第12話 料理をみんなで食べよう!

「それでは、せっかく料理をたくさん用意したので、みんなで食べましょう」


 阿鼻叫喚となった教会内がある程度落ち着いた後、俺はそう言った。

 そしてパンパンっと手を叩いて、料理人(村の主婦たち)を呼び出す。


 するとたくさんの料理が運び込まれてくる。

 もちろん、俺が狩ってきたエンシェント・オークの肉も盛り付けられていた。

 それを見た堕天使リンが嬉しそうに声を上げる。


「おおっ、エンシェント・オークの肉もあるじゃないか!」

「確かにリンの大好物でしたもんね、エンシェント・オーク」

「そうだな。私は世界で三番目にエンシェント・オークの肉が好きだな」


 そんな会話をしていると、ギョッとした目でアルベルト国王が見てきていた。


「君たち、今エンシェント・オークと言ったか……?」

「ええと、言いましたけど……」


 彼の言葉に俺が頷くと、なぜかものすごい勢いで近づいてきて、肩をガッと掴んだ。


「エンシェント・オークはSSSランクの魔物だぞ! それに入手難易度がとても高く、戦闘も過激になりやすいから、ここまでキレイに肉が残った状態で食べられるなんて、普通はあり得ないはずだ!」


 えーと、そうなの?

 てか、SSSランクってなんだ?

 強さの指標とかなのだろうか?

 だとすれば、エンシェント・オークがかなり強いことになってしまうが。


 そう困惑していると、リンがなぜか誇ったように言った。


「ははっ、一国の王よ。こいつに常識は通用しないぞ。神域でも気に入られるくらいには、規格外の人間だからな」


 ええと、そんなことないよ?

 俺は比較的、一般的で常識的な人間だよ?


 そう思うが、リンの言葉を聞いたアルベルト国王は尊敬と羨望の眼差しで見てきた。


「おお……それは何ともすごい……。やはりここはレイナと結婚させてうちで囲うしか……」


 おーい、心の声が漏れてますよー。

 そんな風に思っていると、カツカツとユーフェリア様が近づいてきて言った。


「いいや、まだ結婚させるわけにはいかない。彼は私に勝てる唯一の男性かもしれないのだから」

「あの……先ほどから決闘だの勝てるだのと言っていますが、俺はユーフェリア様と戦う気はないですからね」


 俺が言うと、彼女は驚愕に目を見開いてこちらを見てきた。


 どうやら彼女は自分より強い相手とじゃないと結婚しないらしいが――。

 俺は人の結婚式にステンドグラスをぶち破って割って入る人間は、少し遠慮したい。


「なん……だと……。どうしてだ! 私に勝てば私と結婚できるんだぞ!」

「い、いえ! 俺にはもう結婚相手もいますし、そもそもユーフェリア様とは釣り合わないかと!」

「そんなことない! 貴様は私と釣り合う男だ!」


 まだ戦ってませんが……。

 いきなりそう断言するのもどうかと……。


 すると、今度はアイルが近づいてきて、ユーフェリア様の首根っこを掴んだ。


「すいません、マルセルお兄ちゃん。私のせいで結婚式を台無しにしてしまって……」

「いや、アイルが悪いわけじゃないから……。それにユーフェリア様が来なくても波乱は起こっていたと思うし……」


 そういいながら俺はずっと遠くから睨んできているルインを見る。


「ガルルルル」


 ……どうやら彼女はショックで幼児退行してしまったらしい。

 アイルは困ったような笑みを浮かべて言った。


「確かにそうかもしれませんね……。ともかく、ユーフェリア様は私が管理しますので、お祝いの席を楽しんでください」


 そしてどこかに行ってしまった。

 次から次へとやってくる混乱に呆然としていると、レイナが近づいてきた。


「なんだか大変なことになってしまいましたね……」

「そ、そうだな。こんなことになるとは……本当にすまん」

「なんでマルセルさんが謝るんですか?」


 俺が思わず頭を下げると、彼女は不思議そうに首を傾げた。

 彼女の優しさに思わず涙が出そうになる。


「ううっ……やっぱりレイナは優しい人間だったんだな……」

「ええと、いきなり泣かないでください。困ってしまいます」

「ご、ごめん」


 そして俺たちがそんな会話をしていると、俺たちの前に一人の男がやってきた。

 彼は暗い表情でこちらを睨んできている。


「あ、あなたは……」


 レイナは目を見開いて彼のことを見ている。

 彼はどうやら、第三王子アイズ・ファンズらしかった。

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