ファンタジーは始まらなかった
なまず
本編
「あれ、地震?」
夜、寝る準備をしもうすぐ布団に入ろうかというとき突然揺れが襲った。とはいえ立っていられないほどではなく、部屋に立てかけていたペーパーモップが倒れたぐらいだ。とはいえ外で何か音がしたので念のため外を確認しに行こうと思う。
外に出て懐中電灯をつけ庭の方を照らすと穴があった。どんな状況か暗くて近づいてみる。
「階段?」
近づくと穴の中に石造りの階段があり明らかに人工物であった。
「ふむ、これはもしやダンジョンというものでは……」
もしダンジョンだったらこれはチャンスなのでは。スタートダッシュを切って華々しく活躍するかニュースで行方不明扱いにされるか。これは入るしかない。念のため武器を取ってこよう。スコップでいいな。
「よし、準備OK。入るか」
三十段ほど下ると階段がなくなり洞窟になっていた。流石にいきなり階段を下りたらいきなり草原とかがあって空があるということにはなっていなかった。
五分ほど慎重になりながら進むも分かれ道もカーブもなくまっすぐな道が続き何もないままであった。
「何も出てこないな。ただの穴か? でも階段はあったし。なんだろう」
スライムにもゴブリンにも何にも会うことなくひたすら進むことさらに数分、ついに奥に何かがあるのが目視できダッシュでそこに向かった。
「水晶玉? ダンジョンコアっていうやつか?」
「……を……くれ……。その玉……してくれ……。その玉を壊してくれぬか」
最初の方は何を言っているのかわからなかったがだんだん声がクリアになっていきどうやら目の前にある球を破壊してほしいようだ。
「あのー、なぜですか。あなた誰ですか。聞こえますか」
いくつか質問してもずっと同じことを繰り返すだけで少し鬱陶しいので壊すことにした。
「おりゃ!!目がぁぁぁぁあっ!!」
玉を壊すと辺り一面が白に包まれ何も見えなくなり、誰かが出てきたものの姿を確認することはできず、声しか感じ取ることができない。
「おお! ついに自由になることができた!」
「あのー! ちょっと」
「まだこの星がダンジョン化するのを阻止できる!もし間に合わなかったら少年に賢者と言われた儂の力を伝授するところだったがそんなことにならなくてほんとによかった!」
「あのー!」
「少年よ助けてくれてありがとう! もうすぐここは崩れるから外に送ってやろう」
「人の話聞けよ!!」
「さらばじゃー!!」
気づいたときには目は治っておりおじいさんらしき人はおらず、自分は洞窟の外の庭に出されており、庭にあった穴は跡形もなくなっていた。
「あれ? もしかしてチート手に入れる機会逃した? もし朝に確認していたら賢者の力ってやつ手に入ってた?」
これ以上考えてもむなしいだけなので家に戻りさっさと寝よう。
ファンタジーは始まらなかった なまず @nekozakana27
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