メルトの話した昔話の裏話 総集編

 昔々バビロニアという国に白銀の神狼を父に持つ少年が居ました。少年の父親は王国の王様でした。少年はその国の王女様でした。父親は少年に王国を任せる為にと様々な教育を行いました。勉強は難しく戦闘訓練はとても厳しく青年にとってそれはとても辛いものでした。しかしいつもいつも終わったら父親は少年に「愛しているぞ」と告げました。少年は父親にその言葉を言ってもらいたいわけではありませんせしたが将来のため頑張りました。

 そんな少年ですが1つだけ父親に絶対にやるなと言われていることがありました。それは北にあるサフラン王国へ行くことでした。何故かと少年が父親に聞くと「お前の母親と双子の妹がいるからだ」と答えました。少年は驚きました。母親は死んだと聞いており妹が居たなど聞いたこともありませんでした。しかし少年は聡明でした。何故父親がそのことを隠していたのかが分かりました。当時バビロニアとサフラン王国は大規模にはやっていないが小規模中規模で争っていた。そんな時代にバビロニアの王である父親とサフラン王国の人間の間に子供が出来たとなれば両親子供全員が不幸になってしまうだろう。それを理解していた。そしてそれを見た父親は少年に「サフラン王国を飲み込めば2人と一緒に暮らすことは出来るかもしれない」と言いました。「和平を結んではダメなのか?」と少年が聞くと「それでは無理だ」と父親は悲しそうにそう言いました

 少年はその後父親の悲しい顔を晴らし4人全員で暮らすためにとより一層頑張りました。 そして少年が16になった時に事件が起こりました。北にある大国であったセラフ神聖国が2つの話をサフランの王様にしました。1つは王女をセラフの学園で学ばせないかという話。 そして少女が16になった時に事件が起こりました。北にある大国であったセラフ神聖国から使者が訪れました。そして使者は2つの話を王様であった母親に告げました。1つめは少女をセラフの学園で学ばせないかという話でした。少女は外の世界へ行けると喜びましたが母親は断固拒否しました。2つめはサフラン王国のさらに南にあるバビロニアを共に攻め滅ぼしサフラン王国に併合しないかという話でした。父親はサフラン王国に忍ばせたスパイからその情報を知らされ、少年に王女を攫って来るように命令しました

 命令された少年はしっかりと準備をして獲物の槍も持ってサフラン王国の首都に向かいました。少年は何度かサフラン王国を訪れていたのでバビロニアとは違う環境に驚くことはありませんでした。しかし普段と違うことがありました。それは勇者が今この首都に訪れているということでした。そして真偽を確かめるために王宮に忍び込んだ少年はそこで初めて王女の姿を見ました。王女はとても美しい少女でありその笑顔は少年の心に恋というものを植え付けました

 王女に恋した少年でしたが王女が話している少年に目が惹かれました。少年は自身に似た美しい白髪に覇気を感じる剣を携えた明らかに普通の人間ではありませんでした。少年は理解しました。少年が勇者であると。そして勇者の隣に居た妖美な女性の話を聞いているとどうやら王女はその世界へ旅立ちたくそれに同意した勇者と使者が明日の夜に勇者が迎えに来るという内容でした。少年はすぐに気が付きました。そんなことをすればセラフ神聖国とサフラン王国に大きな溝ができるということを。若い勇者はまだしも隣にいる女性は確実に理解しているはずです。それなのに同意しているということは王女を人質にしようとしているということだと。青年は考えました。明日までにどうにか王女を攫わないと自分にとっても王女にとってもまずい、どうにか助けないとならない。しかし分かる。勇者であろう少年に真正面から向かえば負けると。少年は考え不意打ちすることを選んだ。次の日の夜、迎えに来た勇者の背後から少年は槍を持って襲い掛かり倒すとそのまま王女を誘拐していきました。そしてそれがパンドラの箱を開けることになるとは思わなかった

 バビロニアまで連れ去った王女を父親は牢に捕えた。しかし王女が苦しまないようにと王女が住んでいた王宮の自室と変わらない環境を整えさらに王女の年代が好きそうな本を渡すなどした。しかし少年はそれだけでは王女が悲しみさみしがると思い時間があれば王女に会いに行った。後々、それが恋心からの無意識の行動であったのかもと気が付き赤面した。そんな生活は半年続きその半年間はとても楽しいものであった。恋する女を独り占め出来たうえ少女は心から笑みを浮かべていたからだ。しかしそんな生活も長続きはしなかった。ある日、少年が父親と話していると突如配下の獣人たちが武装して部屋になだれ込んできたのだ。そして父親が何事だと問うと父親の側近の獣人が「貴方はサフランの女王と恋仲になり王子とは別に娘が居るな!」と言い放ったのだ。少年は驚いた。それはつまり自身はサフランの王子でもあり、攫った王女は自身の姉か妹、、、そして何より恋した女は恋することが許されない血の繋がった相手だということだからだ。あまりの衝撃に少年は愕然とする。それを見た側近は「王子も騙されていたのですね!我々は王子に責を問おうなど考えておりません。裏切り者の父親の後をお継ぎになって我らが王となってください!」と言ってきたのです。少年は聞いた「王女は、、、俺の姉か妹はどうする?」と。すると側近は「貴方様の手で始末なさってください」と返した。そしてその瞬間少年は「そうか」と言って自身の得物である槍と固有魔法を用いて仲間であった獣人を貫き王女の下へ向かった。当然激しい抵抗により少年の体を傷つけた。しかし少年は止まらずの下へと向かい血に染まった自身に驚く少女を抱き抱えそのままバビロニアからもサフランからも遠く離れたエモクロア共和国から続く森へ逃げ込んだ。そしてそこから少年は味方が居ない孤独で辛く苦しい戦いに墜ちることとなった

 森へ辿り着いた少年は無理が祟り倒れてしまった。すると妹はぎこちない魔法で少年を癒した。そして一週間眠り続けるた少年は目覚めると妹になぜ自分をこの森まで連れて来たのかを訪ねられた。「自分の妹でお前の命が危なかったんだ」と全て言うのはマズいと考え「お前の命が危なかったんだ」とだけ伝えた。そして妹の願いを思い出し「俺の体が治ったら一緒に旅をしよう」というのであった。妹はその言葉に喜び約束通り一ヶ月後二人は旅に出てそこで様々な出会いがあったり絶景を見たり時に危機があったりと楽しくて刺激的な旅を過ごした。少年は夢であった生き別れた家族との生活を送れてとても嬉しかった。だが二つの問題が旅の間ずっと心残りであった。

 一つ目はバビロニアがサフラン王国によって滅ぼされたということだ。どうやら父親の秘密を側近達に流したのはサフラン王国の女王、、、つまり少年の母親だったらしい。母親はセラフ神聖国と協力してバビロニアを滅ぼすと決め、そのためにバビロニアを内部崩壊させたのだ。しかもそれをすれば実の娘が最悪死ぬというのに実行したのだ。そのことを妹が知れば悲しむだろうと考え少年はその情報が妹に知られないように隠し続けた。

 二つ目は自身が持っている妹への恋心だ。妹に恋しているというのは禁忌だ。兄と妹の恋愛は物語の中では面白いが現実では最悪だ。少年は恋心を封印して旅を続けた。

 そして旅をして1年が経った時ふと妹は「お母さんに会いたい」と少年に言った。半ば喧嘩別れと言っても良い母親だが1年半以上離れていたということや元々好きだったこともあり妹はそう考えてしまった。そして少年は妹が囚われると考えました。しかし今ここで真実を話したとしても禍根が残ると考えました。そして何より囚われた後に自分が救い出せば問題ないと考えた、、、考えてしまった

 サフラン王国に戻った妹は驚愕した。至る所にみすぼらしい服を着た痩せこけた獣人が居たからだ。それはサフラン王国民ではなく、バビロニアに暮らしていた獣人たちであった。「なんでこんなことに」と妹が呟くと少年は答えた「1年半前にサフラン王国とセラフ神聖国の連合軍がバビロニアを滅ぼしたんだよ。そしてセラフ神聖国主導の元バビロニア住民を奴隷にしたんだよ」と。

 そして妹は王宮へ向かい少年は妹を救うために動いた。予想通り妹は捕まり少年は妹を救い出すとそのまま国を出ようと妹を抱えて走り出しました。しかし運命は2人が逃げ出すのを拒んだ。あと少しで王都から出れるというタイミングで勇者が現われた

 少年たちの前に立ちはだかった勇者は「諦めろ。真正面からじゃ勝てるわけないだろ!」と泣きそうな顔で言いました。勇者だってこんな事はしたくなかったのです。しかし少年はその事に気がつきませんでした。もしここが気がついたいれば未来は変わったかもしれません。しかしその未来はありませんでした。結論、少年は勇者に大敗しました。ただし最後に母親の血由来の炎魔法を一撃撃ち込みその威力は勇者は負傷する威力でした。しかしそれだけです。それで終わりでした。たかが一撃与えたところで何も変わりませんでした。 追手の聖騎士や兵隊が2人を取り囲んだのです。絶対絶命の状態。少年の心は絶望と諦めに支配されました。どうにか妹だけでもと思い策を考えますがありません。

ドカン!!

そんな中、勇者の体に白く輝いた炎の球が当たりました。そしてそれは少年の一撃と違い勇者を昏倒させるほどの威力でした。そんな魔法を放ったの純白色の尾を9本生やしと狼の耳と牙を生やした妹でした。そして少女はそのまま聖騎士や兵隊、、、さらには王都全土を炎で焼き尽くしました焼けた王都で生き残ったのは6人。少年・妹・勇者・少年達の母親・少年達の父親・勇者と母親の間に生まれた赤子の6人だけだった。そしてその場で戦えるのは妹・母親・父親の3人だった。そして王都を滅ぼされた母親は怒り狂い実の娘である妹を殺そうとする。しかし父親が母親に襲い掛かり「逃げろ!!」と妹に叫んだ。そして妹は少年を背負って1年半前に暮らしていた森へ逃げ込んだのであった。

 森に逃げ込んだ妹は少年の傷を癒す。しかし前とは決定的に違うことが一つあった。それは妹が燃え上がるほどの恋心を少年に抱いてしまっていたことだ。1年半の間に様々な理由で妹の恋心は深まって行った。そしてトドメに絶望の状態から救い出してくれたことで恋心は燃え上がった。しかし妹の精神は燃え上がった恋心に耐えきれるほど安定していなかった。そして獣の本能のままに少年を襲おうとした。だが少年は知っている。目の前の少女が自身の血の繋がった妹であることを、、、体の繋がりを作ることは最大の禁忌だ。絶対に避けなければならない。しかし少年はボロボロの状態であり覚醒した妹に押し倒されては対抗できない。そして何より、、、自身の恋心を押さえつけることが出来なくなってしまった。それから文字通り獣のごとく少年と妹は性行為に明け暮れた。お互い精神の摩耗と親の色欲の血という外部的要因に加え少年は長年の夢と恋心から、妹は一尾しかなかった尻尾が一気に九尾に増えたためその負荷が精神の枷を破壊した


最悪の両思いが成就した


 一月の間そんな生活を送っていたある日その生活は終わった。セラフの軍隊が森に攻め込んできたのだ。王都を軽く消し飛ばし勇者をほぼ一撃で屠るその強さの前にセラフは本気で妹を討伐しに来た。その時まだ少年は戦うどころか自分で動くことすらできなかった。妹は一人で戦うことにした。妹は軍隊相手になんと部隊の7割の命を刈り取った。しかしそれまでだった。軍を率いていた聖騎士団長の手によって妹は捕らえられた。そして残った部隊で青年を探すが少年の姿は無かった。聖騎士団長は妹に詰問するが妹も少年の居場所が分からなく混乱する。むしろ妹は少年が意識こそあるがまだ到底動ける状態でないことを知っているので最も混乱していた。そんな様子を見て勇者は妹も知らないようだし不測の事態が起こらないように帰還しましょうと告げた。そうして妹はセラフに連れていかれた

 では少年はなぜ消えたのか。その答えは


「くそ、、、リオンが勝てるわけないだろ?!」

メルトは焦っていた、妹が勝てるわけないと分かっているからだ

「ぐぅ!」

どうにかメルトは立ち上がろうとするが

「っ!」

それは叶わない

(俺は、、、何も出来ないのか?!これが妹に恋した俺への罰なのか)

メルトはそう絶望する

そんな時だった

「居た!」

そんな少年の声が聞こえた

それは

「っ!カルト!!」

勇者、カルト・ロマノフであった

「、、、頼む。俺がリオンを洗脳したことにしてあいつだけは俺を助けてくれ」

カルトを見たメルトはそう願った

「無理だ。神聖教会はお前の妹を消して俺と今の女王の子を女王にしようとしている、、、」

しかしカルトはそう答えた

「、、、クソが」

「お前だけでも逃がす。お前らの人生をめちゃくちゃにした責任だ、、、せめて」

そういうカルトは

「時間停止」

世界の時の流れを止めた

「なっ!じ、時間を止めた?!」

「行くぞ!ひとまずこの国の森を出てエモクロア側の少し奥の森まで一回逃がす」

驚くメルトを放置して背負うと

「時間加速」

ビュン

凄まじい速度でエモクロアの森へ向かって行った

そして体感時間5分で目的の場所まで行くと

「神秘の光よ、彼を守りたまえ」

エテルを守るように結界を創り出した

「神聖術式と光魔法の複合だ。簡単には破られない」

そしてそう言うと戻って行った


勇者は不測の事態が起こらないように帰還しましょうと告げ自身はもう少し探すと言ってそのまま少年と合流したのだ

  勇者は少年を秘密裏に自身の隠れ家に連れ帰った。

「何で助けた?」

少年がそう聞くと

「気まぐれだ」

勇者はそう答えた

そして

「お前の妹は一月後にセラフの首都、アヴァロンで公開処刑される、、、後、同時に大罪司教も一人処刑するそうだ。確実に悪魔教団が助けるために首都へ攻め込んでくるだろうな。そしてこの拠点の外の井戸は首都に繋がってる。なんでかは知らないけどな。傷は治しておいたから策でも練って行くんだな」

そう言って去って行った

 少年は最大の敵であった勇者によって最大にして最後のチャンスを得た。そして20日後少年はひたすら井戸の地下道を通ってセラフ神聖国・首都アヴァロンへ向かった。そして逃走手段なども用意し運命の日を迎える。アヴァロンに着いた。そして妹を待っていると程なくして妹と共に他にも処刑犯が連れられてきた。そして偉そうな人間が口にした言葉に少年は絶句した。妹が処刑される理由は大量虐殺と奴隷制の主導者であるという言うのだ。本来の主導者であるのはセラフと母親であるはずなのにその罪を自身に擦り付けたのだと。あまりの下劣さに少年は怒りすらもはや沸かない。

 そしてついに絶望に染まる妹が首を切り落とされることとなった。少女の首を切り落とすギロチンの刃が上がったその瞬間断頭台が消し飛んだ。その理由は黒髪黒目の男が魔法で消し飛ばしたからだ。そしてその男の後ろに居た緑髪の女が同じ断頭台に居た桃髪の女性を助け出したことで断頭台を中心に戦闘が始まった。その状況はまさに自分が求めていた状況であった。悪魔教団の襲撃によって混乱する聖騎士の隙を突いて少年は妹を助けに戦場に参入した。しかし聖騎士達も表向きは世界を守ってきた聖騎士達だ。全身傷だらけになりながら前に進むこととなった。しかし確固たる意思を持った狼はそれに勝った殺し道を開くと妹の元に辿り着く。そして妹を縛る鎖を破壊するとそのまま妹を連れて逃げようとする。しかしまるで最後の壁のように少年と妹の母親が少年に襲い掛かって来た。傷だらけの少年では絶対に勝つことがかなわない圧倒的な強敵であることは容易に感じ取ることが出来た。

(家族を守る!!)

そう少年が覚悟を決めた時、突如眼に花の紋章が浮かび毛の色が黄金に輝きだした

この時少年は知らなかったがそれは勇者の仲間としての覚醒だった

  覚醒した少年は母親に持っていた槍を使い覚醒したその力で母親を倒しそのまま食い殺した。母親を殺したという大罪を犯しても少年の心には何もなかった。そしてそのまま用意していた馬に乗り三度森に逃げるのであった。 

 数日馬を走らせて森に辿り着いた二人だったが想定を大きく上回る執念をセラフは持っていたようで追手の聖騎士がすぐそばまで迫っていた。さらにいつの間にか消えていた眼の紋章による力もなくなり残ったのは傷だらけとなった少年とボロボロの妹だけ。到底を相手どれない。しかしせめて妹だけでもと少年は迎撃の準備を始める。しかしそんな少年の後ろから「タイム・アクセラレーション」という妹の呟きが聞こた。そして次の瞬間{グシャッ}という音が妹から発せられた。少年が音に振り向くとそこには腹からおびただしい量の血を流す妹の姿があった。少年が半狂乱で妹に駆け寄ると妹は「この子を」と一人の純白の毛に真っ白な目を持つ可愛らしい赤子を渡した。少年は驚愕と困惑をすると妹は「勇者さんが固有魔法で私のなかに居たこの子を外に出せるまで一瞬で成長するよう魔法を掛けておいてくれたんです。それで今それを起動したんです」と。妹が腹から大量出血をした理由とは処刑前夜に勇者が提案した妹の命と引き換えに妹の胎に宿った子供に生を与える魔法であり、使った妹の腹は急激に赤子の成長に対応できるわけもなく内部から破れるように赤子が出てきたからであった。

 妹は赤子を少年に渡すと「私達の子をお願いします」と告げた。そしてさらに「これから来る聖騎士を倒してそのまま逃げ切るために、、、私の亡骸を食べてください」というあまりにもあまりにも少年にとって酷なことを告げた。

自身の思い人とであり実の妹を食べろなどできるわけがなかった。少年はそんなことできないと口から声を出そうとした瞬間妹はキスをしてそれを阻止しそのまま命を落とした。そのキスは甘くしょっぱかった

 青年は大粒の涙を流し、苦しさのあまり握る手は爪が激しく食い込み血が流れる。そんな苦しみの中、妹の遺した赤子を守るために青年は妹を食らった。最悪な味がして吐き出したかったがそれは許されない、、、そしてその絶望感と怒りからか妹と同じ九尾の尾を生やした。違ったのは妹がまるで自分と同じ純白の毛色に変わったのに対して青年は妹と同じ黄金の毛色に変わったことであった。

 そして辿り着いた追手の聖騎士を先ほど以上の力を持って全て一瞬で圧倒的な力を用いて殺した

 聖騎士を殺し尽くしてても消えない少年の怒りと憎悪の炎

「オギャー」

「っ!」

そんな炎を消し去るような泣き声が聞こえた。妹の命と引き抱えに生まれた赤子の泣き声だ。

 少年にはこの赤子を守らなければという気持ちが湧いた。クソッたれな自分の人生で唯一残った最後の希望。それを守らなければとそんな固く重い思いが復讐心の代わりに燃え盛った

 

だからこそ少年は気がつくことが出来た

少年の耳に本当に本当に微かな足音が後ろから聞こえた

少年は反射的に避けただからこそ自身と赤子の命の代わりに9本の尻尾全てが切り落とされるだけで済んだ。

少年を襲ったのは今死んだ妹の母親であった。殺したはず、、、食い殺したはずの母親が自身を追う聖騎士の後を追って来たのだ

少年は問う「なんで来た!」

母親は返した「大罪を犯した娘を殺しに来た」

少年は再び問う「何を犯したというんだ!」

母親も再び返す「神に逆らったことだと」

それを聞いた瞬間、少年の頭ではとある1人問答が行われた それは


何故は妹を死んだ?

自死だろうか?

いや、死んだ理由は勇者の魔法だ。

では勇者が殺したのか?

いや、勇者は妹を助ける為に魔法を掛けた。なぜ魔法を掛けなければならなかった?

セラフに捕まったからだ。

なぜ捕まった?

妹が虐殺をしたから?

いや、処刑理由は虐殺と奴隷制主導の罪

妹ではなくセラフと母親の主導だ

誰が殺した?

セラフと母親だ


そして再び少年の心に黒い炎が燈る。そして少年と九尾の狐の母親との死闘が始まった。戦闘は母親の方が年の功もあり終始押していた。少年の攻撃を全ていなし反撃とばかりに超火力の炎や雷を撃ち込んでくる。そしてその少年の尻尾と耳は切り落とされ尻尾由来の力も失っている、、、勝てるわけがなかった。遂に少年は地面に倒れ伏した。

 しかし少年の黒い炎はまだ消えず最後の力を振り絞って再び立ち上がった。だが到底今の自分では勝ち目は無い。だが正義を騙るセラフの犬に負ける事は死んだ時に妹に顔負けが出来ない。そして正義を騙るという言葉から少年は逆転の手段を思いつく。それは切り落とされた耳と尻尾を対価に悪魔契約を結んで力を得るという方法だ。

 禁断の方法である事は少年も理解したいた。しかし少年にそれに手を出した。そして少年は勝ったと油断している母親の隙を付きとある大悪魔と仮契約を果たした。そしてあまりにあまりにもあっさりと母親を食い殺した。


余談だが母親が生きていた理由は不明だが大悪魔と契約できたのは2つの理由があった。一つは大罪司教が現れた場所に少年もいたことで興味を持たれたこと。二つ目は思い人を食べたという行動に興味を持たれたことだった


 少年は赤子を連れて森から去ろうとした。少年には赤子の育て方などわからない。帰る先も食い扶持も何も無い。しかし少年は赤子を守り育てると決めた。そしてそんな少年に悪魔の導きがあった。去ろうとした少年の前に黒髪黒目の男が現れた。少年は警戒した。しかし少年はその男を見たことがあった。その男はセラフで断頭台を破壊した男であった

「君!あの王女様はどこにいるの?!君達を助けたいんだ!」

そして男はそう言った

少年はこの森であった事を全て話した

それを聞いた男は

「っ!!!僕はまた間に合わなかったのか!!」

と絶叫し涙を流した

そして

「君とその赤ちゃんだけでも助けさせてくれ!」

そう少年に手を伸ばした

そして少年は男の手を取った

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