第8話 続・捜査
「郷野の話から、何か分かったか?」
二時間目の授業が終わり、オレたちは黒川の教室に向かいながら話していた。
「これと言って何もないですね。乃木口くんはどうですか?」
「オレもだ。」
授業中、二人の話を突き合わせて考えていたが、特別矛盾した点も見付けられなかった。強いて発見といえば、市ノ瀬が部室に取りに戻ったポーチの中身が化粧道具であったことくらいか。その他は、発見らしい発見は見当たらない。まだまだ真相解明には時間がかかりそうだ。
溜息を吐いていると、早速黒川の教室に辿り着いた。先ほどは緊張した上級生の教室も、二度目となると慣れが働いてか、それほどでもない。中を覗くとひょろりと背の高い男子が歩み寄ってくる。
「やあ、久しぶり。」
「あ、どうも、」
郷野の出迎えとは対照的に、黒川は笑顔でオレたちを声を掛けてきた。はっきり言うと、この先輩については、あまり印象が残っていない。その為、郷野に対してのような積極的な怒りもなく、出鼻の挨拶で毒気は抜かれてしまった。
「山下から、話は聞いてますか?」
「ああ、聞いている。」口許を緩めつつ、黒川は頷く。「推理小説みたいで、中々面白そうだな。」
「小説のように、解決する保証はないですけれどもね。」
「ミステリマニアを持ってしても、解決は難しそうなのか?」
「まだ何とも言えませんよ。」
「まあ、昨日から考えているが俺はさっぱりだった。君たちに期待しているよ。」
一瞬、値踏みするような目線で黒川はオレと天ヶ瀬を見た。そういえば郷野の証言で、黒川のことを嫌な性格をした男だというようなことが言われていたな。油断しないほうが良いのかもしれない。
オレは気を引き締め、昨日の出来事を黒川に求めた。
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