第33話 諸悪の根源、聖女ミーナの悪巧み
——聖女ミーナ視点——
「くそっ! クソクソクソクソッ! どうしてこうなった!」
私は王城にあてがわれた自室でそう悪態をつく。
せっかくレイナを追放して手に入れた地位。
第三王子の婚約者という立場だったのに、気がついたら第三王子はただの農民だ。
彼は王位継承権を剥奪され、どこか遠くに追放されてしまった。
全部あのレイナとルインという奴らが悪いらしい。
もともとあいつらは気に食わなかったのだ。
レイナはいつも人の良さそうな表情で媚を売ってやがるし。
ルインは脳筋のくせに、騎士団長という立場で強引に物事を押し付けてくる。
ふざけるなと机を思い切り足蹴りするが、高級な机はびくともせず、逆に足を痛めた。
「……っつ! はあ、今までの私の苦労は何だったのよ、全く。ふざけるんじゃないわよ」
聖女、と言っても別にこの世に一人の重大人物というわけではない。
十万人に一人くらいの割合だが、まあ一国に一人はいるだろうと思われるくらいだった。
だからかなりの権力を持っていると言っても、国を掌握できるほどではない。
国家予算を私の美容と男漁りで使うという計画が、全て狂ってしまった。
「どうすればあいつらを出し抜いて、私がトップに立てるかしら……」
頑張って知恵を働かすが、いい案が出てこない。
しかも気がついたら、あいつらのいた村は隣国のアルカイア帝国に吸収されている。
アルカイア帝国といえば、この大陸一の国家だ。
たとえこの国を掌握しても、絶対に敵う相手ではない。
「いや……それだったら私があいつらの立場を奪って、その村長と結婚すれば……」
ただの村人と結婚するなんて虫唾が走るが、アルカイア帝国が価値を見出した村なのだ。
普通の村ではあるまい。
それだったら将来性を見込んで、そいつと結婚するもアリかもしれない。
そう心に決めた時、王城の外がにわかに騒がしくなった。
何事かと思い窓から外を見ると、目の前を巨大なドラゴンが通り過ぎた。
「……は?」
思わず間抜けな声が漏れる。
何あれ……?
しかも体に『新生ガードナー領に旅行なんてどうですか!』なんて横断幕を貼り付けている。
……待てよ、ガードナー領?
それってあいつらがいた村では?
もしあいつらがあの巨大なドラゴンを操って宣伝しているのなら。
やはり思った通り、その将来性は担保されている。
あのドラゴンは少なく見繕っても、普通種よりも二回りは大きい。
ってことは、それ以上の力を持った人間があの村にはいるということだ。
そのことに気がついた私は、思わずほくそ笑む。
そして慌てて準備をすると、早馬でガードナー領に向かうのだった。
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