなくて、危機感でな!」
なんてことを話していると。
「あーだりぃ……マジ次の授業めんどくせー」
「分かるわー。あ、ちょっちしょんべんしてっていい?」
「あ、俺も俺も」
外から! そんな会話が! 聞こえてきた!
(や、やべぇ……このままじゃ麻栗に手〇キされてるのが見つかる……!)
このままこうしていれば確実にアウト。
だからといって、外に逃げ出すわけにもいかない。そこで他の生徒と鉢合わせたら、たちまち麻栗を男子トイレに連れ込んでいたヤバいヤツのレッテルを貼られてしまうこととなるだろう。
かくなる上は、仕方がない。この状況で俺が選択できる、唯一にして最善の回答、それは――。
「ま、麻栗、こっちだ!」
「あんっ♡ 強引♡」
麻栗の能天気な声を無視して、彼女を連れてトイレの個室へと駆け込んだ。
「ふぃー、小便小便っと」
「おっさんくせぇなお前」
「ほっとけ」
個室の扉を閉めると同時に、誰かがトイレの中へと入ってくる気配がした。
「はぁ……ギリギリセーフ、か」
差し当たっては安全を確保し、俺はホッと一息ついていたのだが、麻栗はというと……。
「……ふふっ♡ 聖くんったら、積極的なんだから♡」
……お前もしかしなくても顔とスペックが死ぬほど高いだけの淫獣だな?
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