おっさん、領地を発展させる
第32話 領地を発展させる会議
俺は父とレイナとルインとジンで一つの机を囲んでいた。
「……どうやら領地を発展させないとマズイらしい」
俺はいきなり本題から入った。
それに対してジンが尋ねる。
「どうヤバイんだ?」
「いや……皇帝から発展させて来いって言われたんだ。多分発展しきれないと、簡単に見捨てられる」
「確かにジーサリス帝国は実力主義の国家だからな……」
しかしどうすれば発展できるのか。
こんな何もない田舎だぞ?
しかも近くに街があるわけじゃないから、わざわざ寄る理由もない。
それはレイナも同じ考えなのか——
「う〜ん、こんなところにワザワザ来る理由を作らないといけませんよね……」
「そうだよな。発展させるには町民もたくさん必要だろうし」
それから数時間もう〜んと頭を悩ませたが、あまりいい案が出てこなかった。
特産物を作るとか、祭りをするとか、そんなありきたりな回答しか出てこない。
そんな時、ふとレイナが言った。
「観光地にしてしまうのはどうですか? この村ならではのものって多いですし」
ふむ、観光地か……。
悪くはないかも。
天使たちに頼めばちゃんとした教会とかもできるだろうし。
温泉もあるし、勇者にも頼んで古い遺物とかを借りるのもありか。
そうすればコアな考古学者とかも観光に来てくれるだろう。
そう思っていると、ルインもこう言った。
「あとはここの食事は絶品ですし、トーリスおじさんに頼んで料理長をやってもらいましょう」
……うん、ありだな。
あとは——。
「宣伝をどうするか、だな」
「そうだな……。どう宣伝するかが一番大事な気がするぞ」
俺の言葉に親父も反応する。
幸いなことに手元には白金貨100枚がある。
これを使えば色々な宣伝ができそうだが。
「それだったら空から宣伝するのはどうだ?」
ふとジンがそう言った。
俺は指をパチンと鳴らすと叫んだ。
「それだ!」
ルインも親父も納得したように頷く。
「ああ、それはいいかもな」
「私も賛成です」
一人だけ首を傾げている人がいる。
レイナだ。
彼女は不思議そうに言った。
「空から宣伝ってどうするんですか……?」
「ああ、前に結婚式に来たイケメンがいるだろ?」
「はい、いましたね」
「そいつはエンシェント・ドラゴンだからな。空を飛びながら宣伝して貰えば絶対に広まるぞ」
俺の言葉にレイナはポンっと手を打った。
「そういえばそうでしたね」
「よし! 決まりだな! それじゃあとりあえず各方面に色々お願いしに行くか!」
方針が決まった俺たちは動き出した。
しかしまだこの時の俺たちはわからなかった。
この村の常識のなさが全世界に宣伝される恐ろしさを——。
俺たちはこの村がどれだけ逸脱しているのかを、まだ全く実感していないのだった。
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